徒然なるままに

嘉禄(かろく)

Friendship of the blood

 ️吐血ドッキリなので吐血表現あり
     吐く表現もあるので苦手な方は回れ右推奨

「はい、どうも月依るいです。
今日は、動画撮影で叶希ときを呼んでるんですが…その叶希に、ドッキリを仕掛けたいと思いまーす」


と、僕は1人こそこそとカメラで動画を撮っている。
向こうの部屋では僕と同じく歌手の叶希(男だよ、凄くかっこいいんだ)がスタッフさんの準備が終わるのを待っている。
叶希も日本の出身ながら海外で活躍してるアーティストで、僕とは長い付き合い。
因みにこのドッキリは、叶希がターゲットなので僕とスタッフさん全員グル。
ごめんね叶希、と心の中で謝っておく。
で、どんなドッキリをするのかと言うと…


「ドッキリの内容は、『突然月依が血を吐いたら叶希は心配してくれるのか?!』です!」


この動画は日本でも見られるように某動画サイトに上がる予定なんだ、みんな楽しんでくれるといいな。
叶希は優しいし、僕を見かける度に話しかけてくれるんだよね。
そんな叶希だから、きっと心配してくれる!と思う!

という謎の自信を持っていたところで向こうの部屋にいる叶希に呼ばれた。


「準備終わったよー」
「はーい今行くー…ということで、行ってきます」


僕の手元のカメラでの撮影を終えて、部屋を移動して叶希の隣に座る。
目の前にはカメラ、そして少人数のスタッフさん。


「よし、じゃあ始めるね」
「おうよ」


叶希に声をかけてから撮影を始める。
まずは挨拶から。


「どうも、月依と?」
「叶希です!」
「はい、今日はですね…」
「何をするん?」


慣れている間柄だけあって、叶希が質問をしてくる。
それを僕は苦笑しながら答えた。


「ちょっとこれから言うから…今日は、僕達2人で心理テストをしたいと思います!」
「心理テスト?」
「うん心理テスト」


今度はそれを聞いた叶希が苦笑する。
まあ、ドッキリを仕掛けるための動画を撮る口実だから在り来りだろうと問題ないんだけど。


「なんで今更?」
「なんでって、ほら僕達割と私生活が見えないというかミステリアス?って言われるじゃん」
「あー…確かに?」
「で、この機会に心理テストで僕達のことを知ってもらおうという企画なんだよ」
「なるほどね?」
「じゃあ叶希が理解したところで早速始めましょう!」


と、一旦編集点を作って僕はスタッフさんに声をかけた。


「ホワイトボードとかあります?
問題の答え書けるような」


そこで僕はスタッフさんと話すために席を立って叶希から離れる。
叶希はその間すーごい不思議なボケをしてた。
叶希のメンツのために言わないでおくけど、まあここは動画でカットしない予定だから結局晒されてしまうね。

そして、ちょっとして僕と叶希の分のホワイトボードを貰って戻った。
まあその間何をしていたかというと、スタッフさんから血糊袋を貰って口に含んでいた。


「はい叶希のホワイトボード。
それに答え書いてね」
「はいよ」


叶希にホワイトボードを渡して、僕のホワイトボードもテーブルに置いてからカメラ外で水を飲む。
これでドッキリの準備完了。

叶希の隣に座り直し、スタッフさんが問題の準備をする。
まあ僕が直ぐにドッキリに入るから在り来りな問題しか用意してないけどね。

そんな事も知らない哀れな叶希が1問目を見て口を開いた。


「なになに?…貴方の目の前に三品のおかずがあります、どれから食べますか?
んー…」


叶希が悩んでいるところで、僕は演技を始めた。
ぴくっと震えて左手を持ち上げる。
ふと叶希がこっちを見る。
そこで軽くえずいて見せると、叶希が声をかけてきた。


「…大丈夫?」


それには答えず、待ってと言うように叶希から顔を背ける。
今のところ上手くいってる、と思う。
耐えるように俯くと、叶希は


「水飲みな?」


と言ってくれた。やっぱり優しい。
でも既に水は口に含んでるので、無理だと言うように少し吐いてみた。


「え、大丈夫?ほんとに」


叶希が僕の顔を覗き込む、とそこでもう少し強めに音を立てて吐くと叶希は冷静に立ち上がってスタッフさんのところに行った。


「大丈夫?なんかあれ、袋あります?
…あー、それでもいいから。あとタオル」


その間僕は苦しそうに聞こえる呼吸をしながら上を向く。
きっと、口を押さえる手は既に真っ赤だ。
首にも伝ってる感じがある、テーブルにも垂れてるみたい。
そこで叶希は戻ってきて焦りを初めて浮かべた。


「…え、まじで大丈夫?!」


近寄ってくる叶希を見ながら再び下を向いて激しく咳き込む。
より手が真っ赤になり、叶希は僕の隣に座る。


「と、取り敢えずタオル!
口に当てとけ!」


僕にタオルを渡してきたので咄嗟に受け取って口に当てる。
その間も咳き込む演技は忘れない。


「ちょっと待ってろよ」


叶希が袋を手に取ったところで、僕はネタばらしをする事にした。
もう充分だろうと思って。


「…叶希…」
「なんだよ、どした苦しい?」
「…実は、これドッキリでしたー!」
「…ええー?!」


叶希がとても驚いた反応をする。
叶希は常にオーバーリアクションだから、本当に映像生えする。


「僕が突然血を吐いたら、友人は心配してくれるのか!っていうドッキリでしたー」
「嘘でしょ?!いや、なんで赤いのが出たのかと…血?!ってなって…」
「これ血糊だから。これを口に含んで水飲んで、あとはぶはってするだけ」
「初めて見たー!」
「いえーい大成功ー!」


叶希は本当に心配してくれていたみたいでほっとした表情をした。
ちょっと心は痛むけど、上手くいって大満足。


「いやー上手くいってよかった。
冷めた人なら『治ったら言ってねー』くらいの反応されると思って」
「いやビビるって!
でも俺も吐血してみたいなー、それ使って」
「やーやめた方がいい。血糊めっちゃ不味かった」
「そうなん?じゃあやめとこ」
「ということで、叶希に対する吐血ドッキリ大成功ー!
面白かったなと思ったら高評価お願いします、まったねー!」
「またねーーー!!!!」


と、こんな感じで撮影は終了した。
このあと叶希にはもう1回ごめんねと謝って、軽く気にしてないよって言われたからとーっても安心した。

いつか叶希にドッキリされ返されない事だけ願っておこうっと。

…と、この動画出したらきっと…いや絶対奏太も見るから不安にさせちゃうかも。
そしたらなんか埋め合わせしよ。



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