神の代理人
教会と方針
 荘厳な教会。毛足の長い絨毯がこの世から音を消し去り、話し手の声だけを世に知らす。
「そうか。ディグルドが殺られたか。分かった。下がって良いぞ。」
  暗闇に閉ざされた教会で深く誰かがため息をつく。
「予想以上ですな。『冥府ノ神子』とやらは。異端児を見張らせていた使い魔も最後の連絡の後消息不明ですし」
「直ちに新たな使い魔を放ちなさい。」
「しかし…相手は若輩とはいえディグルドを討ち果たしたのですよ。ここは少し冷静になるべきかと」
「いや、しかし!冥府ノ神子もそうですが我ら討伐の為都より一個騎士団が向かっております。今はそちらの排除に注力すべきかと」
 教会は権力者の巣窟である。故に様々な思惑が交錯し、話し合いが拗れていく。それを統括する教主たる人物は今席を外している為尚更だった。
「フューゲル卿。都の一個騎士団なぞに割くリソースは限られておりますぞ!」
「何も戦う訳では無いのです。使い魔を放ち、様子を見ましょう。出来れば神子と騎士団が戦って潰しあってもらえば僥倖!」
「そんな上手くいく話があるはずがない。」
「そんなものをどうとでもなるではないか。」
 喧喧囂囂。いつの時代も権力者達の争いは醜い。事教会においてはその傾向が顕著であった。 
「皆様…教主様から新たなお言葉を頂きました。」
「おぉ!教主様はなんと!」
「教主様は冥府ノ神子討伐より先に騎士団を討伐せよとの事です。」
「ハッハッハ。やはりそうであったか。では騎士団の情報を集めようではないか」
 何故初めからそうしないのだこの馬鹿どもは…。
 智の女神から授かりし恩寵で数手先の未来が見える吾からしてみれば…このような場で頭を突合せ、協議するなど愚の骨頂。今後の動きの分からぬ冥府ノ神子なんぞより動きのわかる騎士団を見張り、そちらに力を割く方が効率的であろうに……。
 人理教会教主ユミル・ペンドルトンは今日も嘆息した。
「うわぁ……。殺したねぇ。」 
 足元に転がるのは魔岩の数々。辺り一面に広がる血の跡を……。
「凄い……。」
 濃密な血の臭いに顔を顰めながら手分けして魔岩を拾う。モンスターではない消えない遺体は昨日のうちに埋めておいた。
「良質な魔岩がこんなに…。」
「疲れたなら言えよ?タダでさえあの距離を歩いたんだ。かなり消耗してるだろ?」
 魔岩を拾うルーの様子を見て、声をかけたが、ルーは頬を膨らませて不機嫌そうな顔を浮かべた。
「カイトは心配し過ぎ。鬼人種の回復力と魔力を舐めないで。」
「む、何も言い返せないな。すまない」
「全く。」
「仲がいいねぇ。全く。」
 一通り魔岩を拾い終えるとひとつをヘカテが手に取り、金属の棒を持った。
「よし、これにしよう。」
「お?何する気だ?」
「あぁ、見せたことは無かったね。今からやるのは魔道具製作だよ」
「なっ」
「?」
「ヘカテ様!?」
「こんなものは…ちょいちょいちょいっとな」
 眩い光とともに魔岩に文字が刻まれ、陣が出来、形を変えていく。その様子はとても綺麗であった。
「ほい完成。これ、ルーちゃん着けてみて。」
「こ…これは…。」
「魔力バッテリーよ。これさえあれば貴女が消耗する分くらい賄ってあげられる。」
「どうして…私に?」
「今回の件でわかったの。うちの神子は狙われやすいって事が。だから護衛をあなたに託そうかと思って。」
「私に?カイトの護衛を?」
「どういう風の吹き回しだ?ヘカテ。」
「その方がなんか面白いことになりそうだからね〜。」
「身勝手な…。いや、それは元からか…。」
 「まぁそうだね。次代の神擁立のために候補者同士で争わせてるわけだし」
「あぁ。」
 そう、初めから殺しあわせてるのは神々たちで、その代理人として眷属代表の神子がいる。その神子は次代の神の器なのだから眷属達は死に物狂いで守りに入るわけだ。
「既に1000年位膠着してるからね。ここらで一発ぶちかましたいのさ。」 
「……。はぁ…。」
「次は西にある街でも目指すよ。邪教の拠点もあるみたいだし。」
「あぁ、分かった。」
「旅と道中君はルーちゃんに色々教えてあげな。君も教わる事があるだろうし」
「分かった。」
血にまみれたその手でも
握る者がいるならば
その手を拒みはしない
そう…決めたのだから
「そうか。ディグルドが殺られたか。分かった。下がって良いぞ。」
  暗闇に閉ざされた教会で深く誰かがため息をつく。
「予想以上ですな。『冥府ノ神子』とやらは。異端児を見張らせていた使い魔も最後の連絡の後消息不明ですし」
「直ちに新たな使い魔を放ちなさい。」
「しかし…相手は若輩とはいえディグルドを討ち果たしたのですよ。ここは少し冷静になるべきかと」
「いや、しかし!冥府ノ神子もそうですが我ら討伐の為都より一個騎士団が向かっております。今はそちらの排除に注力すべきかと」
 教会は権力者の巣窟である。故に様々な思惑が交錯し、話し合いが拗れていく。それを統括する教主たる人物は今席を外している為尚更だった。
「フューゲル卿。都の一個騎士団なぞに割くリソースは限られておりますぞ!」
「何も戦う訳では無いのです。使い魔を放ち、様子を見ましょう。出来れば神子と騎士団が戦って潰しあってもらえば僥倖!」
「そんな上手くいく話があるはずがない。」
「そんなものをどうとでもなるではないか。」
 喧喧囂囂。いつの時代も権力者達の争いは醜い。事教会においてはその傾向が顕著であった。 
「皆様…教主様から新たなお言葉を頂きました。」
「おぉ!教主様はなんと!」
「教主様は冥府ノ神子討伐より先に騎士団を討伐せよとの事です。」
「ハッハッハ。やはりそうであったか。では騎士団の情報を集めようではないか」
 何故初めからそうしないのだこの馬鹿どもは…。
 智の女神から授かりし恩寵で数手先の未来が見える吾からしてみれば…このような場で頭を突合せ、協議するなど愚の骨頂。今後の動きの分からぬ冥府ノ神子なんぞより動きのわかる騎士団を見張り、そちらに力を割く方が効率的であろうに……。
 人理教会教主ユミル・ペンドルトンは今日も嘆息した。
「うわぁ……。殺したねぇ。」 
 足元に転がるのは魔岩の数々。辺り一面に広がる血の跡を……。
「凄い……。」
 濃密な血の臭いに顔を顰めながら手分けして魔岩を拾う。モンスターではない消えない遺体は昨日のうちに埋めておいた。
「良質な魔岩がこんなに…。」
「疲れたなら言えよ?タダでさえあの距離を歩いたんだ。かなり消耗してるだろ?」
 魔岩を拾うルーの様子を見て、声をかけたが、ルーは頬を膨らませて不機嫌そうな顔を浮かべた。
「カイトは心配し過ぎ。鬼人種の回復力と魔力を舐めないで。」
「む、何も言い返せないな。すまない」
「全く。」
「仲がいいねぇ。全く。」
 一通り魔岩を拾い終えるとひとつをヘカテが手に取り、金属の棒を持った。
「よし、これにしよう。」
「お?何する気だ?」
「あぁ、見せたことは無かったね。今からやるのは魔道具製作だよ」
「なっ」
「?」
「ヘカテ様!?」
「こんなものは…ちょいちょいちょいっとな」
 眩い光とともに魔岩に文字が刻まれ、陣が出来、形を変えていく。その様子はとても綺麗であった。
「ほい完成。これ、ルーちゃん着けてみて。」
「こ…これは…。」
「魔力バッテリーよ。これさえあれば貴女が消耗する分くらい賄ってあげられる。」
「どうして…私に?」
「今回の件でわかったの。うちの神子は狙われやすいって事が。だから護衛をあなたに託そうかと思って。」
「私に?カイトの護衛を?」
「どういう風の吹き回しだ?ヘカテ。」
「その方がなんか面白いことになりそうだからね〜。」
「身勝手な…。いや、それは元からか…。」
 「まぁそうだね。次代の神擁立のために候補者同士で争わせてるわけだし」
「あぁ。」
 そう、初めから殺しあわせてるのは神々たちで、その代理人として眷属代表の神子がいる。その神子は次代の神の器なのだから眷属達は死に物狂いで守りに入るわけだ。
「既に1000年位膠着してるからね。ここらで一発ぶちかましたいのさ。」 
「……。はぁ…。」
「次は西にある街でも目指すよ。邪教の拠点もあるみたいだし。」
「あぁ、分かった。」
「旅と道中君はルーちゃんに色々教えてあげな。君も教わる事があるだろうし」
「分かった。」
血にまみれたその手でも
握る者がいるならば
その手を拒みはしない
そう…決めたのだから
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