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感じるのは快楽だけ

白鹿

安心の快楽


ここに連れてこられてからどれほどの時間が経過したのかわからないが、
ほとんど食べ物を口にしていない。
 

胃の中は空っぽで、そんな状態からなのかわからないが体が温まっていくのを感じる。
 

犯人がこちらを眺めている中、食べ進めていく。
 

優しい味でなぜか安心感が心の中に広がってゆく。
 
 
もしかして今なら聞けるのではないか。
 
俺がここにいる理由が。
 
 

鍋の底にあるおかゆをさらってお皿へ移すときふと思い、犯人の方をちらりと見る。
 


犯人は手持無沙汰なのか指を頻繁に動かしている。
 

マスクのせいで表情がわからない。
でもこちらをうかがっている雰囲気だ。
 
 


先ほどの話し方や、声色は優しげで今自分が置かれている状況を一瞬忘れてしまった。
 

いっそう犯人の目的がどんなものなのかわからなくなった。
 
犯人にとって俺にやさしく接することの意味とは何なのだろうか?
 
 
 
「ごちそうさまでした。」
 
 

考えている間に食べ終えてしまった。
 
 
『よかった。全部食べたんだな。』
 
マスクの中で微笑んでいるのを感じる。
 
 

犯人は立ち上がりトレーに乗った鍋と食器を手にした。
 
 
聞くなら今しかないのではないか、今の犯人はあまり恐怖を感じない。
 
でも、急に豹変したりとか、、、
 
 

太ももの上に乗った手のひらにはじっとりと冷や汗が浮かぶ。
 
 
聞かないと、何も変わらない。
 
わからない。知らない。というほど不安で怖いことはない。
 
 


「あ、の、」
 



小さい声だった。
 
でも犯人には聞こえたようだ。
 


ちょうどドアノブに手をかけているところだった犯人はこちらは振り返る。
 


『どうした?』
 
 
優しげな声だった。
 
 

思い切って口にする。
 
 
「なんで、俺はここにいるんですか?」
 



声はだんだんとしりすぼみになってしまった。
 


だが、本人の顔をじっと見つめながら尋ねた。
 
 
犯人はこちらを見つめて何も言わない。
 
 

十秒ほどたってから
 










『これ片づけてくるからちょっと待ってろ。』
 
 

そういって部屋を出ていった。
 

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