俺が知らない俺の恋人~中二にタイムリープした俺は、当時好きだった人に告白するつもりが何故か身に覚えのない美少女に好かれてしまったのですが~

十六

一話 タイムリープ

 失恋した。
 その日、十年間におよぶ俺の初恋は終わりを告げたのである。




「じゃあな和樹。久々に話せて楽しかったわ」


 中学からの友人である彰は、俺に手を振ってから車に乗り込んだ。


「おう。俺も楽しかった。また会おうぜ」


 俺も彰に合わせて手を上げる。

 車を見送ってから、俺も帰宅するために駅へ向かうことにした。


 ファミレスから駅まで徒歩十分。

 その間に俺が十年間引きずった初恋は終わった。


 目の前を柚月葵が通り過ぎたのである。

 彼女は結婚相手と子供を連れて、幸せそうな顔をして歩いている。


 頭では理解している。

 俺はとっくに社会人。中学時代に同級生だった彼女に結婚相手が居たとしても不思議ではない。

 我ながら馬鹿みたいだ。

 それでも心の奥底でずっと期待していた。

 中学卒業して以降今まで一度も会ったことがなかった彼女と、どこかで偶然出会い結ばれる、そんな夢物語を。


 大嫌いだ。


 彼女を射止めた男も、彼女の幸せを祝えない俺自身も。


 帰宅した。

 家のベッドで枕を濡らす。

 さっきからずっと頭の中で葵の幸せそうな顔がループしている。


「辛いなぁ」


 葵のことが辛すぎて、もう彰と何話していたかすら、あんまり覚えていない。

 確か最近流行の新興宗教に加入したとか言ってたっけ……。


「いっそ俺も神様とか信じた柚木月葵初恋の人ら忘れられるのかなー」


 勧誘を断ったのは失敗だったかもしれない。


 いつだって後から後悔する。

 中学時代だってもっと彼女にアタックしておけば良かった。

 あと一歩勇気を出して告白すれば良かった。


 過去を思い出せば出すほど辛く、苦しくなっていく。


 すると今まで経験したことないぐらい大量の涙が溢れてきた。

 視界と意識が曖昧になる。

 数回瞬いた。


 そして、次の瞬間、俺は教室にいた。

 位置は窓際最後尾。


 俺の服装は真っ黒な学ランで、一つ前の席では女の子がセーラ服を着ている。これは中学時代の制服だ。


 正面では、中二の頃に担任だった人が何やら話している。最近、隣町で不審者がでたから気をつけて欲しいらしい。


 斜め右前の席では、まだ幼さを残した彰が退屈そうに頬杖をついている。


 左に目を向けると、窓から桜が見えて、綺麗だった。


 これはどう見ても中二の春。

 俺は夢を見ているのか……?


 頬をつねってみたが痛みはあるし、元いた部屋に戻る気配はない。


 まさか俺はタイムリープしたのか?


 ふと右隣に目を向ける。

 俺は信じられなくて、再び瞬きをした。


 そこには身に覚えのない可憐な少女がいたのだ。

 俺の記憶が正しいのなら、こんな少女は中二の頃存在しなかったはずだ。 


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