甘え上手な彼女2

Joker0808

第36話




 高志は自室のベッドで眠っていた。
 もう夕方でそろそろ約束の時間だと言うのに、全く起きる気配が無い。
 そんな高志の家に、白を基調とした浴衣姿の紗弥がやってきた。
 腕にはチャコを抱き、慣れたようすで高志の部屋に向かう。
 玄関先で高志の母の美華子に浴衣姿を褒められて、少しご機嫌だった。

「あ、寝てる……」

 部屋のドアを開け、ベッドで眠る高志を見て紗弥はため息を吐く。
 チャコを腕から下ろし、高志の側に行って話し掛ける。
 
「高志……高志ってば……」

「ん~……もうちょい……」

「もうちょいじゃないでしょ……もう」

 紗弥は高志の体を揺さぶり起こそうとする。
 しかし高志はなかなか起きない。

「もう……早く起きてよ」

「んん……紗弥ぁ~……」

「ん………なによ、もう……」

 寝言で自分の名前を呼ばれたのが嬉しく、紗弥は思わず口元を緩める。
 しかし、そんなことで喜んでいる場合ではないと気がつき、紗弥は再び高志をお越し始める。

「高志! 起きないと……起きないと………えっと……チュー……しちゃうよ?」

 言った後で自分は一人で何を言っているのだろうと、紗弥は顔を真っ赤にして顔を隠した。
「はぁ……もう、早く起きてよ……」

 ベッドに手をつき、紗弥は高志顔を見る。
 始めて心の底から好きになった人の顔をまじまじと見るのは、なんだか気恥ずかしさがあった。
 高志はそんなことをなどつゆ知らず、寝息を立てている。

「もう……本当にしちゃうんだから……」

 そう言って紗弥はゆっくり自分の顔を高志の顔に近づけて行く。
 あと数センチで唇が重なるというまさにそのとき、高志が目を覚ました。

「ん?」

「え……」

 目が合う二人、紗弥は見る見る顔を赤くしていき、高志は寝ぼけているのか状況をあまり理解していない。
 紗弥はすぐさま顔を高志から離し、顔を隠す。

「ん……紗弥ぁ? どうした?」

「な、ななななんでもないよ……うん……」

「そうか……あ、悪い悪い……時間だったな……」

「う、うん……良いよ……」

 高志は目を擦りながら、改めて紗弥を見る。
 白を基調とした浴衣姿に、髪型もくくっている。
 いつもと違い、どこか大人っぽい雰囲気の紗弥に高志は一気に目を覚ました。

「そ、その……似合ってるよ……」

「え……あ、ありがと……」

 互いに照れる高志と紗弥。
 そんな二人を見ながらチャコは鳴き声を上げる。

「にゃー」

「あ、そう言えばチャコにご飯やってなかったな……」

「あ、私があげたから大丈夫だと思うよ」

「なんだチャコ、お前紗弥のとこに言ってたのか?」

 高志がそう尋ねると、チャコは離しを理解したのかしていないのか、知らん顔で毛繕いを始めた。

「たく……最近良く外に行くと思ったら」

「チャコちゃん私のこと大好きだもんねー」

「にゃ~」

 最初の頃とは違い、高志よりも紗弥に懐いているチャコ。
 八重家と宮岡家を行き来しているためか、両家で餌を貰っているチャコは少し太ってきている気がした高志。

「少し運動させないとな」

 そう言いながら高志はチャコの頭を撫でる。
 
「じゃあ、ちょっと俺準備するから」

「うん、私は下で待ってるから」

 浴衣姿の紗弥は高志の部屋を後にし、一階に下りて行った。
 高志はシャワーで汗を流し、急いで着替えを済ませ紗弥と共に祭りに向かった。





 優一は祭り会場のとある場所で、芹那を待っていた。
 一緒に行くと約束をしたので、高志は芹那の提案通り、時間通りに約束の場所に来ていた。
「おせぇ……」

 しかし、芹那は少し遅刻していた。
 スマホの時計を見ながら芹那を待っていた。
 
「たく……自分で待ち合わせ時間決めたくせに……」

 文句を言いながらもジッとその場で芹那を待つ優一。
 そんな高志の元に、青を基調とした浴衣を着た芹那が走ってやってきた。

「す、すみません……準備に時間が掛かってしまって……」

「何をそんなに準備する必要があんだよ……全く、いいから行くぞ。俺、腹減った」

「は、はい! 行きましょう!!」

 高志の後ろを芹那は嬉しそうについて行く。
 結構大きな祭りのためか、人が多かった。

「結構人多いなぁ……」

「ステージでイベントもやってるみたいですよ。見に行きます?」

「その前に飯をだな……って、これじゃあ前に進めねーな……」

 人が多すぎてなかなか前に進めない優一と芹那。
 注意して進まないと、はぐれてしまいそうで、優一は後ろの芹那を見て考える。

「しかたねーか……」

「え……え、えぇぇ!? ど、どうしたんですか? 優一さん! わ、私の手を……」

 優一は芹那の手を掴み、そのままずんずん前に進んで行く。

「こうでもしないと、はぐれそうだからな……仕方なくだ!」

「わ、私……もう今日死んでもいいですぅ………」

「これぐらいでかよ……たく……」

 うっとりした表情の芹那。
 優一はそんな心ここにあらずの芹那を連れて、焼きそばの屋台に向かう。






「大石先生、そろそろいきますよ?」

「あの、腕章は付けないんですか?」

「付けなくて良いそうですよ」

「えっと……一応見回りですよね? それにその格好……」

 大石は浴衣姿の愛奈を見て不思議そうに尋ねる。
 学校からは生徒が非行に走らないように、祭りの見回りを頼まれたはずなのだが……。

「なんか、遊びにいく見たいな感じになってますが……」

「まぁまぁ、細かいことは気にせず、行きましょう」

「は、はぁ……」

 大石は愛奈に言われるがまま、祭りに向かって歩き始める。
 横を歩く愛奈は、黒を基調とした浴衣を着ており、いつも下ろしている長い髪はまとめてあり、綺麗なうなじが見えていた。

「あの……」

「はい?」

「腕を組む必要はないのでは?」

「あります」

「いや、だって見回……」

「あります」

「………」

 大石は強引に納得させられ、愛奈と腕を組んで祭りに向かう。
 こんなところを生徒に見られたらと思うと、大石は怖くて仕方なかった。

「大石先生……」

「はい?」

「あ、あの……似合ってますか? 浴衣……」

「え、あぁ。似合ってますよ」

「そ、そうですか……ありがとうございます」

「はい、学校と違っていつも以上に大人っぽく見えますよ」

「そ、そうですか……ほ、惚れちゃったりしますか?」

「………さて、急ぎましょうか」

「話しを反らさないで下さい!!」

 大石と愛奈は祭りの会場に向かって歩いて行く。

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