三代目魔王の挑戦!
魔王城防衛に挑戦いたします
――魔王とクサリがペルンに向かって走り始めてから十分後。
「敵兵力、残り三百です」
吸血鬼一族のモルモーが前衛で敵を蹴散らしている。
その成果が、五百もいた兵士を三百まで削ったことにある。
ここは一気に……
「魔法による殲滅を。前衛に出ているモルモーを下げ、偵察の応援に回してください。敵戦力の再調査を」
「戦力の再調査? ですか?」
「はい。かなりの数の兵士がいるにも関わらず、魔法による攻撃が一切ありませんでした。それが不可解で仕方がありません」
魔法が跳んでこないのも、モルモーが広範囲の攻撃を可能としている根拠になる。
これで初級魔法の一撃でも放たれようなものならば、小さな蝙蝠に変化している彼女にとっては、堪ったものではない。
「……物理……ゴリ押し?」
「そこまで馬鹿な敵だと思えないですね」
確かに。こちらの兵力は、メイド長とペルンに潜入している副メイド長のネーロと行方不明になっているリンを除いて七人。
メイド長がいない今。相手の兵力を全て――千二百の兵力をぶつければ、間違いなく落とせる。
しかし、
「五百の兵だけ……それも、西から南まで展開しておきながら、西側からしか攻めてこない様子」
情報が不足しているのか。あるいは、
「どう考えても」
「罠……あるいは……作戦」
「はぁ……」
どんな作戦なのか。敵の一人でも捕まえては、拷問でもしてやりたいところですね。時間も余裕もないので却下ですが。
「ともかく。モルモーを前衛から下げ、城に戻ったところでエクスプロージョンを放ってください。その後は、城門に近付かれる前に魔法で打ち崩します」
攻めてこない兵士には、残念ながら攻撃が当たらない。
もう数百メートル近ければ、広範囲の魔法で巻き込めるのですが。
「では行動開始を。準備はお忘れなく」
「「「はい」」」
謎は残りますが、城の防衛という観点では上出来。
あとはメイド長が、敵の領主を討ち取るのみ。
「た、大変! 大変っ!!」
「どうしましたか?」
「がら空きの東側にペルンの兵士!」
「なっ!?」
空けていたのは作戦のためでしたか。西から南にかけては、東の守りを薄めるため。
理解はしてましたが……こちらの兵力を考えれば、放置が最善だった。
数か力がないためだ。今後の課題ですね。
「……数は?」
「三百! 西側と南側も!」
「全方角……三百ずつ……余力……百」
北側は崖。その先は海。つまりは、
「完全に方位されたということですね」
前衛で戦えるだけの戦力はあった。
ただ、連戦で二百の兵士を削ったモルモーを下げさせないと。
彼女は広範囲の戦闘が得意ですが、持久戦はかなり苦手。
メイド長が召喚した日からは、体力面の強化をされていましたが、それでも、持久戦を無視した戦い方をしていたのは事実。
これ以上の継続は、彼女を失うことと同義。
そしてそれは、こちらの戦力を大幅に削ってしまう。
「仕方がありません。ムーちゃん」
「はい」
「十分だけで構いません。東側の戦線維持をお願いします」
「向こうに……押し込んでも?」
「無茶はしないでくださいね?」
土粘土で出来た体のムーちゃん。
彼女はゴーレム族であり、体の硬さが特徴の種族。
なかでも、ムーちゃんは鋼を核にしているため、硬さは頭二つ分は抜け出ている。メイド長の一撃を片手で受け止められるレベルだ。
背の低さは、土が付着しにくいデメリットが現れているだけ。
そんなデメリットのために、巨体で戦うことが主体のゴーレム族からは、除け者にされていたようですが。
「今はその硬さが重要になります。基本は撹乱を、安全を確保しつつ迎撃をお願いします」
「あい」
「ムーちゃんが時間を稼いでいる合間に、レイ」
「はい」
「広範囲の魔法詠唱を。上級の使用を許可します」
「ムーちゃんを巻き添えにしてしまいませんか?」
「ムーちゃんの回収には私が向かいます。上空に引き上げますので、躊躇わずに撃ってください」
「分かりましたわ。でしたら、ビッグウェーブより、タイダルウェーブの方がよろしいですわね」
ビッグウェーブは、二十メートル程度の高さの津波を生み出す魔法。
その高さから叩き付けられる水により、相手を殲滅するようなイメージ。
対して、タイダルウェーブは、地を這うような渦潮を生み出す魔法。
高さは膝上程度でありながら、水流の足留めと足を滑らせた相手の溺死を目的としている。
なにより、彼女――人魚族のマレイ。
水の魔法に秀でた一族であり、彼女はさらに特化している存在。
代わりに、尾ひれが退化しているため、水中での生活が困難だとか。
私はハーピィーであるため、空のことならともかく、海の中はさっぱりですね。
「そうですね。そちらでお願いします」
これで東側は問題ないはず。異常があったとしても、時間稼ぎにはなるはず。
その意味も含め、森の中に潜む余力が気になるところですが……出てこない兵力を相手にしている余裕もない。
「モルモーは南側に移動と伝えてください。交戦は相手が仕掛けてきてからで構いません。では」
メイド長が悪辣領主を撃ち取るまで
「魔王城防衛をっ!」
ここを守り抜く!
「敵兵力、残り三百です」
吸血鬼一族のモルモーが前衛で敵を蹴散らしている。
その成果が、五百もいた兵士を三百まで削ったことにある。
ここは一気に……
「魔法による殲滅を。前衛に出ているモルモーを下げ、偵察の応援に回してください。敵戦力の再調査を」
「戦力の再調査? ですか?」
「はい。かなりの数の兵士がいるにも関わらず、魔法による攻撃が一切ありませんでした。それが不可解で仕方がありません」
魔法が跳んでこないのも、モルモーが広範囲の攻撃を可能としている根拠になる。
これで初級魔法の一撃でも放たれようなものならば、小さな蝙蝠に変化している彼女にとっては、堪ったものではない。
「……物理……ゴリ押し?」
「そこまで馬鹿な敵だと思えないですね」
確かに。こちらの兵力は、メイド長とペルンに潜入している副メイド長のネーロと行方不明になっているリンを除いて七人。
メイド長がいない今。相手の兵力を全て――千二百の兵力をぶつければ、間違いなく落とせる。
しかし、
「五百の兵だけ……それも、西から南まで展開しておきながら、西側からしか攻めてこない様子」
情報が不足しているのか。あるいは、
「どう考えても」
「罠……あるいは……作戦」
「はぁ……」
どんな作戦なのか。敵の一人でも捕まえては、拷問でもしてやりたいところですね。時間も余裕もないので却下ですが。
「ともかく。モルモーを前衛から下げ、城に戻ったところでエクスプロージョンを放ってください。その後は、城門に近付かれる前に魔法で打ち崩します」
攻めてこない兵士には、残念ながら攻撃が当たらない。
もう数百メートル近ければ、広範囲の魔法で巻き込めるのですが。
「では行動開始を。準備はお忘れなく」
「「「はい」」」
謎は残りますが、城の防衛という観点では上出来。
あとはメイド長が、敵の領主を討ち取るのみ。
「た、大変! 大変っ!!」
「どうしましたか?」
「がら空きの東側にペルンの兵士!」
「なっ!?」
空けていたのは作戦のためでしたか。西から南にかけては、東の守りを薄めるため。
理解はしてましたが……こちらの兵力を考えれば、放置が最善だった。
数か力がないためだ。今後の課題ですね。
「……数は?」
「三百! 西側と南側も!」
「全方角……三百ずつ……余力……百」
北側は崖。その先は海。つまりは、
「完全に方位されたということですね」
前衛で戦えるだけの戦力はあった。
ただ、連戦で二百の兵士を削ったモルモーを下げさせないと。
彼女は広範囲の戦闘が得意ですが、持久戦はかなり苦手。
メイド長が召喚した日からは、体力面の強化をされていましたが、それでも、持久戦を無視した戦い方をしていたのは事実。
これ以上の継続は、彼女を失うことと同義。
そしてそれは、こちらの戦力を大幅に削ってしまう。
「仕方がありません。ムーちゃん」
「はい」
「十分だけで構いません。東側の戦線維持をお願いします」
「向こうに……押し込んでも?」
「無茶はしないでくださいね?」
土粘土で出来た体のムーちゃん。
彼女はゴーレム族であり、体の硬さが特徴の種族。
なかでも、ムーちゃんは鋼を核にしているため、硬さは頭二つ分は抜け出ている。メイド長の一撃を片手で受け止められるレベルだ。
背の低さは、土が付着しにくいデメリットが現れているだけ。
そんなデメリットのために、巨体で戦うことが主体のゴーレム族からは、除け者にされていたようですが。
「今はその硬さが重要になります。基本は撹乱を、安全を確保しつつ迎撃をお願いします」
「あい」
「ムーちゃんが時間を稼いでいる合間に、レイ」
「はい」
「広範囲の魔法詠唱を。上級の使用を許可します」
「ムーちゃんを巻き添えにしてしまいませんか?」
「ムーちゃんの回収には私が向かいます。上空に引き上げますので、躊躇わずに撃ってください」
「分かりましたわ。でしたら、ビッグウェーブより、タイダルウェーブの方がよろしいですわね」
ビッグウェーブは、二十メートル程度の高さの津波を生み出す魔法。
その高さから叩き付けられる水により、相手を殲滅するようなイメージ。
対して、タイダルウェーブは、地を這うような渦潮を生み出す魔法。
高さは膝上程度でありながら、水流の足留めと足を滑らせた相手の溺死を目的としている。
なにより、彼女――人魚族のマレイ。
水の魔法に秀でた一族であり、彼女はさらに特化している存在。
代わりに、尾ひれが退化しているため、水中での生活が困難だとか。
私はハーピィーであるため、空のことならともかく、海の中はさっぱりですね。
「そうですね。そちらでお願いします」
これで東側は問題ないはず。異常があったとしても、時間稼ぎにはなるはず。
その意味も含め、森の中に潜む余力が気になるところですが……出てこない兵力を相手にしている余裕もない。
「モルモーは南側に移動と伝えてください。交戦は相手が仕掛けてきてからで構いません。では」
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