彼女は、オレの人肉を食べて強くなる。

執筆用bot E-021番 

エルフの森

「エルフたちがいるところまで、あとどれぐらい歩けばいいんだ?」
 さすがに疲れてきた。


「もう、エルフの里に入っておるぞ」
「え、ここが?」


 エルフの姿もなければ、家のようなものも見当たらない。


「どこを見ておる。上じゃ」


 クレハが後ろからオレの顔を両手で持ち上げてきた。ムリヤリ上を向かされるカッコウになった。


 木の枝をうまく利用して、木の上にログハウスが建てられているのが、わかった。木造の吊り橋などが、木と木の間にかかっているのも見えた。


「木の上に、家をつくってるのか」
 なんだか暗いと思っていたが、建物が太陽の光をさえぎっているのだ。


「エルフはルーンという奇妙な魔法を使えてな。どこでそんな魔法を学んだのか、どういう効果を発揮するのか、何一つわからぬ正体不明の魔法じゃ。この建築は、そういった魔法の効果もあるのやもしれぬなぁ」


「ルーンって、あれだろゲルマン民族が使っていた、言葉のまじないみたいな」
「ゲルマン民族?」
「ああ、いや、なんでもない」


 地球の歴史とは違うのだ。ゲルマン民族なんているはずがない。オレの知っているルーンとも、また違ったものなのだろう。


「人間たちが、エルフにおいそれと手出しできないのは、エルフたちのそのチカラのせいじゃな。もしもエルフが無抵抗な種族なら、ヒト族はきっとエルフを皆殺しにしておるぞ」


 人間はそんな野蛮な種族ではないーーとは言えなかった。たしかに、そうかもしれないと納得してしまったのだった。


「よし、もうよいぞ」
 クレハはそう言うと、オレの背中からおりた。


 クレハはすーっと息を吸い込んだ。何をするのかと思って見ていると、「ガオオォォッ」と吠えたのだった。


 人の声ではなかった。獣の唸り声だった。それも、とびっきり獰猛な動物の声に思われた。そのあまりの迫力に、オレはシリモチをついてしまった。クレハは面白そうにオレを見た。


「なんじゃオヌシ。腰をヌかしたか」
「いや、ちょっと転んだだけだよ」


 照れ隠しにそう言って、立ち上がった。だが、クレハの本性を見た気がした。クレハは人間ではなく、オークなのだ。


 で、なんで吠えたんだ――と尋ねた。


「我らの訪問を、エルフどもに伝えるためじゃ。もっともこっちから呼ばずとも、向こうは気づいておるであろうが」


 クレハはジッと上を見つめていた。オレも同じように、空を隠すように密生している葉に目をやっていた。


 すると――。



 人影がいくつか降ってきた。木の枝から枝を飛び移るようにしていた。そしてオレたちの前に降り立った。みんな金髪の髪をしていた。耳がツンと尖っている。女性が1人。男性が4人。真ん中にいた女性が1歩前に出てきた。


「我がこのクラウクの森の長である、エルフ翁だ。そちらはオークだな。お初にお目にかかる」
 と、名乗り出た。
 キレイな人だった。


 目つきは鋭く、ややキツイ印象を覚えた。


 金髪を腰まで垂らしており、動物の皮でつくったような服を着ている。下着には布のようなものを巻きつけているようだった。乳房の肉がややはみ出しており、そこに目が持って行かれた。


 エルフ翁というから男かと思っていたのだが、どうやら女性のようだ。


 クレハが応じる。

「ふむ。ここの森に入るのははじめてじゃったからな。チョイと挨拶に来た。しばらく、邪魔するが気にするでない」


「わかった。我らエルフは、森を荒らさぬ者には寛大だ。しかし、人間どもから、お前たちを引き渡せと要求された場合は、引き渡す。それで良いか?」


「ふむ。構わぬ」


 エルフ翁は、オークたちを品定めするようにして見た。新緑色の目玉が、泳ぐように動き回った。オレのもとでピタリと止まるのを感じた。オレはずっとエルフ翁のはみだした胸の肉に魅入られていた。それがバレたのではないかと思って、あわてて目を伏せた。


「変わったヤツがいるな」


 エルフ翁はオレのもとに歩み寄ってきた。そして、なんの躊躇もなくオレのアゴを持ち上げてきた。女性にしては身長が高い。オレは見上げなければならなかった。


「あ、あの……」
「オークではないな。このあたりの人間でもない。名は?」


「食満ユキトと言います」
「名前も変わっているな」


 こんなキレイな大人の女性と、鼻が当たりそうになるまで距離を詰められたのは、はじめてだった。――オークを除けばだが――。エルフ翁の吐息からは、花の香りがした。


「すまぬが、それは我らのエサじゃ。手を出さんでもらいたい」
 と、クレハがオレの首から伸びている鎖を引っ張った。


 クレハの小さな腕の中に抱きかかえられた。オレよりも小さな少女に抱きかかえられる――という構図が恥ずかしくて、クレハの腕を振りほどこうとした。しかし、クレハの腕はおそろしい怪力が宿っており、オレのチカラなどでは到底抜け出せなかった。


「そう言えば先日は、5満月だったな」
 エルフ翁はオレを見つめたまま、そう言った。


 5満月とは、オレが呼び出された日のことだとわかった。あの夜は、月が5つでていた。その日はオークの妖術が高まるのだとクレハから教えてもらったことがあった。


「まぁ、そういうわけじゃ。ユキトは数十年ぶりの我らの、大切なゴチソウじゃからな。誰にも譲るつもりはない」


「少し話をするぐらいなら、構わないだろう」


 エルフ翁はどうやら、オレと話がしたいようだった。異世界人だから珍しいのかもしれない。


 ここでエルフ翁に助けを求めようか迷った。けれど、エルフ翁はただ、話がしたいだけらしかった。オークからオレを救出してやろうという気概は見られなかった。そんな義理もない。


「悪いが、こやつはいつか逃げ出してやろうと企んでいるようじゃからな。一時でも、手放すつもりはない」


「それは残念だ」
 エルフ翁はさして残念でもなさそうに、言った。

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