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四人の勇者と宿屋の息子(仮)

神依政樹

ブラッド戦《闘身術》と【固有能力】

勇者達一行が来て6日目。つまりは試練の洞窟が開く1日前…。


ヤマトはブラッドと、光り輝く薄い光の膜に覆われた、森にある修練場所で対峙していた。


どうしてこうなった…?


周りには守護結界を張ったサーシャとマリー…いつもより軽装な要するに勇者達と、ワクワクとした表情でこちらを見ている村人達がいた。勇者達はニースとルナス(表情はフードで隠され分からない)不安そうな顔をしている。


おそらく、早朝から酒を飲みながら、楽しそうにこっちを見ているレイダーさんと義父がアベル達を言いくるめたのだろう…よし!あとで殴る!


…ま、村人の大半そんな感じで、心配そうにしてるのは…リラ、ルナス、クラリちゃ…ん…も何やら目を輝かせていた…。
………。


「はっ!何を見ているヤマト。そんなに周りが気になるか?」
黒く、光沢を放つ手甲を身に着けたブラッドが、楽しそうに話しかけて来る。


「…そう言うあなたは楽しそうですね…」


するとブラッドは、肩を震わせながら笑う。


「フハハッ!当然だ!我がどれだけ…どれだけ…お前と戦うのを楽しみしていたと思っている!?」


いや…そんなドヤ顔されても知らないですから…。


「ハッ…!無駄話はこの辺で止めておこう。あとは拳で語るのみ…行くぞ!」


だから、どうしてこうなった…。





3日。
朝だ。隣で安心したようにルナスは、すやすやと寝ている。


…何となく頭を撫でてみる。


「ん…っ…」


悩ましい声で返される。


……はだけた白い胸元と相まって、ちょっと精神衛生上よろしくない。朝は特に…だ。


ん…?胸元の左胸辺りに、痣のようなものが…よく見ようと注視すると「んぅ…」ルナスが寝返りをしたせいで、さらに胸元が…。


サッサと起き上がり、そのまま井戸に向かって、冷水を頭にかける。




「はぁ…」


頭を冷やして、ため息と一緒にもやもやを吐き出した。


頭を振って、いつも通りに裏手の森にある修練所に来た。


とにかく身体を動かそう。





「はぁ…」


夜の営業が終わり、ランプで淡く照らされた自分の部屋に帰って来た途端に、口から自然にため息が出た。
何となく肩が重い気がする…。
伊達に鍛えてる訳じゃないので、精神的な疲れのせいだろう。
朝の修練を終えて、アベル達と入れ違いで家に戻った。「我と戦え!」とすれ違い様にどこぞの帝王様が言っていたが、苦笑して流した。


そして朝食を作り、昼の仕込みしていると、寝ていたルナスが起きて来て、じっと何やら1日中そばにいた…。


…黒尽くめ人物がそばにいるのに微妙な暑苦しさと息苦しさを覚えつつ、何となくそのまました。


カルラさんの所に、焼きたてパンを貰いに行くのにも、着いて来た。


何が原因か…リラの機嫌があまりよろしくなかったなぁ。


そして、クラリちゃんが妙にペタペタとして来て、ルナスの方を睨んでたな…。


「…寝よう…」


考えると、悩みが増えそうな気がしたので、柔軟で体の凝りを取って、眠りにつこうとベッドに入ると…コンコン…!と控えめに扉をノックする音が…。


……………「どうぞ…」


誰であるか確信しつつそう言うと、部屋に入って来たのはルナスさんだった。


「ごめん…なさい…。そのっ」
顔を伏せて、何やら言おうとしている。


「…ほら、早く寝るよ」
そう言ってベッドの片側を開けて、ポンポンと叩くと…もの凄い嬉しそうな顔をして、ベッドに入り込んで来た。


じっと、綺麗な瞳でルナスはこちらを見つめて来る。


……………僕は石にでもされるのか?


なんか義父がそういう【固有能力者】と戦ったって聞いた事あるけど…。


とりあえず…早く寝たいので、ランプの火を消してルナスの頭を撫でてみる。


「……ん…ぅ…ふ…」


嬉しそうに鼻と声を鳴らす、何度か撫でるとルナスは気持ち良さそうに目を閉じた。


…寝よ。



4日


昨日と同じように井戸で頭を冷やして、修練所に向かい。


いつも通り訓練していると、ブラッドが現れた。


「さぁ…!我と勝負だ!」


そしてそう言うと、殴りかかって来た。


勇者じゃなくて通り魔がここにいますよ?
ブラッドの明らかに威力の込めていない牽制の拳を、前に踏み込んで避わし、全力疾走で逃げ出した。


「〜〜〜〜〜!」


面倒臭いので、アベルに頼んで止めて貰おう。





「我の見込んだ強者なのだぞっ!?」


「彼が強かろうが、弱かろうが、嫌がってるのだから止めたまえ!」


今日は村の空気に慣れたのか、勇者達は食堂で昼食取っていた。


そんな中アベルとブラッドが、にらみ合っている。ニースとサーシャがおろおろと見守り、マリーさんは優雅に食事を取っている。


…ルナスだけはテーブルではなく、カウンターに座り、僕のそばに今日もいた。


…何か分からんが…リラの機嫌と、クラリちゃんのベタベタぶりが上がったので、パン屋に着いて来るのは止めて貰おう。


言い争っていると思ったら「チッ!」と舌打ちをして、ブラッドはご飯食べ始めた。
理はアベルにある。仕方なしに引き下がったのだろう。


「ふん…!何やら随分ヤマトのそばに居るではないか?フェアリス」


…フェアリス?ああ…ルナスの偽名か。半ば忘れてた。


「別に…私の勝手」


ルナスはブラッドにチラッと頭を向けると、プイッと逸らした。


ブラッドさんイライラしてるな…。


「ハッ…!そうだなぁ。お前の勝手だ。だから俺がヤマトと戦うのも、自由だよなぁ?だが、ダメだと言うんだ…。…変わりにどうだ?」


八つ当たりを見つけて嬉しいのか、ブラッドは周囲に威圧感を撒き散らす。


ルナスも雰囲気を変える。


「ヤマトに何かするなら…殺すよ?」


ルナスは剥き出しの殺気をブラッドに向ける。


それにブラッドは凶悪に嬉しそうに笑う。
他の人間が止めようと、身構える。


「サービスです。どうぞ」


と言って、この前分けてもらったチーズ使ったチーズケーキと、精神沈静化に効果のあるハーブティーを出した。


「「………」」


皆、ビックリしたような顔をこちらに向ける。


なんだ?


すると「ハハハッ…!」とブラッドが突然笑い、頭を振る。


「…すまないな。フェアリス。自分でも分からない内にイライラしてたようだ」


「別にいい…」


またプイッとして、今度は視線を目の前のケーキとハーブティーに注いでいる。


「ヤマト。ケーキとお茶はありがたく戴く。我は部屋で戻って食させて貰おう」


ブラッドは二階に登った行った。


ルナス以外は微妙な空気を感じて、無言で早く胃にお茶とケーキを流し込んで部屋に戻ってしまった。


そのあとレイダーさん等がやって来ると、時化た空気がすると顔をしかめていた。





夜になり部屋に戻ると、ちょこんと顔を半分だけ、布団から出したルナスがいた。
夜の営業では酔っ払ったオッサン達に、絡まれる可能性大なので、離れてもらっていた。


その時に、今日も来そうな予感をひしひしと感じたので、鍵を渡したのだ。


僕がベッドに入るとルナスは嬉しそうな表情を浮かべる。


とりあえず撫でてみる。


「…ん…」


気持ちよさそうに鼻と声を鳴らす。


猫や犬のようだ。


なんでここまで、懐かれたのか…。


そんな事をうとうとしながら、考えて寝た。





5日目、日課の訓練をしているとブラッドがやって来た。


少し身構えるが…手で制される。


「見るだけなら構わんだろう?」


「ええ…まぁ…」


頷き、訓練再開する。
動きの一つ一つをジッと見られると、何ともやりづらい。


問題はないが楽しいのではないな…と思った。


日課が終わり、アベル達と入れ替わり、家に戻った。


何やら食堂で義父とレイダーさんが酒を飲みながら、ポーカーをしていたので相談してみた。


「「戦ってやれよ」」


口を揃えて言われる。…言った本人達がお互いを見て嫌悪感を現わしているので、示し合わせた訳じゃないらしい。


…どれだけ仲良いんだよ。


「ま、面倒と言う気持ちも分かるがな…?試練の洞窟に一緒に入る事になるんだから、実力を見せておくのも悪くないぜ?」
レイダーさんはニッと笑う。
「そうそう。度肝抜いてやれよ!」
義父は軽く笑う。


完全に人事だった。


「ヤダよ…」


相談した俺がバカだったと…去ろうとした時に二人が何やら怪しい雑談を始めた。


「…で…すると…どうだ?」


「良いな…!」


二人が邪悪な笑みを浮かべる。


ここだっ!ここで僕は選択を誤ったんだ。
朝いつも通り行くと…多数人間がいて、レイダーさんと義父に逃がさないと脅されたのだ。


で現在に至ると…。



「と…っ!」


などとヤマトが考えていると、ブラッドが地面を蹴り、こちらに突進してくる所だった。


ヤマトはまた踏み込んで、逸らそうとするが…。


っ…!


拳が髪をかすめ、何本かがハラハラと落ちる。
数日前の牽制とは型も、伸びも、鋭さも、威力も、違う。


(あれは初撃を入れる為のブラフかよ!)


ブラッドは、それでも避けたヤマトに、ニッと笑うと、そのまま攻撃の流れを止めずに加えていく。


流麗さや華麗さとは無縁の実戦で鍛え、磨き続けた拳闘術。


それをヤマトは防ぎ、避け続ける。


「ちょこまかと、よく動く!だが、防ぐだけでは勝てんぞ!」


ブラッドはそう言って、さらに攻撃の速度を上げていく。


「確かに…なら…!」
ヤマトはブラッドの腕の付け根を抑えて、そこを起点にブラッドの足を自分の足で巻き込んで、ブラッドの体勢を崩す。


「なっ…!」


ヤマトはそのまま崩れたブラッドの体勢を利用して、ブラッドを投げ飛ばす。


「チッ!」


ブラッドはなんとか立て直そうと、動くが…そこにヤマトが追いつき、ブラッドに蹴りを入れる。


「ガッ…ァ!」


獣のような呻きと共にさらに20メートルほど、ブラッドは飛ばされる。


それを見ていた村人と勇者達から、感嘆の声が漏れる。


レイダーなどの村人達は、なかなかやるとブラッドに。


正直、ヤマトを侮っていた勇者達はヤマトの強さに驚きを隠せないでいた。


一部(ニース、ルナス)を除きだが…。


「ブラッドさん…もう充分気は練れたでしょう。
来ないなら…こっちから行きますよ…?」


ヤマトが吹き飛ばしたブラッドにそう言うと、気を練り上げたブラッドが笑みを浮かべて立ち上がる。
「ふん…。待たせたのだ…こちらから行くのが礼儀だろう!」
《闘身術》により、身体能力を人以上の域に高めたブラッドは地面を踏み、ドンッ!と地面と空気震わせて、ヤマトに向かう。


《闘身術》…気と呼ばれる力を使い、身体能力や身に着けた武具の力を高める術。
身体能力に関しては、五感、筋力、耐久力、速さ、などを気の量と本人の身体能力次第で高める事が出来る。


例えば…一般人と格闘家では気の量が一緒だとしても、強化出来る限界値が違う。


元々の身体能力が一般人は10、格闘家が30ほど有しているとする。


《繰身術》で身体能力を三倍上げたとして、一般人だと30、格闘家なら90と同じ三倍上げたとしても、当人の技量に
よってさらに差が開くのだ。
その上、気は身体能力が高いほどそれに比例して高いのだが…。


ちなみに武器に関しても、名剣とボロ剣などでは強化耐久力や強化による上昇も雲泥の差が生まれる。




(よし…そろそろ負けるか…)


全然望んだ戦いでは無いために、ヤマトはやる気が欠片もなかった。


そのため、ヤマトはブラッドが《闘身術》を使い、本気を出したようなので、そろそろ適当に負ければいいだろう…と思っていたが…。


「「ワザと負けたら、俺達2人が相手になるぞ〜!」」


それを見て取って、ウィルドとレイダーに脅しを入れられる。
「舐めるなっ!」


それを聞いたブラッドが顔つきを変える。
(アイツら覚えてろ!)
ヤマトは少しイラつき気味に、音速に近い速度で向かった来たブラッドの拳打をいとも簡単に受け止めて、その手を絡め取る。


そして、そのまま掴んだ腕に体重を入れ、地面に叩きつけた。


ゴギッ!関節が外れる音。


「っ…」


ブラッドは顔を歪めながら、無事な片手で体重を支えて、逆さに起き上がり、牽制に両脚で蹴りを入れるがヤマトは軽く避ける。


が、その避けた隙を狙いブラッドはヤマトから、距離を取った。


「まさか…これほどとは…な」


左腕の関節を外され、自由が効かないのに関わらず、なおブラッドは笑みを浮かべていた。
(はぁ…。やっぱり…奥の手隠してるよなぁ。この人)


ヤマトは内心ため息をつく。


ブラッドは強い、強いが…自分に戦う術を教えた三人、親父と義父とレイダーほどではないのだ。


単純な強さなら、こちらを見ている2人はともかく、親父は《闘身術》など使えないのだから、ブラッドの方が強いはずだが…親父に負ける可能性はあっても、ブラッドに負ける可能性は万に一つくらいしか思い浮かばなかった。


その理由は殺気、経験、強かさ、強者が発する威圧感。


それをブラッドから感じないのだ。


それらが欠如してるから、手合わせとはいえ最初は《闘身術》は使わずに遊びを入れ、奥の手を使わない。


ヤマトはブラッドが、初撃を放って来た時点で…その気になれば何時でも倒せていたのだ。


ヤマトは適当な所で、負けるつもりだったが…2人にそれを言われた以上、負けた所でブラッドは納得せずに、また勝負を仕掛けて来る可能性が大だ。


(なら…奥の手使わせたうえで、倒すしかないか…)


ヤマトは、最近ため息の回数が増えた気がすると思いながら、無造作にブラッドに近づく。


「…!?何のつもりだヤマト!」


ブラッドは警戒心を滲ませる。


「関節入れますから、ちょっと待ってください」


するっと近づきヤマトはブラッドの肩と腕掴み入れる。


ゴギッ!


「動きます?」


ヤマトはブラッドから、離れながら聞いた。


ブラッドの顔に青筋が浮かぶ。


「動くが…ナメているのか…?」


「いえ…?ナメてないですよ。ブラッドさん、これで本気を出せるでしょ。だから…そっちから来ないなら…殺るぞ」


ゾワッ!周囲の人間全ての背筋が凍る程の冷たく鋭利な殺気。


「言ってっ…くれるっ!はっ!死ぬなよ!【闘神戦威】」


ブラッドは凶暴な笑みを浮かべて【固有能力】を発動させた。


ブラッドから赤い光が溢れ、その光がブラッド薄く包み込んだ。


「ブラッドッ…!アイツ正気か…!?」


それを見ていたアベル達から、驚きの声が上がる。


「おっ…?そんなにすごいのか?」


いつの間にか、アベル達の近くに来ていたウィルドがのん気な声でアベルに聞く。


「すごいと言うレベルじゃあないですよ!アレは!…【闘神戦威】あらゆる身体能力を上げ、その上で闘気そのもので物理攻撃が出来る…。ランクAクラスの【固有能力】です」


「ふーん…説明ご苦労さん。なかなかだな。レイダー?どう思う?」


「アッ…?問題ないだろう」


「だよなぁ…」


レイダーとウィルドの2人はあくまで、のん気会話を続ける。
「俺がバカだったッ…!サーシャ!マリー!結界を今すぐ解いて…」


「無理よ…!今解いたら、被害が村人さん達にも及ぶかもしれないわ」


マリーは悲痛な声を上げ、サーシャは唇を噛み締める。


「なら…俺が直接…!」


「ダメです。アベル様ッ!盾を装備していないアベル様ではいくらなんでも…」


サーシャは怒鳴るように言う。


ルナスはフードしたで顔を青くする。


(ヤマトは強い…でも【固有能力】を使ったブラッド相手に勝てる…?)


ニースも慌てるが…そんな一行を置いて勝負は呆気なく終わった。




ヤマトは…動いた。ただそれだけ。


ドンッ!と爆音が響く頃にはブラッドの腹には拳がめり込んでいた。


「かはっ…!」


ただ腹に拳をめり込ませただけ…だが、音速を凌駕した速度と、それに合わせて気を乗せた一撃は、ブラッドを沈めるには充分過ぎる一撃だった。


と言うより…気で強化していない常人なら、肉片になっている。


耐えきれず、ブラッドは片膝を地面に付け、そのまま倒れた。


「「はっ…!?」」


呆気にとられたような勇者達の声を最後に






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