どうやら最強の少年は平穏に過ごせない。

神依政樹

(3)暴獣の決意と少女の目覚め

マーズとのやり取りを終えたレイダーがすぐに向かったのは、村にある一軒の家だった。


「よっ!」


「はぁ……。こんな夜更けに人様の家に不法侵入しておいてなんですか?その軽いノリは……」


二階の窓から、さも自然に現れた偉丈夫……レイダーに対してため息を吐くと、エドは自分を落ち着かせるように目頭を抑えた。


エド・エドワード。


栗色の毛髪に怜悧な茶色の瞳が持ち。整った顔をしているのだが、どこか神経質で苦労人のような印象受ける人物である。この村に住む大人全てに言える事なのだが、実年齢に比べてだいぶ若々しい。




村人達の中でもレイダーとは一番長い付き合いであるエドは、相変わらずの非常識な行動に色々言おうと思ったが……長年の付き合いで言っても無駄だと分かっているので、諦めてベッドの横に置いてあった銀縁眼鏡を取り、いつものようにかけた。


「それで、こんな朝早くから何の用ですか?」


「ああ……ま、何だ。人教のマーズに俺達の居場所がバレた」


「そうですか……」


どこか気まずそうに、頬を掻きながら言うレイダーにエドは淡々と頷いた。


「ん…驚かないのか?」


「驚きませんよ。そもそも私達の死体は発見されていませんからね。あの男の事です、我々が生きているのは確信していたでしょう。皇帝や私の弟がある程度、情報操作してくれましたし、人の寄り付かないこの場所を選び、特殊な結界を施しましたが……正直2、3年が限界だと思ってましたからね」


(……逆に言えばあの男がこれだけ長い間発見……いや、我々を放置していたにも関わらず、なぜ今になって接触して来たのか疑問ですが……)


「む、…そうか」


どこまでも淡々としながら、内心でいくつかの可能性を考え、当たり前のように言うエドにレイダーは頷く。


そこで会話は途切れ、僅かな沈黙が場を覆い、エドがため息と共に沈黙を破った。


「それで……本当の用件は何なのですか?レイダーさんがそれだけを言いに、私の所に来た訳ではないでしょう。人教にこの村の存在がバレた理由が関係しているのですか?」


「ああ。実はな……」






「……彼女の娘とその追っ手ですか」


事情を聞き終えたエドは静かに目を閉じた。


「……思い返せばあれから20年ですね」


レイダーも昔を思い返すように、目を閉じたから頷いた。


「ああ。俺達が事件の黒幕に仕立てられ、逃げる事になってから20年だ」


2人の脳裏に蘇ったもの。それは血と鉄と獣の臭いが立ち込める戦場だった。


この大陸の西にあるウィクトル王国には、危険で凶悪な力を持つ魔物が生息する魔の森が隣接している。


その為、ウィクトル王国には大陸中に武勇を轟かす精強で勇猛な騎士達と、魔の森に入る事の出来る実力を持つ優秀な冒険者達が存在しているのだが……ある時、事件は起きた。


基本的に魔の森に生息する魔物は、己の縄張りから出ない……はずなのだが、異常な事にその日は魔の森から魔物が溢れ、視界全てを覆い尽くし、大陸全てを飲み込みかねない程の魔物の群れが現れた。


これが単なる魔物ならば大した問題にはならない。問題は本当に危険で強い魔物しかいない魔の森から、万を超える魔物が溢れ出した事だ。


この事態はウィクトル王国……いや、大陸全ての住む人類の存亡が掛かっている異常事態だと、時の王はすぐさま判断し、体面も何もかも殴り捨てて決断すると、大陸全てに援軍を要請。


魔物達の進行を防ぐ為、ウィクトル王国には大陸中から最高の戦力が集った。


北の帝国からは【暴獣】と呼ばれ畏れられるレイダー・アルバトスと副官であるエド、その直属の部下で半数が亜人で構成された百戦錬磨の強兵達。


東からはカルドニア公国と同盟を結ぶ東国アリオンから、異邦人と呼ばれる異世界人【剣神】の一番弟子である【剣聖】ウィルド・ムラクモを指揮官にカルドニア公国の騎士団と、東国アリオンにしか存在しない鬼族などが半数を占める武士団。


南の魔導国マギアソールからは【絶炎姫】と呼ばれ、火力だけならば間違いなく大陸最高と呼ばれるカルラ・マギアソールと、一流の力を持つ魔術師達。


そして、ウィクトル王国からは【絶対守護】と讃えられる序列第二位のリアン・ワーズボアを筆頭に円卓の騎士達と、大陸一精強な騎士達。


そして最後に、大陸全てからかき集められた超一流の冒険者達と傭兵達。


結果だけ言うならば、彼ら全員の命懸けの行動と働きで、大陸の危機は回避された。


その過程・・原因・・は闇に葬られ、人類を救った英雄と讃えられる者達の中でも中心的人物であるレイダー達が、何故この村で隠れ住む事になったのかは置いての話だが……。


「…それで?レイダーさん、あなたはマーズの話に乗り、彼女を助けたいのですか?」


「ああ……彼女には返しきれない借りがあるからな」


「……あののように結果、希望がないとしても……死ぬ事になったとしてもですか?」


「ああ……。そうだ。それでも、俺は彼女を助けたいんだ。この村での暮らしは心地良いもんだった。俺は生憎と妻を娶る事も、子を成す事も出来なかったが……リアンとカルラに2人の子供が出来た時は、自分の事のように嬉しかった。アリソンとリコリスの2人は実の娘のように可愛いと思ってる」


そう言ってレイダーは、静かに目を閉じた。まるで、今までの思い出を思い出して噛み締めるように……。


レイダーのその様子をエドは黙って見つめた。


「そして、あいつ……ヤマトには俺の技を託す事が出来た。正直、戦う術じゃなくて、もっと教えてやりたい事は山ほどあるし、まだまだ精神的に危なっかしい部分もあるが……ま、アリソンが側に居ればあいつは大丈夫だろう。本当の意味でヤマトが最初に心を開いたのはアリソンだろうからな。エド……最後の最後で迷惑を掛けるが……この村の事を……」


「何を言っているんですか?」


子供達とあいつらの事を頼んだ……とレイダーが言おうとした所を遮り、エドは晴れ晴れと覚悟を決めたような顔をしたレイダーを冷たく睨んだ。


「何を晴れ晴れとした表情で自分に浸ってるんですか?自己陶酔ナルシズムにも限度がありますよ。馬鹿ですか?いや、馬鹿でしたね。……全く、私はあなたの副官です。そして、そもそも腐りかけていた私を副官にしたのはあなたですよ?レイダーさん」


一気にまくし立てるエドに、さすがのレイダーもたじろいだように一歩下がった。


「いや……だな」


「いや……じゃありません。そもそも何を死ぬ事を、殺される事を前提に話しているんですか?」


「っ……!!」


レイダーは驚いたように目を見開く。そんなレイダーを挑発するかのようにエドは、不敵に頬を吊り上げた。


「【暴獣】と謡われたアナタが何を弱気になっているのです?それに……今の私はやられたままで、我慢出来るほど甘い性格はしていませんし、彼女に借りがあるのはあの場に居た全員です。実家が嫌で逃げ出した事もありますが……私は根っからの商人です。商人が貸しも借りもそのままにすると思いますか?」


「ったく……!相変わらず良く口が回る」


レイダーは忌々しげに言いながらも、嬉しそうに口元を緩めた。


「それが私の特技ですから……しかし」


エドはおどけたように肩を竦めた後、何かを考えるように視線を横に向けた。


(しかし……マーズの行動や言動にはレイダーさんの又聞きとは言え、違和感を感じますね。この村は偶然・・などで入れるように出来てはいないのですが……まさか、ワザと少女をこの村に逃げ込むようにした……?一体なぜ……?)


「あん?どうした」


「いえ……単なる私の気のせいでしょう」


レイダーの問いかけに、エドは自らの考えを振り払うように首を振るうと、レイダーに厭らしい笑みを浮かべた。


「それよりレイダーさん。他のさんには、レイダーさんが自己陶酔ナルシズムに浸って言った事と1人で突貫しようとしたことは、洗いざらい喋りますから覚悟してくださいよ?」


「……ち、ちょっと待て?カルラとかにも言うつもりじゃ……」


レイダーは顔を引き吊らせ、背中に嫌な汗が流れるのを感じた。


「ええ?例外なく今の素晴らしい台詞と、バカな行動を起こそうした事を全て話します」


清々しいほどに爽やかな笑顔で言い切るエドに、レイダーは抗議の声を出す。


「オイ!カルラに焼かれたらどうする!?」


「ははは…?レイダーさんならば大丈夫ですよ。ええ……それに自業自得ってものですよね?」


「ぐぅ……!あいつがキレたらどうなるか、お前も知ってんだろうが!?それにウィルドの馬鹿に知られたら……」


「ははは?ウィルドさんも、明日の朝には帰って来るらしいですから丁度良かったですね。存分に酒の肴に笑われてください」


どこまでも笑顔を崩さないエドに、レイダーは面倒な奴を怒らせたと色々諦めつつ肩を落とした。


「はぁ……とりあえず面倒な奴らの相手をする前に、ヤマトと久しぶりに剣を合わせてみるか……」


最後になるかもしれねぇからな……とエドに聞こえないようにレイダーはそう呟くと、これ以上エドに何か言われては堪らないと窓から逃げるように外に出て行くのだった。








†††








元の世界と何ら変わらない太陽が上り始める少し前に、いつも通り僕はベッドから起き上がった。部屋に付いている洗面所で顔を洗い、僕は部屋を出る。廊下を歩きながら、夜中に起きた所為なのか、いつもより働きが悪い気がする頭でぼんやりと考える。




異世界を渡った自覚も、親切な超越者からの説明も無いままに、魔術や魔物が存在する異世界で目覚め、色々な事を経てこの村で生活するようになってからおそらくは6年近くが経っただろう。


森で倒れていた僕を拾ったと言う、似非侍ウィルドに、何をするにしても情報がないと動きようがないと思った僕は、異世界なのに普通に言葉が通じたので、率直に色々質問した。


その結果として知ったのは、ここが異世界であると言う純然たる事実だ。


僕はどう生きていくかと考えるより先に、ウィルドが最低限身を守る術を教え、その間の衣食住は面倒みてやると言い出した。


何でも僕のような異世界から来た人物……異邦人と言う存在は珍しいが、僕以外にも居るらしく、自分の師も異邦人だからこれも何かの縁……この世界で生きて行くのに最低限必要な護身術と知識は教えると言われた。


多少思う事は有ったが、強さも何も分からない魔物と呼ばれる存在と、徒手空拳で戦うなんてバカな事するつもりのなかった僕は、頷く以外の選択肢はないと思い、頷いた。


そして始まったのは基本的な知識とか習得ではなく、日本やアメリカあたりだと、確実に児童虐待になるであろう武術訓練と闘身術と言う技の修行だった。


一応、最初はかなり手加減されていたのだ。剣と刀の振り方の違いから、歩法や重心の保ち方などの基本的な事は当時10歳だった僕に教えるのに相応しいものだったのだけど……この時に教えられた技術の大半が、物心付く前から頭のネジが足りない実の父親に叩き込まれていたので、何ら問題なく出来たし、下地が出来てる以上……知らないものでも簡単に出来た。


そんな僕にウィルドは驚き、そして……ゾワゾワと背筋に悪寒が走るような心底嬉しそうな笑みを浮かべた。その目に鬼気としたヤバい感情が見て、僕は思った……やっちまったと。




その後、訓練じどうぎゃくたいにいつの間にか、レイダーさんとリアンさんが加わり……訓練は……うん。一回りか、下手すると二回りも年下の僕に本気を出すって、大人として、人してどうなの?って思うよね。


その合間にタダ飯を食わせて貰うのも悪いので、人がほとんど来ない村なのに、なぜかウィルドが経営している宿屋の掃除などをしたり、今では考えられない程の人見知りであった赤髪の美少女に、ストーキングされたりした。


そして、そんな日々を過ごす内に、最初の頃は最低限と魔物への対抗策と知識を得たら、村を出て行こうと思っていた僕が村に残ろうと決めたのは、いくつかの理由がある。


普通の人なら、元の世界に帰ろうとするのかも知れないし、異世界に憧れを持つ人物ならば、元の世界の知識で世界を変えてやる。もしくは個人の力が突出しているこの世界で己を鍛えて英雄に成りたいとか思うかも知れない。


そもそも異世界に来る時に人や物理法則そのもの超越した者……神みたいな存在から、魔王を倒す~とか、世界の危機を救うとか言う、他力本願もほどほどにしろよ?なんで違う世界の存在を使うんだよ?とツッコミたくなるような使命を言い渡されるのかも知れない。


でも。僕には元の世界には是が非でも帰りたいだっ!と願うような未練はないし、日本で暮らしていた時の友人の影響で、フィクションの異世界……漫画やライトノベルと言った日本のオタク文化により、多少の知識は知らない間に身に付いていたけど……魔術?使えれば便利くらいしか思わない。そもそも僕には使えないけど、魔物にしても竜とかの鱗って銃弾も通さないくらい硬いのかなぁ?くらいにしか思ってないし、異世界に対する憧れは別に持ってないからなぁ。


聞いた話によると、この世界には本当に神と呼ばれる存在がいるらしいけど、会った事もないし、会いたいとも思わないしな……あっ!いや、ひと昔前に日本で実の父親に連れて行かれた掃除仕事で、自分を神とか名乗るおっさんがいたけど、鉛弾一発で死んだので自称だったんだろうなぁ。


ま、そもそもこの世界の神様達は、基本的に気に入った存在に多少の加護ちからを与えるだけらしいから、会おう思っても難しそうだけど。


そんな僕だから元の世界と大して変わらない生活水準で衣食住に全然困らなかった事や、村に子供が姉妹の2人しか存在しないからか、自然と村全体が僕を受け入れてくれ「好きなだけ居ろ。むしろ村の子供になれ」と言ってくれた事……いや、結局色んな理由を並び立てても……僕がこの村に居着いたのは、居心地が良かったのと……何よりもアリソンの側に居たかったんだろう。


こんな事を今更考えるのは、昨日の件から感じる妙な予感があるからかな?


僕はたどり着いた部屋の扉を開けた。


「あっ…」


すると、言葉にならない声を漏らし、こちらを困惑したように見る紫水晶アメジストのような瞳と目が合った。


「えっと……おはよう。昨日の事は覚えてる?」


「……はい」


僕は予想より早く目覚めた銀髪の少女にそう尋ねると、なんとも言えない表情で少女は答えた。
年は僕とあまり変わらない15、16歳くらいだろう。ショートカットの銀糸で作られたような髪に、どこか引き込まれそうになる不思議な魅力を持つ紫水晶の瞳、優しげな曲線を描く目尻、処女雪のようにきめ細かく白い肌。


普段から美少女を見慣れている僕でさえ、思わず見とれてしまいそうになる美少女だ。


……一応、男達に関する事を聞きたいのだけど、今は止めた方がいいか。どうやらレイダーさんには思い当たる節ありそうだし……ふむ。


「それは良かった。昨日の男達は追い払っから安心して良いよ。それともう少し経ったら朝ご飯を作るから、ゆっくりと待ってて」


とりあえず必要な事だけを告げて、僕は部屋出ようとした所で「あのっ…!」と声を掛けられた。


振り向いて少女を見ると、美しく整った顔には不安と困惑があった。僕は黙って少女が口を開くのを待つ。


「……その、私を何で助けたんですか?この銀髪を見れば分かると思いますが私は魔族です」


僕はつい首を傾げる。なんで助けたねぇ……?何でだろうか。自分でも良くわからない。
それに魔族であることがそんなに問題なのか?
うーん。あれか?魔族と人族は長年争ってたとかそんな理由かな?……それにしてはレイダーさん、本気で心配してたしな。


「助けた理由は……何となくかな?それと僕はこの世界の人間じゃないから、魔族とか言われても何とも思わないし」


「……異邦人」


僅かに驚いた様子の少女に僕は頷くと、話を続けた。


「そう。異邦人。それとこの村には人種関係なく暮らしてるし、村の人間の1人に君の容姿を伝えたけど、魔族を忌避してなさそうだから、安心して良いよ」


……ま、僕の予想が外れてたなら最悪逃がすくらいなら手伝うつもりだ。


話を聞き終えた少女は俯いて、何かを堪えるようにシーツを握り締めた。


「そう……ですか。私は……私はこれからどうすればいいですか?生きる理由もなくなった私は……」


少女の口から出た虚ろな声を聞いて、目の前の少女が今にも壊れそうだと僕は思った。
……その言葉が僕に答えを求めてる訳じゃなく、ただ口から出ただけの言葉なのだとも理解出来た。


僕には彼女の事情は分からないし、こんな時に気の利いた言葉など思いつかなければ、軽々しく言うべきでもないとも思う。


それでも……いや、だからこそ僕は彼女に近づいた。


「あっ…」


近づいた僕は、少女の頭に手を置いて優しく撫でた。
母親が子供の頭を撫でるように、慈しむように、昔自分が撫でられた時を思い出しながら。


驚いたように顔を上げ、僕を見る少女の潤んだ瞳には虚無と、どこかすがりつくような感情が込められていた。


「ちょっと待てて貰えるかな」


「っ……」


僕がそう言って頭から手を離すと、残念そうな声を少女は漏らしたように聞こえたのは、気のせいではないだろう。


まぁいいや。今ならアレがある。


僕は背中に少女の視線を感じながら、部屋を出ると厨房に向かった。






厨房から戻ると、少女は自分の頭を撫でていた。変に力が入ってしまっていただろうか?


「それは……何ですか?」


少女は首を傾げ、僕の持つ、湯気を出しているコップを見る。


「ハーブティー。落ち着くよ。はい」


僕はそう言ってコップを渡すと、少女は戸惑いながらコップを受け取った。
確かご近所さんがリラックス効果があると言っていたやつだ。気休めくらいにはなるだろう。


僕は子供のように無防備にこちらを見る少女の頭をもう一度撫でて、目を合わせながら言う。


「さっきの君の質問には……僕は答えられない。僕は誰かを導けるほどの人格者でもなければ、経験もないからね。それに生きていれば、きっと良いことがあるなんて、無責任で甘い事を言うつもりもない」


世界は厳しい。どんなに必死に精一杯生きて、努力しても報われない人もいれば、努力する以前にただ己を取り巻く世界に翻弄され、絶望と怨嗟を残して死ぬ人間もいる。


「でも……君が生きる理由が欲しいなら、見つければいいんじゃない?」


「見つける…?」


「うん。見つかるかどうかは、僕には保証も何も出来ないけど……この村で少しゆっくりして、探してみるのも良いんじゃないかな?」


「迷惑になります……」


少女の言葉に僕は、なんとなく笑って言った。


「大丈夫だよ。何せ、異世界の人間を何の躊躇いもなく受け入れる人達だからね。それじゃ、また後で」


部屋出ようとする僕に、少女の声が掛けられた。


「あのっ…!る、ルナスです」


緊張したように震える声で言ったのは、名前だった。


「うん…?ああ!僕はヤマト。また後でルナス」


僕は改めて、少女……ルナスに別れを告げて部屋を出た。






ヤマトが去った後、ルナスは渡されたハーブティーに息を吹きかけて、少し冷ますと、カップに口を付けた。


「美味しい……」


ハチミツが入っている為、甘くどこかホッとするような味だった。
体だけでなく、心も暖まるような優しい味。
その味にルナスは、子供頃に忘れた暖かい何かを胸に取り戻した気がした。











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