徒然なるままに
The last wish
『…悪い、凪。
俺…運命の番を見つけたんだ』
俺は雨の中、傘もささず一人で歩いていた。
あの言葉を言われて、思わず逃げるように走り出して…もう走る力も無くなったのに、足は進む。
もう涙は出ない。
泣きすぎると出なくなるっていうのは、本当だったんだ。
ぼんやりとする脳の一部が何故か冷静に答えを出す。
…いや、たださっきの事を思い出したくないだけかもしれない。
「…信じてたのに。
いつか番って、俺の事を救ってくれるって…幸せにしてくれるって…」
じゃあ誰が俺を救ってくれる?
…いや、もう誰も俺の事なんか救ってくれないか。
その考えに辿り着いて、きつく唇を噛み締める。
「…だったらもう誰でもいい。
どんなにクソ野郎でも、まともな生活さえ出来れば…」
裏路地にでも出れば、Ωのフェロモンでαはいくらでも釣れる。
いや、そういう系の店に働きに出てもいいかもしれない。
とにかく誰でもいいから俺と番って。
愛してくれなくていいから。
…いっそ、ここにΩがいるぞとでも叫べば釣れるだろうか?
叫んでみようと息を吸い込んだ時、後ろから聞き覚えのある声がした。
「…凪くん?」
「…先生」
…どうしてここに。
そう聞く間もなく、俺は反射的にその人に抱きついていた-
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