三代目魔王の挑戦!

シバトヨ

初めての戦闘に挑戦!

「状況は?」

 魔王城に到着した俺とクサリさんは、蝙蝠を飛ばしてくれたモルモーさんに状況を尋ねていた。
 北東から塀を乗り越えたから、ペルンの兵士を一目も見てねぇんだよな。

「はい、メイド長。兵の展開は完了したみたいです」

「なぁ?」

「はい、なんでしょうか?」

 俺は疑問に思っていたことをモルモーさんに聞いてみることにした。

「なんで東側は、がら空きなんだ?」

「それは分かりかねます」

「そうか……」

 分からねぇならしょうがないよな。うん。

「敵の狙いもそうですが、リンさんとローネさんの行方は分かりますか?」

「それが……」

 と、モルモーさんは肩を落とす。
 どうやら行方知らずって状況らしい。

「……では、こちらの兵を二分します。片方は魔王城ここを守ってください。残りはペルンに続く街道を拓くのを手伝って頂きます」

「分かりました。適任者の選任をしておきます」

「よろしくお願いします。私は敵の兵力を視認してきます。魔王様は」

「おう!」

 クサリさんはさっき、俺が強くなったと言ってくれた。
 俺にその自覚は無いが、頼られるだけの存在にまで成長したんだ。
 少なくとも瞬殺されるような弱さじゃねぇはずだ!

「傷を癒しておいてください」

「任せておけっ!」

 敵すら見てねぇのにボロボロだからなっ!



「想像以上ですね」

 一時間もしないで、クサリさんは戻ってきた。
 俺との模擬戦では汗一つ掻かないクサリさんが、冷や汗を数滴だけ流している。

「前回の報告書では、一人当たり二百人でしたが……城を囲んでいる兵力が二千人前後。ペルンの領主が全兵力を投入しているとは考え難い」

「つまり」

「……ペルンに辿り着いてからが本番となります」

「「………………」」

 戦力を分割する必要がある上に、街に辿り着けるだけの戦力が必要。
 さらにおまけの、街についてから領主を倒すための兵力も。
 どう考えても人数が足りない。

「……作戦を変更します」

 ちょっと思案したクサリさんは、唐突に作戦を告げてきた。

 ――三十分後。

「マジで?」

 俺とクサリさんは、城の西側で仁王立ちをしていた。

「マジですよ」

 クサリさんの作戦は、とんでもなくブッ飛んでいた。というか、作戦とすら言えない。

「私と魔王様の力が揃えば、兵の百や二百……いえ、五千や一万を揃えようとも、他愛ありません!」

「相手にとってはなっ!!」

 五千や一万相手に二人だぞっ!? 無茶無謀とかのレベルではないだろっ!!?

 と思いながらも、俺はクサリさんの提案したゴリ押しに、ちょっと賛同していた。

「もっと言えば、城を破棄しちまっても良いような気がするんだがな」

「領地が入れ替わるだけです。それに――」

 クサリさんは俺より先に足を踏み出し、

「――三回も負けるのは、悔しいですからね」

「そりゃあ」

 負けたくねぇよな。
 少し頬を吊り上げながら、俺はクサリさんの後を追った。



「魔王様っ!」

「こんっのっ!!」

 クサリさんに注意を促され、背後にいる紺色の兵士に拳を喰らわせる。

「ぐふぅわぁ!」

 俺の右拳を顔面に受けた兵士は、二、三メートルほど後ろに吹き飛ばされる。

 どうやらクサリさんの言っていたことは事実だったようだ。
 今日まで、クサリさんとしか戦ってなかったから、俺が強くなったのか分からなかった。

 だが、並みの兵士だったら……

「いくらでも掛かって来いやぁぁぁあああ!!」

「調子に乗ってます、とっ! 足元を救われます、よっ!!」

「それは問題ないっ!」

 なぜなら、

「クサリさんが全て倒してやるからなっ!」

 今のところ、俺は一人しか倒していない。
 対してクサリさんは、既に二百人を軽く突破している。
 実際、強くはなっているんだろう。
 俺より数歩先を走っているクサリさんが、正面の敵を軒並み倒していくから出番がないだけで。

「バカなことをっ! 言っていないでっ! さっさとっ! 進みますよっ!!」

 マジで頼れるメイドさんだぜっ!
 喋りながらも、一度の行動で四人を吹き飛ばす。
 その内の一人は五回転のバク宙をさせられている。
 アレはマジで堪えるからなぁ~。

「使えないっ! 魔王様ですっ! ねっ!!」

 さらに三人追加された。

「全力で応援するぜっ!」

 俺は未だに一人だけ。

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