能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.51 魔術師はバレる
その数時間後、俺は廊下を歩いていた。この先にあるのは学園長室、何故呼ばれたのかはわからない。扉を開けると、そこには既に応対用のソファに鎮座する老人がいた。
「ホッホ、来たの。座って欲しい」
着席を促され俺もソファに座る。
「さて、何の用だ?」
「この前の件は助かった。例を言おうと思っての」
「大したことは無い。友人を利用されて腹が立たないやつはいないだろう」
「仲間思いはいい事じゃな。さすがクルシュ君じゃ」
満足そうに髭をいじる。しかしどうも例を言いたくて呼んだとは思えんな。
「........で、本当の用はなんだ?」
「そう思うのは?」
「単純に、何故遮音と隔離の結界を張ってまで俺と話すのかと思ってな」
まるで気づいたことに驚いたと言わんばかりの表情をこちらに向けてくる。
逆に何故こんな低度の結界にかけられた隠蔽魔法を見抜けないと思ったのか不思議なんだがな。これならリアとアリスの方がもっと精度の高いものを作れるぞ、全く。
「敵いませんなぁ、本当に」
「で、何の話だ?」
「君はアストという名前を知っているかね?」
アストといえば俺の名前だが、それがどうかしたのだろうか。
「知らないが?」
「彼は魔法が魔術と呼ばれた時代、今から約11億年前に活躍した魔術師でね。英雄、大賢者、魔王など様々な呼び名で呼ばれていたのじゃよ」
ふむ、懐かしいな。英雄や大賢者と呼ばれた時はなんともなかったが魔王と呼ばれたら何故かいい気はしなかったな。
「それで?」
「そしてその刻印は君と同じ星宝の刻印だった」
よく知ってるじゃないか、古代の文献にでもあったのか?。確かに俺の知り合いにはやたらと俺を文献に書きたがる考古学者がいたが。
「その情報をどこで知ったんだ?」
「なに、ちょっとした調べじゃよ。..........そして本題なんじゃが、なぜ文献に書かれていた星宝の刻印がここに来て最弱と呼ばれるようになったと思う?」
それはこっちが聞きたい。どうやれば最強と呼ばれた刻印が最弱の位置にまで落ちるのか。2年間つきつめてきたが当然見つかるはずもない。
「.........さぁな。一学生の俺には検討もつかない」
「やはりわからぬかのう。わしも調べてはいるのじゃがな、何もわからぬのじゃ」
ふむ、俺の事を調べていたのなら相当昔の文献になるのだろう。何せ11億年も昔だからな。しかしどうしてもその先からどうやって改編されたのか分からない、か。まぁ気長にやるとしよう。俺としては特に気に求めていないからな。
「まぁ正直どうでもいいが、それだけか?」
「いや、あと一つだけ」
すると先程まで微笑んでいた顔が真剣なものに変わる。
「アストは転生した。はるか先の、何年かわからない未来に」
事実としてここに居るからな。しかし転生したとなぜわかった?そんな日記は残さず燃やしたと思うが。
「どうして転生したとわかったんだ?死んだってことも考えられるだろ?」
「確かにそうなんじゃがな、これはワシの推測でしかない。アストはワシらが知らない魔法技術で転生したとな」
まぁお前達が知らないんじゃなくて衰退したから無くなったというのが正しいな。まぁここまでの11人の星宝の刻印使いがどうしたのかは俺の範疇ではないが。
「仮にそうだとして、何故俺に言う?」
「君がアストの生まれ変わりなんじゃないかと思っての」
........ほう。果たしてそな言葉は予想か確信か。だからといっておいそれと正体を晒すことも無い。あれは過去の産物だからな。
「バカバカしいな。何を根拠に?」
「同じ刻印、そして圧倒的魔法威力。そしてわしらが知らない魔法を使う。この3つからもしやと思ったんだが」
「..........残念だがその予想はハズレだな、俺はそんな奴は知りもしない。俺はクルシュ・ヴォルフォード、一介の生徒だ」
そう返答すると少しの沈黙の後にいつもの温かさのある笑みを浮かべた。
「そうか。まぁクルシュ君が言うのならそうなんじゃろう」
「さて、これで終わりだな?では帰らせてもらうぞ」
「うむ、すまなかったの。これからも文武励みなされ」
そうして俺は部屋を出た。ゆるりと廊下を歩きながら思案する。
まずどうやって今の現代の知識量から過去の文献を調べた?最近王都の図書館にも行ってみたがそんなものはとこにもなかった。
そうなると、やはり考えられるのは昔から俺を知っていたこと、そして俺が知らないところにそういう文献がある、この2つだ。しかし魔族特有の魔力の異質な流れも感じられなかったしな、やはり後者か?ふむ、また謎がひとつ増えてしまったな。面倒な。
「あ、クルシュおかえりー」
「遅いわよクルシュ」
「長かったねクルシュ君。何かやらかしたのかしら?」
ふむ、まぁなんとも色とりどりにいるものだ、全く。しかし今は休み時間だよな?
「待て、リアとアリス、なぜSクラスにいるんだ?」
「暇だから遊びに来てあげたのよ。感謝しなさいな」
「リアが強引に行きたいって言うから〜」
「ちょ、アリス!そんなことは別に..........」
喧嘩をするのは勝手だが目の前でやられても困る。そんなふたりの横を通ってエリルが顔を近づけてくる。
「どしたの?」
「学園長が俺の正体に気づいた。一応否定はしておいたが、さてどうか」
「へぇ。君の正体に気づくのなんか僕とあと1人くらいだと思ってたけど」
「?、あと一人?誰だ?」
「まぁいつかは会えるよ」
この時代には俺を認識できるのはエリルだけだと思っていたがな。だとすると俺が忘れているということか。まぁそれもまた思い出すことだろう、はっきり言って1000歳から2000歳までの記憶はほとんど頭に残っていないからな。
「それで、学園長先生が怪しいの?」
「ああ。今の時代で俺の事を調べるのは相当難しいとは思わないか?」
「確かにね、とても11億年前のことを調べるのは無理があると思う」
顎に手を当てて少し考えた後、口を開いた。
「ということは前から知ってた?」
「俺を知っているとなると魔族、神族、このどちらかだ」
「魔族は無い方としても神族ではないだろうしねぇ。神性を感じないし」
「まぁ今無害ならそれでいい。俺は今まで通りやるさ」
唯一俺の魔法を見てもまるで驚かなかった、前から知っていたように。そこも引っかかるがさて、どうなんだろうな。
「ねぇクルシュもそう思うでしょ!?」
「?、すまない、何がだ?」
「だーかーら!クルシュの近くは私って話!」
こっちはこっちでよくわからない方向へ飛躍しているらしい。会話に夢中になって俺たちのことは聞こえてないようだったな。
「クルシュ君は"私の"幼馴染なんだから!」
「クルシュは"私の"主様よ!」
やれやれ、クラス中の視線がこちらに向いているぞ全く。
もう途中からクルシュの取り合いですよねこれ
「ホッホ、来たの。座って欲しい」
着席を促され俺もソファに座る。
「さて、何の用だ?」
「この前の件は助かった。例を言おうと思っての」
「大したことは無い。友人を利用されて腹が立たないやつはいないだろう」
「仲間思いはいい事じゃな。さすがクルシュ君じゃ」
満足そうに髭をいじる。しかしどうも例を言いたくて呼んだとは思えんな。
「........で、本当の用はなんだ?」
「そう思うのは?」
「単純に、何故遮音と隔離の結界を張ってまで俺と話すのかと思ってな」
まるで気づいたことに驚いたと言わんばかりの表情をこちらに向けてくる。
逆に何故こんな低度の結界にかけられた隠蔽魔法を見抜けないと思ったのか不思議なんだがな。これならリアとアリスの方がもっと精度の高いものを作れるぞ、全く。
「敵いませんなぁ、本当に」
「で、何の話だ?」
「君はアストという名前を知っているかね?」
アストといえば俺の名前だが、それがどうかしたのだろうか。
「知らないが?」
「彼は魔法が魔術と呼ばれた時代、今から約11億年前に活躍した魔術師でね。英雄、大賢者、魔王など様々な呼び名で呼ばれていたのじゃよ」
ふむ、懐かしいな。英雄や大賢者と呼ばれた時はなんともなかったが魔王と呼ばれたら何故かいい気はしなかったな。
「それで?」
「そしてその刻印は君と同じ星宝の刻印だった」
よく知ってるじゃないか、古代の文献にでもあったのか?。確かに俺の知り合いにはやたらと俺を文献に書きたがる考古学者がいたが。
「その情報をどこで知ったんだ?」
「なに、ちょっとした調べじゃよ。..........そして本題なんじゃが、なぜ文献に書かれていた星宝の刻印がここに来て最弱と呼ばれるようになったと思う?」
それはこっちが聞きたい。どうやれば最強と呼ばれた刻印が最弱の位置にまで落ちるのか。2年間つきつめてきたが当然見つかるはずもない。
「.........さぁな。一学生の俺には検討もつかない」
「やはりわからぬかのう。わしも調べてはいるのじゃがな、何もわからぬのじゃ」
ふむ、俺の事を調べていたのなら相当昔の文献になるのだろう。何せ11億年も昔だからな。しかしどうしてもその先からどうやって改編されたのか分からない、か。まぁ気長にやるとしよう。俺としては特に気に求めていないからな。
「まぁ正直どうでもいいが、それだけか?」
「いや、あと一つだけ」
すると先程まで微笑んでいた顔が真剣なものに変わる。
「アストは転生した。はるか先の、何年かわからない未来に」
事実としてここに居るからな。しかし転生したとなぜわかった?そんな日記は残さず燃やしたと思うが。
「どうして転生したとわかったんだ?死んだってことも考えられるだろ?」
「確かにそうなんじゃがな、これはワシの推測でしかない。アストはワシらが知らない魔法技術で転生したとな」
まぁお前達が知らないんじゃなくて衰退したから無くなったというのが正しいな。まぁここまでの11人の星宝の刻印使いがどうしたのかは俺の範疇ではないが。
「仮にそうだとして、何故俺に言う?」
「君がアストの生まれ変わりなんじゃないかと思っての」
........ほう。果たしてそな言葉は予想か確信か。だからといっておいそれと正体を晒すことも無い。あれは過去の産物だからな。
「バカバカしいな。何を根拠に?」
「同じ刻印、そして圧倒的魔法威力。そしてわしらが知らない魔法を使う。この3つからもしやと思ったんだが」
「..........残念だがその予想はハズレだな、俺はそんな奴は知りもしない。俺はクルシュ・ヴォルフォード、一介の生徒だ」
そう返答すると少しの沈黙の後にいつもの温かさのある笑みを浮かべた。
「そうか。まぁクルシュ君が言うのならそうなんじゃろう」
「さて、これで終わりだな?では帰らせてもらうぞ」
「うむ、すまなかったの。これからも文武励みなされ」
そうして俺は部屋を出た。ゆるりと廊下を歩きながら思案する。
まずどうやって今の現代の知識量から過去の文献を調べた?最近王都の図書館にも行ってみたがそんなものはとこにもなかった。
そうなると、やはり考えられるのは昔から俺を知っていたこと、そして俺が知らないところにそういう文献がある、この2つだ。しかし魔族特有の魔力の異質な流れも感じられなかったしな、やはり後者か?ふむ、また謎がひとつ増えてしまったな。面倒な。
「あ、クルシュおかえりー」
「遅いわよクルシュ」
「長かったねクルシュ君。何かやらかしたのかしら?」
ふむ、まぁなんとも色とりどりにいるものだ、全く。しかし今は休み時間だよな?
「待て、リアとアリス、なぜSクラスにいるんだ?」
「暇だから遊びに来てあげたのよ。感謝しなさいな」
「リアが強引に行きたいって言うから〜」
「ちょ、アリス!そんなことは別に..........」
喧嘩をするのは勝手だが目の前でやられても困る。そんなふたりの横を通ってエリルが顔を近づけてくる。
「どしたの?」
「学園長が俺の正体に気づいた。一応否定はしておいたが、さてどうか」
「へぇ。君の正体に気づくのなんか僕とあと1人くらいだと思ってたけど」
「?、あと一人?誰だ?」
「まぁいつかは会えるよ」
この時代には俺を認識できるのはエリルだけだと思っていたがな。だとすると俺が忘れているということか。まぁそれもまた思い出すことだろう、はっきり言って1000歳から2000歳までの記憶はほとんど頭に残っていないからな。
「それで、学園長先生が怪しいの?」
「ああ。今の時代で俺の事を調べるのは相当難しいとは思わないか?」
「確かにね、とても11億年前のことを調べるのは無理があると思う」
顎に手を当てて少し考えた後、口を開いた。
「ということは前から知ってた?」
「俺を知っているとなると魔族、神族、このどちらかだ」
「魔族は無い方としても神族ではないだろうしねぇ。神性を感じないし」
「まぁ今無害ならそれでいい。俺は今まで通りやるさ」
唯一俺の魔法を見てもまるで驚かなかった、前から知っていたように。そこも引っかかるがさて、どうなんだろうな。
「ねぇクルシュもそう思うでしょ!?」
「?、すまない、何がだ?」
「だーかーら!クルシュの近くは私って話!」
こっちはこっちでよくわからない方向へ飛躍しているらしい。会話に夢中になって俺たちのことは聞こえてないようだったな。
「クルシュ君は"私の"幼馴染なんだから!」
「クルシュは"私の"主様よ!」
やれやれ、クラス中の視線がこちらに向いているぞ全く。
もう途中からクルシュの取り合いですよねこれ
コメント
廃人クッキー
王都が嘔吐になってますよ!
頑張ってください