能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.42 神狼は魔族で遊ぶ
次回はクルシュ回と言ったな、あれは嘘だ。
クルシュとリアが戦闘を始めた頃、エリルは魔族と激しい戦闘を繰り広げていた。
エリルが地面を蹴りアマロに接近する。音より早く抜き去った剣を、しかしアマロはその黒皮で防ぐ。上段から下段へ、また返して袈裟斬りからの突き、しかしそのどれもがアマロの両腕に阻まれる。エリルはそのまま距離を取った。
「やれやれ、割と魔族は戦闘できるんだね。驚いたよ」
「いえいえ、この程度で私に敵うはずありませんとも。それに、もう罠は設置しておりますよ」
「ん?罠?」
不思議に思うエリルは、しかし体になんの変化も無く。しかしそれは口を開き空気を吸い込んだ瞬間だった。
「..........がふっ」
エリルの口から大量の吐血が。地面に落ちたそれは、腐り、無くなって行った。
「あなたがここに入った瞬間から、私の毒牙にかかっていたのですよ」
「なるほど、文字通りの毒牙だね。でも、倒せば問題は無いよね」
「出来ますか?あなたに」
「そうだな、じゃあもう1つギアをあげよう。...........行くよ」
地面を蹴った瞬間、10mはあった距離を一気に詰め、次にはある物が宙を舞う。そしてそれは地面にぽとりと落ちた。
「なっ...........腕が」
「硬いからって貫けないと思った?」
「このっ!」
「まだだよ」
無造作に振り上げた腕を避けたエリルはいつの間にかアマロの後ろにいた。振り返るアマロの表皮の至る所がぱっくりと割れ始め、いくつもの切り傷が一瞬のうちに現れ始める。
「かはっ...........」
「――壱ノ太刀、『隼』」
ゆらりとアマロの体が揺れ、しかし地面に倒れることなく踏み止まったアマロの体はいつの間にか傷一つ無くなっていた。
「流石の再生力、と言ったところかな」
「なかなかやりますね...........ただの鉄の剣で私に傷を入れるなど、あなたが初めてですよ」
「それは良かった。じゃあ君を倒すのも、後にも先にも僕だけだよね」
爽やかに笑うエリルに、しかしアマロは口角を釣り上げる。
「しかし人如きが私に敵う道理はありません」
「そう、でも僕は君に勝つさ。行くよ」
踏み込んだエリルが再び剣を振り下ろす。上段でぶつかり合った腕と、剣。
パキンっ!
折れたのは剣の方だ。剣の切っ先が弧を描き後ろに突き刺さる。すると、距離を取ったエリルが持っている剣全体と近くに突き刺さった切っ先は、だんだんと黒澄んで行き、腐敗して塵となって消えた。
「なるほど、『腐敗毒』ね」
「その通り。そして私のこれは『腐敗鎧』、触れたものはなんでも腐敗し、塵に帰ります」
「あーあ、クルシュに貰った剣、使えなくなっちゃったなぁ〜。ま、いいや」
呆れたように声を上げる。その声からどこか冷めたような様子がうかがえる。
「さぁどうします?戦う手段が無くなりましたが!?」
「そうだね。じゃあこっちで行こう」
ニコリと笑ったエリルの魔力が解放される。枷をなくした膨大な魔力、なおも膨れ上がり空間ごと揺れるその魔力と共に、エリルの体が変形していく。灰色の体毛に獰猛な牙を剥く大口、9mはあるかというその巨体、神狼フェンリルがそこにはいた。
「な、なんだと言うのですか!?」
「我は風の女神に仕えし従獣、フェンリル。下賎な塵芥の魔族よ、滅ぶがいい」
「こ、これしきっ!」
アマロが魔力をねり始める。数秒して完成させた魔法を、腕を振り上げて発動させる。
「『常闇の雨』!!」
フェンリルを包む巨大な魔法陣が発動し、黒い雨が無数に落下してくる。いくつもの雨が降り注ぎ、煙が発生する。
「どうです!大きいなら当たる面積も多いはずです!..............................なっ!?」
「効かぬ」
しかし煙が晴れ、現れたのは無傷の体を見せるフェンリル。自動的にまとっている暴風の鎧が魔法をかき消したのだ。
「この時代の魔法など、蚊に刺された程度だ。諦めろ、雑魚」
「ならもっと大量の魔力でっ!」
「無駄だ」
アマロが振り上げた腕が、しかし次の瞬間肘から先が無くなる。気がつくとフェンリルは自分の後ろに存在していた。
「ふむ、不味いな」
「なっ、う、腕が!?...........なぜです!?『腐敗毒』があなたの体を一瞬で破壊するはず!!」
「我に毒など効かぬ。ましてや鉄を腐敗させる程度の毒などもっとだ。我を毒殺できると思うな」
「な、そんな訳............がはっ!?」
口を開いたアマロをフェンリルの尻尾が払い除けた。アマロの体は数回地面に叩きつけられ、転がり、停止する。その上にフェンリルは前足をつけて押さえつける。
「あっ............がっ............!!」
「それで終わりか?雑魚よ」
「がァ.........た、助け.............」
「ふむ、聞けん頼みだな。敵を助ける道理などない。故に」
大きく開口したフェンリルの口に魔法陣が浮び上がる。巨大な風のエネルギーが集まり、ひとつの弾を作り上げる。
『神狼砲』
「――貴様の負けだ」
放たれた弾は、そのまま押さえつけたアマロの体に命中し、ぐしゃりぐしゃりと体をねじまげ、圧力により木っ端微塵になり、そして風によりって切り刻まれ、反射した威力の爆発とともにそこには何も無くなった。
役割を果たしたように収縮した体は、元のエリルに戻っていた。腕を後ろで組んで背伸びする。
「うーん、なかなかに今回も退屈だったなぁ。ま、守れたしいいよね。クルシュのところ行こっと」
寝かせたセレスを抱きかかえ、もうじき消滅するという『時空隔絶』の空間で転移魔術を使った。
アマロさん、噛ませでしたねぇ。ちなみに次回予告詐欺をしていたこと、反省はしている、後悔はしていない(`・ω・´)
次回はちゃんとクルシュとリアのバトルなんで許してください何でもしますから。
クルシュとリアが戦闘を始めた頃、エリルは魔族と激しい戦闘を繰り広げていた。
エリルが地面を蹴りアマロに接近する。音より早く抜き去った剣を、しかしアマロはその黒皮で防ぐ。上段から下段へ、また返して袈裟斬りからの突き、しかしそのどれもがアマロの両腕に阻まれる。エリルはそのまま距離を取った。
「やれやれ、割と魔族は戦闘できるんだね。驚いたよ」
「いえいえ、この程度で私に敵うはずありませんとも。それに、もう罠は設置しておりますよ」
「ん?罠?」
不思議に思うエリルは、しかし体になんの変化も無く。しかしそれは口を開き空気を吸い込んだ瞬間だった。
「..........がふっ」
エリルの口から大量の吐血が。地面に落ちたそれは、腐り、無くなって行った。
「あなたがここに入った瞬間から、私の毒牙にかかっていたのですよ」
「なるほど、文字通りの毒牙だね。でも、倒せば問題は無いよね」
「出来ますか?あなたに」
「そうだな、じゃあもう1つギアをあげよう。...........行くよ」
地面を蹴った瞬間、10mはあった距離を一気に詰め、次にはある物が宙を舞う。そしてそれは地面にぽとりと落ちた。
「なっ...........腕が」
「硬いからって貫けないと思った?」
「このっ!」
「まだだよ」
無造作に振り上げた腕を避けたエリルはいつの間にかアマロの後ろにいた。振り返るアマロの表皮の至る所がぱっくりと割れ始め、いくつもの切り傷が一瞬のうちに現れ始める。
「かはっ...........」
「――壱ノ太刀、『隼』」
ゆらりとアマロの体が揺れ、しかし地面に倒れることなく踏み止まったアマロの体はいつの間にか傷一つ無くなっていた。
「流石の再生力、と言ったところかな」
「なかなかやりますね...........ただの鉄の剣で私に傷を入れるなど、あなたが初めてですよ」
「それは良かった。じゃあ君を倒すのも、後にも先にも僕だけだよね」
爽やかに笑うエリルに、しかしアマロは口角を釣り上げる。
「しかし人如きが私に敵う道理はありません」
「そう、でも僕は君に勝つさ。行くよ」
踏み込んだエリルが再び剣を振り下ろす。上段でぶつかり合った腕と、剣。
パキンっ!
折れたのは剣の方だ。剣の切っ先が弧を描き後ろに突き刺さる。すると、距離を取ったエリルが持っている剣全体と近くに突き刺さった切っ先は、だんだんと黒澄んで行き、腐敗して塵となって消えた。
「なるほど、『腐敗毒』ね」
「その通り。そして私のこれは『腐敗鎧』、触れたものはなんでも腐敗し、塵に帰ります」
「あーあ、クルシュに貰った剣、使えなくなっちゃったなぁ〜。ま、いいや」
呆れたように声を上げる。その声からどこか冷めたような様子がうかがえる。
「さぁどうします?戦う手段が無くなりましたが!?」
「そうだね。じゃあこっちで行こう」
ニコリと笑ったエリルの魔力が解放される。枷をなくした膨大な魔力、なおも膨れ上がり空間ごと揺れるその魔力と共に、エリルの体が変形していく。灰色の体毛に獰猛な牙を剥く大口、9mはあるかというその巨体、神狼フェンリルがそこにはいた。
「な、なんだと言うのですか!?」
「我は風の女神に仕えし従獣、フェンリル。下賎な塵芥の魔族よ、滅ぶがいい」
「こ、これしきっ!」
アマロが魔力をねり始める。数秒して完成させた魔法を、腕を振り上げて発動させる。
「『常闇の雨』!!」
フェンリルを包む巨大な魔法陣が発動し、黒い雨が無数に落下してくる。いくつもの雨が降り注ぎ、煙が発生する。
「どうです!大きいなら当たる面積も多いはずです!..............................なっ!?」
「効かぬ」
しかし煙が晴れ、現れたのは無傷の体を見せるフェンリル。自動的にまとっている暴風の鎧が魔法をかき消したのだ。
「この時代の魔法など、蚊に刺された程度だ。諦めろ、雑魚」
「ならもっと大量の魔力でっ!」
「無駄だ」
アマロが振り上げた腕が、しかし次の瞬間肘から先が無くなる。気がつくとフェンリルは自分の後ろに存在していた。
「ふむ、不味いな」
「なっ、う、腕が!?...........なぜです!?『腐敗毒』があなたの体を一瞬で破壊するはず!!」
「我に毒など効かぬ。ましてや鉄を腐敗させる程度の毒などもっとだ。我を毒殺できると思うな」
「な、そんな訳............がはっ!?」
口を開いたアマロをフェンリルの尻尾が払い除けた。アマロの体は数回地面に叩きつけられ、転がり、停止する。その上にフェンリルは前足をつけて押さえつける。
「あっ............がっ............!!」
「それで終わりか?雑魚よ」
「がァ.........た、助け.............」
「ふむ、聞けん頼みだな。敵を助ける道理などない。故に」
大きく開口したフェンリルの口に魔法陣が浮び上がる。巨大な風のエネルギーが集まり、ひとつの弾を作り上げる。
『神狼砲』
「――貴様の負けだ」
放たれた弾は、そのまま押さえつけたアマロの体に命中し、ぐしゃりぐしゃりと体をねじまげ、圧力により木っ端微塵になり、そして風によりって切り刻まれ、反射した威力の爆発とともにそこには何も無くなった。
役割を果たしたように収縮した体は、元のエリルに戻っていた。腕を後ろで組んで背伸びする。
「うーん、なかなかに今回も退屈だったなぁ。ま、守れたしいいよね。クルシュのところ行こっと」
寝かせたセレスを抱きかかえ、もうじき消滅するという『時空隔絶』の空間で転移魔術を使った。
アマロさん、噛ませでしたねぇ。ちなみに次回予告詐欺をしていたこと、反省はしている、後悔はしていない(`・ω・´)
次回はちゃんとクルシュとリアのバトルなんで許してください何でもしますから。
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ヴェールヌイ
(作者 やると言ったな、(自分 そっそうだ大佐(作者 あれは嘘だ。(自分 イヤァー(作者 計画通り(キリッ)