徒然なるままに

嘉禄(かろく)

Absolute guardian



-『俺がお前のことをずーっと守ってやる!』

その言葉だけは、今まで一度も破られたことは無い約束


俺は一颯いぶきの秘書として、一日中行動を共にしている。
その中で、一颯が離れた隙を狙うタイプのクソな奴は山ほどいる。
発情期であろうとなかろうと、だ。
その体力は一体どこから来るのか甚だ疑問でしかない。
真道の名が怖くないのか、と常々思うけどバレなければいいという思考らしい。
そして、今日もその類に巡り会った。
抑えきれない俺の匂いに気づいたのか惑わされたのか、人通りの少ない廊下で壁に追い詰められた。


「Ωがこんな所で何してるのかなぁ、襲って欲しいの?」


そう言いながら俺の首を舐める。
悪寒が走る、何度もされたがいつでも気色が悪い。


『こいつ、俺の事知らないのか』


と、脳内で相手を嘲るがなんの抵抗にもならない。
まあ抵抗しようとしたところで相手の体格の方が上だ、組み敷かれるに決まってる。
けどなんの抵抗をしないのも俺のポリシーに反する。
それに抵抗しないと、のちのち合意の上だったとかふざけたことを言い出す奴もいるので厄介だ。


「…やめてください」


地声より低くして一言発する。
この言葉に意味があるのではない、行動に意味があるのだ。
幸い左上に監視カメラがある、それに気づかないこいつの目は節穴だ。


「やめて欲しい?変なことを言うね、そんなに匂いだだ漏れにさせてさ」


したくてしてる訳じゃない、いい加減イライラしてきた。
ぶっ飛ばしてもいいだろうか、と体をまさぐられながら考える。
すると、待っていた声が降ってきた。


「…俺の連れに何か用ですか?」


見上げると、一颯が立っていた。
いつも通り笑みを浮かべているが目は笑ってない。流石だ。


「…あ、あんた真道の…!」


そう言って相手は悔しげに去っていく。
俺に欲情していたからあれを収めるのは大変だろう。
呆れ気味に見送ると、一颯が溜息をついた。


「…凪、どうしてもっと抵抗しなかった?前は大暴れしてたのに」
「それで傷害事件として訴えられても面倒じゃん?」
「…まあね、ほら帰るよ。
一人にしてごめんね」


そう言って一颯は俺の肩を少し抱く。
…この距離感が、俺は好きなんだ。
そう密かに思いながら、俺は一颯と歩みを合わせた-



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