結成!?学園改革部!!

レモン

改革部の日常1

「………部長」
「何だい? 琴音君」
「部活しないでこんなところでお昼寝して、良いご身分ですね」
「これも立派な部活だよ」
    屋上で二人の生徒が会話していた。一人は黒く長い髪が風に揺らめくと同時にスカートが翻る。その見た目に反するかのように鋭き眼光の先に写る青年、明るめな茶髪に無邪気な童顔は眠そうに崩れてる。制服はだらしなく着崩し床に転がっていた。
「昼寝をすることと、面白いを探すことにどう考えても接点が見い出せないのですが」
「そりゃ琴音君が深く考えてない証拠だね」
「いい加減にしないとさすがの私でも怒りますよ?」
「いつも怒っているような顔じゃないか」
「はい?」
    泣く子も黙るような蔑みの目をする。
「怖い怖い。せっかくの顔が台無しだよ」
    いつもこうして青年、結城 翔(ゆうき しょう)は八代 琴音(やしろ ことね)と呼ばれた少女を茶化す。
「はぁ…、ほら早く部室に来てください。みんな待ってますよ」
「ふぁ…、仕方ないね〜。ん」
    翔は右手を差し出す。
「何ですか?」
「起こして」
「永遠に寝かせてあげましょうか?」
「にしし。そりゃ勘弁だね」
    上半身を起こして伸びをする。
「それじゃ、行きますかね」
    挙動は気だるそうだが、その顔には笑顔が浮かんでいた。

「今回の議題は…」
「それより翔くん! これからドーナッツ食べに行こうよぉ〜!」
    短髪の赤毛の少女、十七夜月 心々(かのう ねね)は翔の腕に抱きつく。
「…心々。少しは慎みたまえ」
    腕を組んだまま眼鏡をかけた青年、夜叉人  魔裟斗(やしゃじん まさと)が呆れる。
「いいじゃん! かのじょのとっけん!」
「別に彼女では無いだろ」
「うるさいやい! 彼女になる予定なんですぅ〜!」
「ねぇ、勝手に予定に組まれても困るんだけどなぁ〜」
「あ、あの…! 琴音ちゃんが怒っちゃうからそろそろ…」
「良いのよ、彩華さん。もう慣れたから」
    記述係としてホワイトボードの横であたふたとしてる少女、花園 彩華(はなぞの いろは)を、椅子に座ったまま宥める琴音。
「アタシは翔くんとお話しがせれできばいいんですぅ〜」
「いい加減にしろ、心々」
「うるさい! 夜叉メガネ!」
「変なあだ名を付けるな、アホ子」
「あ、アホ子って何じゃい!」
「アホだからアホ子だ」
「アホじゃないもん! この前の定期テストだって赤点三つだけだったし!」
「三つもある時点でアホなんだよ」
「あによ〜!?」
「やりますか?」
「はいは〜い。静粛にね〜」
「はい! 翔くん!」「………」
「琴音君、進行を続けて」
「はい。えぇ、議題はですが、『スマホ及びゲームの使用について』ですね」
「あ、アタシよくゲームするよ〜! あ、モチロン校外でだけど」
「まぁ、僕もそこそこやってる方だな」
「ゲッ!? 夜叉メガネもかよぉ〜」
「だから変なあだ名をっ! …まぁいい」
「あの…、私もやりますね。ぬいぐるみを繋いで消したりするやつ」
「それアタシもやってるぅ〜! あとでフレコしよっ!」
「…え? あ、はい」
「私はそういった類はしないのですが、面白いんですか?」
「俺はやってるゲームがRPGとかしかやって無いから、ほかのジャンルに関しては言えないけれど、少なくとも面白いと思ってるよ」
「そうだな。僕もRPGを中心に遊びますが、最近はFPSもやってるな」
「えふぴーえす?」
    琴音は首を傾げて聞き返す。
「一人称視点のゲームを総して呼ぶんだ。銃を撃つゲームとかがほとんどかな」
「そーそー! あとゾンビを一網打尽にしたりね!」
「ほう、一網打尽なんて知ってるのか」
「馬鹿にするなぁ!」
「あの…、とりあえずスマホやゲームの使用についてはどうします? 会長さん」
    会長と呼ばれ翔はホワイトボードの方を見て少し考える。
「生徒会長としての立場なら許可はしないべきなんだろうけど、生憎俺自身の意見としては有りなんだよね」
「ゲームがですか?」
「そ。まぁさすがに授業中は禁止するけど休憩中とかなら全然構わないよ。と言うか生徒同士が黙っているだけで、きっと今でもこっそりゲームとかをしてる人がいるかもだしね」
「全く、生徒なんですからゲームなどせずに勉強をすれば良いのに」
    理解不能と首を振る。
「でも、それだけだとつまらないでしょ?」
「部長の言う通り、縛るだけではダメなのは分かりますけど」
「つまりは飴と鞭なんだよ。厳しいだけとか、縛るだけではなく、たまには休息を与えるのも重要ってことだねぇ〜」
    背もたれにもたれながら天井を仰ぐ翔。
「………でもそれって学園から帰った後とか、休日とかにすればいい話では?」
    ふとそう思った琴音がそう言葉を零すと、心々が勢いよく手を挙げて抗議し出す。
「そうじゃないんだよっ! 琴音ちゃん!」
「どういうこと?」
「学園という本来勉強するところでゲームをすると言う、なんて言うんだっけ?はい…、はいとく…」
「背徳感な」
    魔裟斗がすかさずフォローを入れる。
「そぅ! それ! はいとくかん! それをスリルとして味わいたいんだよ!」
「………よく分からない考えね」
    頭を悩ませながらため息をつく。
「まぁ琴音ちゃんはゲームしないから分からないんだと思うよ〜」
    テーブルに寝そべり意見する。
「ふむ、そういった所なのかもしれないねぇ〜」
    天井を仰いでいた翔は何かを悟ったように口を開く。
「部長?」
「ゲームをやったことの無い人にとっては学園でゲームをやることに理解が苦しいのだろう。だから余計に抑制してしまう」
「つまり、教師たちにゲームは有意義であると証明すればいいのかしら」
「しょ、証明ってどうすれば?」
    彩華はおずおずと翔に問いただす。
「ま、それは後にでも考えておくよ」
「それよりもそろそろ下校時間だし、今日の部活はこれでお開きにしよう」
「え? でも今回の議題がまだ…」
「終わったぁ! 翔くん翔くん! 何か食べに行こ?」
「少しは落ち着きを持てアホ子」
「だからアホ子じゃないやい!」
「えっと、終わりでいいの?」
「………」
    琴音はこれ以上は話し合いができず、無意味だと思い、今晩の夕食は何にしようか考えるのだった。

    ピリリ… ピリリ…
「? 部長?」
    夕食を済ませて自主学習でもしようかと自室に戻ると携帯が鳴っており、相手は翔からだった。
「もしもし」
『あぁ、琴音君かい?』
「はい、そうですけど」
『明日は少し早めに来てくれないかな?』
「学園にですか?」
『そそ。一応みんなにも声は掛けてるし、少し部活に関することでもあるからなるべく容認してほしいんだけど』
「分かりました」
    特に断る理由もなかったこともあり、あっさりと了承する。
『ありがと。場所は中庭で頼むよ〜』
「一体何をするんですか?」
『それは内緒だよ〜。ま、明日のお楽しみってやつだな。明日何か面白いことが起きるかもしれない。そう考えるだけでも明日を生きる糧になるよ。それじゃあね〜』
「あ、ちょっ…」
    プツン… ツー…ツー…
「あの人は何をする気なのかしら」
    囁かな不安を持ちつつ、参考書を開いてからいつも通り就寝するのだった。

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