三代目魔王の挑戦!

シバトヨ

東門……防衛……挑戦

 東門付近は、既に青い鎧の軍団に囲まれていた。あの軍勢を門から剥がすのは困難。
 本来のゴーレムであれば、三メートル程度の巨体で取り払うことも出来るだろう。
 しかし、私は一メートルちょっと。ゴブリンと大差ない大きさだ。
 同じゴブリンでも、リンやその姉は、体が大きくなって一族を追い出されたって聞いたけど。

「大は……小を……」

 大きい方が良いと、小さい私は思うのだ。

「城門は私が相手をしますので、ムーちゃんは弓や魔法士の排除をお願いします」

 ハーピーのクウは、上空から風の魔法でも放つつもりだろう。
 空が飛べるというメリットは、かなり大きいと思う。
 魔法すら使えない私は……

「分かった」

「では、投下します!」

 投げ捨てられるのは嫌だなぁ。



「着地……」

 紺色の鎧軍団の中央。まさに敵陣のど真中に落とされた。

「こ、こいつ!?」

「魔王のかっ!?」

「やっちまえっ!!」

 次々と剣を抜き放っては、私に襲い掛かってくる兵士たち。
 雑兵しかいないのであれば、攻撃が私に通じるわけがない。
 よって、

「な、なんだこいつっ!?」

「硬てぇ!」

 魔法ならともかく、量産された鉄の剣ならば、私の体に傷は付かない。
 そして、

「剛打」

「ぐわっ!?」

 薄い鉄の胸当てならば、私の一撃を防ぐことは無理。一方的な攻撃。まさしく独壇場だ。

「っと」

 活躍に心を踊らせている場合じゃない。まずは遠距離系の兵士を一掃しないと。

「じゃま」

「ぶわっ!?」

「なんだっ!? このチビっ!!?」

 弓兵までは十メートルちょっと。
 その合間にいる雑兵では、私を止められない。

「東は楽勝じゃなかったのかよっ!?」

「アイツはどこに行ったんだよ!?」

「ローブの男なら、さっさとどっかに行っちまったよっ!!」

 残り五メートルもない。この距離なら、

「一気に……!」

 両手の平を地面に添えて、体内の魔力を流し込んでいく。
 大地から生まれたゴーレム族わたしだからこその荒々しい大技。

「アースシェイク」

 本来なら土の魔法に属する『アースシェイク』。それを、魔法が使えない私は、魔術として使用することができる。

 魔法は、魔力に改編術式という方程式のようなものを用意する必要が出てくる。
 一般的には呪文を口にする事だけど、とにかく、発動までに時間が掛かるし、魔術以上の魔力が必要になる。

 それに対して、魔術は技術の一種。やり方を身に付ければ、扱うことが出来る技を指す。
 魔法のように確実に使えるかどうかは練習次第だけど、魔力量が少なくても扱える工夫が施せるのも事実。
 効果が現れるのも、使用者の意思で、ある程度左右できる。
 魔法も多種多様だけど、種類や系統では圧倒的に魔術の方が多種多様だ。

 土に関連する魔法しか使えないのが難点だけど、魔法を魔術として使用出来るというのは凄いことだ。と、初代魔王様に誉められた。

 その魔王様は、人間にコロサレタ。

「……っ」

 今はそんなことを考えてる場合じゃない。
 魔王城を守る。そのためにも、弓矢を使う兵士を倒さないと。

 今度は魔王城までウバワレル。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品