神の代理人
狂化エルフ
 森を出て幾日か野営をしながら先へ先へと進む。隣を鼻歌交じりに歩くヘカテの話によればあと、2日ほどで聖都「ヘディオン」に到着するらしい。そこは昔ながらの生活を営んでおり、話を聞く限りでは中世辺りの時代と酷似しているらしい。
 ようやく剣と魔法の世界らしくなってきたのだろう。
 道中無理のない程度にルーに護身術を教えるのも苦労した。なんせ俺は叩き込まれただけだから色々と教えにくいのだ。使い込んで覚えた感覚を体格も性別も違う者に教えるのはかなり難しいと悟った。
「いいか?相手の心臓の位置を頭の中で想像しながらそれを貫通する打撃を放つイメージだ。」
「ねぇ、それ護身術なの?だいぶ物騒なんだけど」
「何言ってんだ?相手殺せば自分の身は護れるだろ?」
「む、無茶苦茶だ!」
「こ…こう?」
 スバンっと空を切りながら打撃が放たれる。鬼人種は只人種と比べ力が遥かに強いらしく、あの打撃をモロにくらえば只人種は半身が消し飛ぶに違いない。
「護身術じゃないよもはや殺人術だよ!」
「うるせぇなぁ。教えろって言ったのはヘカテだろうが」
 ヘカテが文句を言うが俺の知ってる護身術なぞ殺人術でしかない。今の心臓破壊術だって人間に特化したものでほかの動物には使い勝手が限られる。
 まぁ、あれだけの力があれば大抵の生物は消し飛ぶだろうが……。
「いや、力が入りすぎている。それじゃ身体が持たない。」
「……。難しいなぁ」
「頑張って。ルー。その力だけで既にマスターの打撃力を超えています。だから、あとは技量だけですよ」
「え?ホント?」
「まぁな。」
「うーん。」
 ズバンッズバンッと空を捉えるその拳がたまたま落ちてきた葉に当たると赤い紋章が広がり、バチッと火花がちった。
「う、うわっ。何!」 
「下がって!」
 まるで空間にヒビが入って行くように割れ目が広がり、ガラスのようにベリベリと割れていく。
「結界か。それもかなり強力な。」
「魔法か?」
「厳密には違うけど。まぁ、そんなとこ。」
「えっと…一体何が?」
「高出力魔力反応。敵来ます!」
「させないよ!召喚門」
 ヘカテが空中に何かの触媒を投げ、印を刻む。触媒同士を雷撃が包み、それらはやがて門になった。扉の横にいた骸骨がけたけたと笑い、門を開く。
 そこには闇があった。
 そこだけ夜を切り取り、乱暴に貼り付けた様な光を全く反射しない闇が…あった。
 その闇に向け、2、3条の光が吸い込まれていく。
「やれやれ…トラップに固有結界使うだなんて…作成者はエルフかな」
「魔法が得意だからとかそんなとこか?」
「うん。これは固有結界って言って術者の深層世界を作り出して相手を閉じ込める魔術だよ。」
「魔法と魔術…その違いはなんだ?」
「大きく違うのは権限かな。」
「権限…ですか…?」
「あぁ。事象を変更できないのが魔法。出来るのが魔術って言うの。」
「事象?」
「うん。例えば火を起こすとするだろ?魔法では印を刻み、そこに魔力を流せば刻印通りの結果をもたらす。」
「まぁ、理屈の上ではな。」
「魔術は違うと言うのですか…?」
「そう。魔術は印を刻む必要すらない。火を起こしたいなら魔力を注ぎ、燃え盛る炎をイメージすればいい。」
「何もない所から突然火を起こせるのか」
「そんな認識で構わないよ。」
「そっちの方が便利そうなのに何故お前は刻印魔法を使うんだ?」
「いやぁ私の分体って魔力が少ないからさ。刻印魔法しか使えないの。」
「なるほどスペック不足か」
「パソコンみたいに言うな!」
「ぱ?パソコン?」
「あぁ、いや、なんでもない。それより敵!」
 改めて周囲を確認しても状況は何も変わっていなかった。あれだけコントしていたというのに…実は近くにいないという可能性……。
「……。カイト、あそこだよ。あの木の根元」
「あぁ、そこか。」
「ウゥゥゥゥ」
「まって、様子が変だ。」
 木の根元には予想通り耳の長いエルフらしき生き物がいた。しかしその眼は充血し、歯を剥き出しにしながらこちらへ歩いてくる。
 知識の中で近いものをあげるとするならホラー映画のゾンビだろう。
「なんだ?」
「ウゥゥゥゥウガァ!」 
「狂化の呪印が施されてますね。マスター、お下がりを。」
「狂化!?確かなのかい?ヘカテ!」
「えぇ。間違いありません。」
「ならあの子はもう……。」
「どういうこと?」
「説明は後々。とっとと逃げるよ!話が通じる相手じゃない」
「お、おう。」
 結界の中、どれほど進めるのか分からないがとりあえず目の前のエルフから逃げることにした。
 ようやく剣と魔法の世界らしくなってきたのだろう。
 道中無理のない程度にルーに護身術を教えるのも苦労した。なんせ俺は叩き込まれただけだから色々と教えにくいのだ。使い込んで覚えた感覚を体格も性別も違う者に教えるのはかなり難しいと悟った。
「いいか?相手の心臓の位置を頭の中で想像しながらそれを貫通する打撃を放つイメージだ。」
「ねぇ、それ護身術なの?だいぶ物騒なんだけど」
「何言ってんだ?相手殺せば自分の身は護れるだろ?」
「む、無茶苦茶だ!」
「こ…こう?」
 スバンっと空を切りながら打撃が放たれる。鬼人種は只人種と比べ力が遥かに強いらしく、あの打撃をモロにくらえば只人種は半身が消し飛ぶに違いない。
「護身術じゃないよもはや殺人術だよ!」
「うるせぇなぁ。教えろって言ったのはヘカテだろうが」
 ヘカテが文句を言うが俺の知ってる護身術なぞ殺人術でしかない。今の心臓破壊術だって人間に特化したものでほかの動物には使い勝手が限られる。
 まぁ、あれだけの力があれば大抵の生物は消し飛ぶだろうが……。
「いや、力が入りすぎている。それじゃ身体が持たない。」
「……。難しいなぁ」
「頑張って。ルー。その力だけで既にマスターの打撃力を超えています。だから、あとは技量だけですよ」
「え?ホント?」
「まぁな。」
「うーん。」
 ズバンッズバンッと空を捉えるその拳がたまたま落ちてきた葉に当たると赤い紋章が広がり、バチッと火花がちった。
「う、うわっ。何!」 
「下がって!」
 まるで空間にヒビが入って行くように割れ目が広がり、ガラスのようにベリベリと割れていく。
「結界か。それもかなり強力な。」
「魔法か?」
「厳密には違うけど。まぁ、そんなとこ。」
「えっと…一体何が?」
「高出力魔力反応。敵来ます!」
「させないよ!召喚門」
 ヘカテが空中に何かの触媒を投げ、印を刻む。触媒同士を雷撃が包み、それらはやがて門になった。扉の横にいた骸骨がけたけたと笑い、門を開く。
 そこには闇があった。
 そこだけ夜を切り取り、乱暴に貼り付けた様な光を全く反射しない闇が…あった。
 その闇に向け、2、3条の光が吸い込まれていく。
「やれやれ…トラップに固有結界使うだなんて…作成者はエルフかな」
「魔法が得意だからとかそんなとこか?」
「うん。これは固有結界って言って術者の深層世界を作り出して相手を閉じ込める魔術だよ。」
「魔法と魔術…その違いはなんだ?」
「大きく違うのは権限かな。」
「権限…ですか…?」
「あぁ。事象を変更できないのが魔法。出来るのが魔術って言うの。」
「事象?」
「うん。例えば火を起こすとするだろ?魔法では印を刻み、そこに魔力を流せば刻印通りの結果をもたらす。」
「まぁ、理屈の上ではな。」
「魔術は違うと言うのですか…?」
「そう。魔術は印を刻む必要すらない。火を起こしたいなら魔力を注ぎ、燃え盛る炎をイメージすればいい。」
「何もない所から突然火を起こせるのか」
「そんな認識で構わないよ。」
「そっちの方が便利そうなのに何故お前は刻印魔法を使うんだ?」
「いやぁ私の分体って魔力が少ないからさ。刻印魔法しか使えないの。」
「なるほどスペック不足か」
「パソコンみたいに言うな!」
「ぱ?パソコン?」
「あぁ、いや、なんでもない。それより敵!」
 改めて周囲を確認しても状況は何も変わっていなかった。あれだけコントしていたというのに…実は近くにいないという可能性……。
「……。カイト、あそこだよ。あの木の根元」
「あぁ、そこか。」
「ウゥゥゥゥ」
「まって、様子が変だ。」
 木の根元には予想通り耳の長いエルフらしき生き物がいた。しかしその眼は充血し、歯を剥き出しにしながらこちらへ歩いてくる。
 知識の中で近いものをあげるとするならホラー映画のゾンビだろう。
「なんだ?」
「ウゥゥゥゥウガァ!」 
「狂化の呪印が施されてますね。マスター、お下がりを。」
「狂化!?確かなのかい?ヘカテ!」
「えぇ。間違いありません。」
「ならあの子はもう……。」
「どういうこと?」
「説明は後々。とっとと逃げるよ!話が通じる相手じゃない」
「お、おう。」
 結界の中、どれほど進めるのか分からないがとりあえず目の前のエルフから逃げることにした。
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