どうやら最強の少年は平穏に過ごせない。
(6)義父の帰還と妙な刀
ルナスが目覚めた翌日、僕は普段通り身体を動かした後で朝食を作っていた。
本来なら昼や夜の仕込みも済ますのだけど……ルナスの事を気づかった村の大人達は、二、三日は店を利用しないと言う話なので、今日はしない。
そうして黙々と朝食の準備をしていると……。
「よっ!お父様のお帰りだぞ~!」
そう言って軽そうな雰囲気のおっさんが不法侵入して来たので、持っていた包丁を投擲した。
「死ねっ!」
「っと!危ないだろうよ?何するんだヤマト。反抗期か!?」
易々と投げた包丁を指で受け止めたおっさんは、顔をしかめる。
「…や?殺すつもりだったんだけど…」
「バイオレンス!バイオレンスに過ぎるぞ!息子!そして目が冷たい!」
何やら抗議の声を上げる男…ウィルド・ムラクモ。
髪を本人は丁髷と言い張るが微妙な感じに纏め、整った顔に似合わない無精髭を生やした、この世界で初めて出会って人間であり、一応は僕の義理の父親である。アリオンの土産を持って来たのか大量の荷物を持っている。
ちなみに、本気で殺そうとはもちろんしていない。
それに投擲武器で仕留められるような甘い存在でもないし。
「はいはい。それはそうと今回は早い帰りだね」
この男は思い立ったら、ぶらりとどこか……主にアリオンなどでひと月ほど放浪して来るのだが、今回は二週間足らずで帰って来た。
「な、なんだ…!?まるで帰って来たらダメだったようなその反応は!?…せっかく!せっかく!人がアリオンから色々な食材とかお土産に持って来たと言うのに!」
何やら普段の三割増しのテンションで、女座りをして手拭いを噛んでいる父親に冷たい目を向ける。
「……あんまりウザいと、ウィルドの分の飯作らないよ」
「すいませんでした!」
親父は即座に見事な土下座をした。
「と…そうだ。ヤマト」
立ち上がりながら、父親は何やら腰に着けていた縦長の布袋を僕に投げて寄越した。
「えっ…?なに」
僕は反射的受け取った。布袋の重さから刀だろうか?
「師匠がお前にやれとさ。あの人が鍛えた刀剣をやるのは、俺とお前を入れても3人だけらしいぞ」
親父のお師匠様か。確か異邦人で【剣神】とか呼ばれて、現人神扱いなんだっけ?会った事もないのに刀渡されてもな……。
とりあえず受け取った布袋を開けてみると、美しい紋様が描かれた黒鞘に収められた刀が入ったいた。
刃渡りは70センチほどで、鍔から下の握る部分も合わせたら、全長で85センチくらいになるだろう。
「よっと…」
『見つケた……』
鞘から抜く瞬間、妙な空耳と一緒にシャラン!涼やかで凛とした不思議な音色を響かせながら鞘から抜けた。
刀身は美しい緋色。光の角度で様々に色合いを見せるので、美術品としての価値も高そうである。
何でか分からないけど、長年使ったかのように不思議と良く手に馴染む。
「おお……凄いなヤマト。良くその刀を抜いて触れるな」
「はい…?いや、どういう事?」
何でもウィルドの話によると【緋火金剛鋼】をアリオン一の標高を誇る霊山のマグマで鍛えたら、霊山の力の成せる業か、意志を持ったらしく、柄に触ると高熱を発して誰にも触れないので、とりあえず特殊な鞘に納めて封印していたらしい…。
何だそれ…。剣神様よぅ?何、危ない品を人に押し付けてやがる。厄介払いか?
「師匠にヤマトなら抜大丈夫かも知れないから持ってけって、言われたから持って来たが凄いな?ヤマト」
うわーぃ。本当に厄介払いぽいやぁ。……剣神に会う機会があればぶん殴ってやる。
「良い刀だけど……そんな危険な品を置いて置けないし、流石にずっと身に着けておくのも」
邪魔だから剣神に返してくれ、そう言うとした所で……
『やダ!あなたガいいの』
幼さを感じる妙な声が空耳が頭に響き、急に刀から炎が吹き出すと炎は柄まで覆い、僕の右手を焼いた。
「っ……!」
床に落として火事になっては大変なので、痛みに耐えていると、炎が何かを刻み付けるように手の甲を焼いた。
『やっぱり、あなたノ中はいごこちがイいね。わたしをつかう時はよんで?ご主人様……』
また空耳が頭に響き、刀が纏う炎がより一層燃え上がると、炎と一緒に刀が消失した。
いや……違う。消失じゃなく、僕の中に入ったんだ
「はははっ!さすがは師匠の鍛えた刀!凄いな」
笑い事じゃない!キッとウィルドを睨みつける。
「うっ……!そ、そんな睨むなよ?ヤマト……」
「はぁ……」
ウダウダしても始まらない。僕はため息を吐いて、もう仕方ないと諦めた。
……剣神は半殺しにするし、刀は絶対に呼ばないけどな!
「あの……?ヤマト。今日の飯は?」
「はぁ……今日は和食だよ」
ご飯、味噌汁、漬け物、ひじき煮、焼き魚のザ・日本の朝食だ。自家製の納豆もあるけど、アリソンは食べないし、ルナスが食べれるかも分からないからそこは好みだ。
「そいつはいいな!」
目を輝かせるウィルドに僕は告げる。
「ウィルドの分があるとでも?」
「や、ヤマト様!そんな殺生な!?」
「ハイハイ……ウィルドの分も作るから、さっさと包丁返してよ」
「おぅ!」
ウィルドは包丁を僕に渡すと、大量の荷物を倉庫の方に軽々と持って行くと、カウンターに座って呑気に鼻歌を歌い出した。
そして生暖かい視線を僕に向ける。
「……お前が女の子だったらなぁ……。お父様と呼ばせれば完璧なのに」
あんまりにもしみじみと呟くその言葉がキモかったので、包丁をまた投擲した。割と本気で。
朝食が出来る頃になると、今日も今日とてアリソンが元気にやって来た。
「おはようヤマト…ってウィルドおじさん帰ってたんだ」
満面の笑みで挨拶したあと「やっほー」と親父に挨拶する。
「おぉ…!アリソンはますます美人になっていくなぁ」
親父が腕を組んで、うんうんと頷いている。いや、二週間くらい前に会ったと思うんだけど…。
アリソンもアリソンで褒められて悪い気はしないのか、ご機嫌に「もうー。おじさんたら!」などと言っている。
「でも…はぁ。後は胸さえ…な」
親父はチラッとアリソンの胸を見て、残念そうなため息を吐く。
プチッ!
と僕には何が弾ける音が……聞こえた。
「ねぇ…?ウィルドおじさんってば……何か言った?良く、聞こえなかったんだけど…」
アリソンはあくまでも笑顔だが…そこに込められている感情は表情とは明らかに違う。
殺意である。
親父はそんなアリソンを見て、楽しそうに笑いながら言う。
「いやな?カルラみたいにもうちょっと胸があれば完璧な…ッと!」
話てる途中で、アリソンは無言でテーブルとセットになっているイスを親父に投げつけた。
それをあっさりと親父は受け止める。
「な・に・か・言っ・た!」
親父はさらに楽しそうな笑みを浮かべる。
アリソンも反応しなければいいものを……。
レイダーさんとウィルドは、アリソンをからかうのが楽しいのか。たまに胸の事を弄るのだ。
などと呑気に僕が考えていると…。
「…アリソンちゃん。悪いな…。そこまで気にしていたとは分からなかったぜ。だけどさ?そんなに気にするな!ヤマトは貧乳好きだ!」
…急に真面目な顔をしたと思ったら、こっちにまで火の粉を飛ばして来やがったな!この野郎!?
アリソンを見ると顔を俯かせ、体をわなわなと震わせている。
「…ぃ…た…は…」
小声な為聞き取れないが、明らかに怒りが沸騰を超えたのは分かった。
その様子を見てウィルドは「あ~…」
などと呟き、頬をかきながら何気なく腰を少し浮かした。
……逃げる気満々だな。
「言いたい事はそれだけかっ!!!」
アリソンは顔を上げると、叫びながらウィルドに殴りかかるが……そこはウィルドの方が一枚上手。
妙に不敵な笑み浮かべ逃げようとする。
「って…おまっ!ヤマト…!?」
が、僕はウィルドの肩に手を置くと、力をかけて立ち上がれなくする。
僕はウィルドにニコッと笑う。
「自業自得」
「ちょ…!コフッ…!」
ウィルドの腹に女の子が繰り出したとは、思えないほど鋭いボディーブローが決まったのだった。
……ちなみに僕はこの後、アリソンに貧乳好きかどうか執拗に問い詰められたがどうでもいい話だろう。
僕の趣味嗜好も。
本来なら昼や夜の仕込みも済ますのだけど……ルナスの事を気づかった村の大人達は、二、三日は店を利用しないと言う話なので、今日はしない。
そうして黙々と朝食の準備をしていると……。
「よっ!お父様のお帰りだぞ~!」
そう言って軽そうな雰囲気のおっさんが不法侵入して来たので、持っていた包丁を投擲した。
「死ねっ!」
「っと!危ないだろうよ?何するんだヤマト。反抗期か!?」
易々と投げた包丁を指で受け止めたおっさんは、顔をしかめる。
「…や?殺すつもりだったんだけど…」
「バイオレンス!バイオレンスに過ぎるぞ!息子!そして目が冷たい!」
何やら抗議の声を上げる男…ウィルド・ムラクモ。
髪を本人は丁髷と言い張るが微妙な感じに纏め、整った顔に似合わない無精髭を生やした、この世界で初めて出会って人間であり、一応は僕の義理の父親である。アリオンの土産を持って来たのか大量の荷物を持っている。
ちなみに、本気で殺そうとはもちろんしていない。
それに投擲武器で仕留められるような甘い存在でもないし。
「はいはい。それはそうと今回は早い帰りだね」
この男は思い立ったら、ぶらりとどこか……主にアリオンなどでひと月ほど放浪して来るのだが、今回は二週間足らずで帰って来た。
「な、なんだ…!?まるで帰って来たらダメだったようなその反応は!?…せっかく!せっかく!人がアリオンから色々な食材とかお土産に持って来たと言うのに!」
何やら普段の三割増しのテンションで、女座りをして手拭いを噛んでいる父親に冷たい目を向ける。
「……あんまりウザいと、ウィルドの分の飯作らないよ」
「すいませんでした!」
親父は即座に見事な土下座をした。
「と…そうだ。ヤマト」
立ち上がりながら、父親は何やら腰に着けていた縦長の布袋を僕に投げて寄越した。
「えっ…?なに」
僕は反射的受け取った。布袋の重さから刀だろうか?
「師匠がお前にやれとさ。あの人が鍛えた刀剣をやるのは、俺とお前を入れても3人だけらしいぞ」
親父のお師匠様か。確か異邦人で【剣神】とか呼ばれて、現人神扱いなんだっけ?会った事もないのに刀渡されてもな……。
とりあえず受け取った布袋を開けてみると、美しい紋様が描かれた黒鞘に収められた刀が入ったいた。
刃渡りは70センチほどで、鍔から下の握る部分も合わせたら、全長で85センチくらいになるだろう。
「よっと…」
『見つケた……』
鞘から抜く瞬間、妙な空耳と一緒にシャラン!涼やかで凛とした不思議な音色を響かせながら鞘から抜けた。
刀身は美しい緋色。光の角度で様々に色合いを見せるので、美術品としての価値も高そうである。
何でか分からないけど、長年使ったかのように不思議と良く手に馴染む。
「おお……凄いなヤマト。良くその刀を抜いて触れるな」
「はい…?いや、どういう事?」
何でもウィルドの話によると【緋火金剛鋼】をアリオン一の標高を誇る霊山のマグマで鍛えたら、霊山の力の成せる業か、意志を持ったらしく、柄に触ると高熱を発して誰にも触れないので、とりあえず特殊な鞘に納めて封印していたらしい…。
何だそれ…。剣神様よぅ?何、危ない品を人に押し付けてやがる。厄介払いか?
「師匠にヤマトなら抜大丈夫かも知れないから持ってけって、言われたから持って来たが凄いな?ヤマト」
うわーぃ。本当に厄介払いぽいやぁ。……剣神に会う機会があればぶん殴ってやる。
「良い刀だけど……そんな危険な品を置いて置けないし、流石にずっと身に着けておくのも」
邪魔だから剣神に返してくれ、そう言うとした所で……
『やダ!あなたガいいの』
幼さを感じる妙な声が空耳が頭に響き、急に刀から炎が吹き出すと炎は柄まで覆い、僕の右手を焼いた。
「っ……!」
床に落として火事になっては大変なので、痛みに耐えていると、炎が何かを刻み付けるように手の甲を焼いた。
『やっぱり、あなたノ中はいごこちがイいね。わたしをつかう時はよんで?ご主人様……』
また空耳が頭に響き、刀が纏う炎がより一層燃え上がると、炎と一緒に刀が消失した。
いや……違う。消失じゃなく、僕の中に入ったんだ
「はははっ!さすがは師匠の鍛えた刀!凄いな」
笑い事じゃない!キッとウィルドを睨みつける。
「うっ……!そ、そんな睨むなよ?ヤマト……」
「はぁ……」
ウダウダしても始まらない。僕はため息を吐いて、もう仕方ないと諦めた。
……剣神は半殺しにするし、刀は絶対に呼ばないけどな!
「あの……?ヤマト。今日の飯は?」
「はぁ……今日は和食だよ」
ご飯、味噌汁、漬け物、ひじき煮、焼き魚のザ・日本の朝食だ。自家製の納豆もあるけど、アリソンは食べないし、ルナスが食べれるかも分からないからそこは好みだ。
「そいつはいいな!」
目を輝かせるウィルドに僕は告げる。
「ウィルドの分があるとでも?」
「や、ヤマト様!そんな殺生な!?」
「ハイハイ……ウィルドの分も作るから、さっさと包丁返してよ」
「おぅ!」
ウィルドは包丁を僕に渡すと、大量の荷物を倉庫の方に軽々と持って行くと、カウンターに座って呑気に鼻歌を歌い出した。
そして生暖かい視線を僕に向ける。
「……お前が女の子だったらなぁ……。お父様と呼ばせれば完璧なのに」
あんまりにもしみじみと呟くその言葉がキモかったので、包丁をまた投擲した。割と本気で。
朝食が出来る頃になると、今日も今日とてアリソンが元気にやって来た。
「おはようヤマト…ってウィルドおじさん帰ってたんだ」
満面の笑みで挨拶したあと「やっほー」と親父に挨拶する。
「おぉ…!アリソンはますます美人になっていくなぁ」
親父が腕を組んで、うんうんと頷いている。いや、二週間くらい前に会ったと思うんだけど…。
アリソンもアリソンで褒められて悪い気はしないのか、ご機嫌に「もうー。おじさんたら!」などと言っている。
「でも…はぁ。後は胸さえ…な」
親父はチラッとアリソンの胸を見て、残念そうなため息を吐く。
プチッ!
と僕には何が弾ける音が……聞こえた。
「ねぇ…?ウィルドおじさんってば……何か言った?良く、聞こえなかったんだけど…」
アリソンはあくまでも笑顔だが…そこに込められている感情は表情とは明らかに違う。
殺意である。
親父はそんなアリソンを見て、楽しそうに笑いながら言う。
「いやな?カルラみたいにもうちょっと胸があれば完璧な…ッと!」
話てる途中で、アリソンは無言でテーブルとセットになっているイスを親父に投げつけた。
それをあっさりと親父は受け止める。
「な・に・か・言っ・た!」
親父はさらに楽しそうな笑みを浮かべる。
アリソンも反応しなければいいものを……。
レイダーさんとウィルドは、アリソンをからかうのが楽しいのか。たまに胸の事を弄るのだ。
などと呑気に僕が考えていると…。
「…アリソンちゃん。悪いな…。そこまで気にしていたとは分からなかったぜ。だけどさ?そんなに気にするな!ヤマトは貧乳好きだ!」
…急に真面目な顔をしたと思ったら、こっちにまで火の粉を飛ばして来やがったな!この野郎!?
アリソンを見ると顔を俯かせ、体をわなわなと震わせている。
「…ぃ…た…は…」
小声な為聞き取れないが、明らかに怒りが沸騰を超えたのは分かった。
その様子を見てウィルドは「あ~…」
などと呟き、頬をかきながら何気なく腰を少し浮かした。
……逃げる気満々だな。
「言いたい事はそれだけかっ!!!」
アリソンは顔を上げると、叫びながらウィルドに殴りかかるが……そこはウィルドの方が一枚上手。
妙に不敵な笑み浮かべ逃げようとする。
「って…おまっ!ヤマト…!?」
が、僕はウィルドの肩に手を置くと、力をかけて立ち上がれなくする。
僕はウィルドにニコッと笑う。
「自業自得」
「ちょ…!コフッ…!」
ウィルドの腹に女の子が繰り出したとは、思えないほど鋭いボディーブローが決まったのだった。
……ちなみに僕はこの後、アリソンに貧乳好きかどうか執拗に問い詰められたがどうでもいい話だろう。
僕の趣味嗜好も。
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