甘え上手な彼女2

Joker0808

第7話

 紗弥の試着待ちの最中、高志は店の中の女性から視線を感じていた。
 高志以外のお客さんは女性ばかりで、他に男性客はいない。

(こ、これは結構……きっつい……)

 背中から変な汗が噴き出すのを感じながら、高志は紗弥の試着が終わるのを待つ。
 そして数分後……。

「お待たせ、どうかな?」

 試着室のカーテンが開き、その中から水着姿の紗弥が姿を現す。
 白をベースにピンク色の模様が描かれているパレオがついたビキニだ。

(可愛い……)

 高志は水着姿の紗弥を見た瞬間、目が離せなくなった。

「高志? 高志!」

「え……あ、あぁごめん。可愛いよ」

「なんか、間があった気がする……」

「いや、その……見とれてました……」

「そ、そっか……なら……これ買ってくる」

「う、うん…」

 なんだか気恥ずかしい空気が流れる。
 水着は言ってしまえば下着と面積が変わらない。
 そのため高志は、紗弥の水着姿に顔を赤らめ、紗弥も高志に見られ、すこし恥ずかしかった。
 早めに買い物が済み高志は安心した。
 あの場所に長時間居るのは男にとっては辛い。
 水着を買い、高志達は店を出て近くのファミレスでお昼を食べていた。

「水着も買ったし……これからどうする?」

「うーん、外も結構暑いし家で映画でも見る?」

「そうね、チャコちゃん寂しがってそうだし」

「出かける時、仕切りに鳴いてたからな……」

 玄関先で高志と紗弥がどこかに行くのをみたチャコは、仕切りにニャーニャーと鳴き声を上げ、自分もついて行こうとしていた。
 高志の母親に捕まり、玄関先で悲しげな鳴き声を上げながら見送るチャコからは、悲壮感が漂ってきた。

「おやつでも、買っていてあげよっか」

「そうね、じゃあコレ食べたらいきましょうか」

 食事を終え、高志と紗弥は家に帰宅する。
 家に帰るとチャコが玄関の前で座って待っていた。

「にゃー」

「ただいま~チャコちゃん」

「にゃ~にゃ~」

 帰って来て、チャコが一番にすり寄って行ったのは紗弥の方だった。
 高志は自分が無い主なのに、なんだか負けた気がして少し寂しくなった。

「俺……飼い主だよね?」

 紗弥にばかり甘えるチャコを見て、高志は若干ヤキモチを妬く。
 ここは買ってきたお菓子でチャコの気をこちらに向けようと、買ってきた猫用のおやつを出す。

「ほ~らチャコ~、美味しいおかしだぞ~」

「にゃ……」

「あら? 要らないのかしら」

「チャコ……もしかして、俺の事嫌い?」

「にゃ!」

「にゃ! じゃねーよ!」

 おやつに見向きもせず、チャコは紗弥の胸の中でうずくまる。
 この前の浮気騒動から、チャコはあまり高志に甘えない。
 どうやら原因はそれらしい、家の中の空気を感じ取ったのだろう。
 高志と紗弥は、いつも通り高志の部屋に行き、映画を見ていた。
 あまり外出していると、お金も直ぐに無くなってしまうし、暑い外に行くよりも家デートの方が楽しい言うインドア派の二人が良くするデートだ。

「チャコ~おいで~」

「………フン」

「とうとう鳴き声まで出さなくなったか……」

 チャコは相変わらず紗弥の膝の上に丸まり、紗弥に甘えている。
 そんな姿を見て、高志は二つの意味で羨ましいと思ってしまう。
 一つは紗弥に甘えるチャコ。
 もう一つはチャコに甘えられる紗弥。
 どっちでも良いから、その場所を変わって欲しいと高志は内心思っていた。

「高志が浮気みたいな事するから、チャコちゃんも怒ってるんだよね~」

「にゃ~」

「う……ね、猫にそんな事が……」

「だって、チャコちゃんも女の子だもんね~」

「にゃ!」

 そう言えばそうだったと、高志は思い出した。
 そんな事を思っていると、チャコは立ち上がり部屋の中をうろうろし始める。
 
「あら? どうしたのチャコちゃん?」

 チャコは本棚の裏の隙間をかりかりし始める。
 それを見た高志は顔を真っ青にし、ヤバイと思い始める。

「ニャー!」

「ん? そこに何かあるの?」

「無い! 何も無い!! チャコ~そんなところで爪研いじゃダメだろ~?」

「ニャー!! ニャー!!」

 高志は暴れるチャコを抱きかかえて、本棚の裏から離す。
 しかし、既に遅かった……。

「ん? 何かあるわよ?」

「あ! いや!! それは!?」

 紗弥は本棚の裏に挟まっていた本を取り出す。
 それは、高志がこっそり買っていた成人指定の本。
 毎回場所を変えて隠していたのだが、運悪く今日は見つかってしまった。

「こ、これって……」

「あ、いや! コレは……その……」

 (最近こんな事が多い気がする……)

 そう高志は思いながら、紗弥への言い訳を考える。
 紗弥は高志の本「制服姿の甘い誘惑」の中身をめくりながら、顔を真っ赤にする。

「……高志のエッチ」

「待って! 違うの! コレは、その……」

 言い訳なんて出来るはずも無い、高志がその本を買った理由は百パーセント邪な理由だからだ。

「ん……皆、胸大きい……」

「そ、それはたまたま……」

「しかも、全員学生服……」

「た、たまたまだって!」

「私が居るのに……」

「す、すみません……」

 そりゃあ高志だって健全な男の子だ、そう言うことに興味がある。
 紗弥だってそれはわかっているつもりなのだが、こうして目の当たりにすると、少しムッとしてしまう。

「チャコ~……」

「ニャ」

 チャコは紗弥の膝の上に戻り、高志をジーッと見て鳴き声を上げる。
 夏が始まってから、こんな事ばっかりな高志。
 今度からは隠し場所をもっと考えようと、堅く心に誓った。

コメント

  • りよーう

    自分が無い主になってますよ

    1
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