どうやら最強の少年は平穏に過ごせない。

神依政樹

(2)村人達の因縁

「よっと…」


謎の男達と少女の事を知らせるにも、怪我をした少女をそのまま放置するのはどうかと思ったヤマトは、手早く酒で消毒と止血をして応急処置を施すと、悩んだ末に少女を家のベッドに寝かせることにした。


たまに怪しい行商の人間が来るだけの村なのにも関わらず、意味が分からない事にヤマトの現在の家は宿屋だ。客は色々怪しい行商人くらいしか来ない為に宿屋と言うよりは、食堂、居酒屋と言うのが近い状態なのだが……。


ヤマトは少女を運び終えて、宿屋いえを出ると、誰に知らせるべきか迷いながら歩いて行く。


最初にヤマトは、エドという村の知恵袋兼キャラの濃い村人達をなんとか纏めている苦労人の所に行こうとしたが、最近毛が薄くなったと酔っ払った村人達に言われ、本気でキレていたのを思い出し、心労を掛けたくないと思ったのと、荒事と言うこともあり、思いついたもう1人の家に行く事にした。


木材と煉瓦を組み合わせて作られた家々を通り過ぎ、少し歩くと他の家に比べて、細長い形状の煙突が特徴の建物があった。その建物の脇には大量の薪が詰まれている。


ヤマトはそちらには足を向けず、その隣に建てられたボロ小屋に足を向けた。


煙突が付いた建物は、レイダーが趣味と言っている鍛冶を行う作業場だ。ただ……趣味と言っても、その腕前はかなりの領域に届いており、本人曰わく知り合いのドワーフ仕込みの鍛冶らしいのだが、ヤマトはヘタすると本職が裸足で逃げ出す腕前なのではと思っている。


もっともヤマトは異世界にたどり着いてから、この村を一切出た事がない以上、思っているだけに過ぎないのだが……。


ヤマトは酔っ払ったレイダーが、乱暴に扱うせいで歪んだ扉をノックした。


「レイダーさーん!さっさと出てきてくださいー。扉ぶち破りますよ~」


夜中なので声を抑えながら、ヤマトが物騒な言葉で呼びかけると扉が開いた。


「……お前は本当に軽いノリで物騒な事を口走るな」
呆れたように言いながら出て来たのは、何百年も生きた大樹をそのまま人間にしたような存在感を持つ偉丈夫だ。


レイダー・アルバトス。


ヤマトに戦闘術を叩き込んだ師匠の1人である。ニメートルを超える身長と、強靭な筋肉で覆われた厚みのある体躯。
無造作に切ってある赤銅色の短髪に、豪快さと少年のような性格がそのままにじみ出ている顔付き。こだわりがあるのか、髪と違いキレイに整えられている立派な顎髭。レイダーはそのアゴ髭を撫でながら出てきた。


(やっぱり男達に気づいてて無視したな……この人)


ヤマトはこのやろうと思った。


レイダーの実力……と言うよりこの村の村人達は訳ありなのか、何なのか一定以上の実力を持つ者が多く、異変に気づかない方がおかしいのだ。


なんで、傍観しやがったんだ?という思いを視線に込め、責めるような目つきでレイダーを見る。


「……はいはい。俺が悪かったよ。謝るからそんなに睨むなよ……。別に俺とウィルドより強いお前ならどんな相手だろうと楽勝だろう」


レイダーは肩を竦めながら言った。ヤマトとしては色々言いたい事が口を出そうになったが……これまでの付き合いで、言っても無駄だと悟っているので我慢する。


「で?俺の所に来ないと行けない事情があったのか?」
ヤマトは話が早いと頷く。


「怪しい男が侵入して来たので倒して、外で女の子を追い詰めて笑ってる奴らも倒したのは良いんですけど……」


「……殺さなかったのか?」


レイダーはなんでそんな奴らを殺さないんだ?と不思議そうな視線を向ける。


「……人をなんだと思ってるんですか?ま、最初は殺そうかと思ったんですが、後ろに権利者がいたら面倒だと思ったので、一応レイダーさんにどうするべきか聞きに来たんですよ」


端から普通の人間が聞いていたら、全速力で逃げ出すような物騒な会話を二人は平然とする。


「……ま、どんな素性か分からない以上は殺さないか。お前、そう言う所は慎重だよな」


「僕一人ならともかく、村に何か迷惑が掛かったら事ですから、慎重にもなりますよ」


「ふん?そっか…。しゃあねーな。一応調べに行くか」


(というか……この村には普通の奴は認識出来ない結界が張られてるし、色々細工も施してある。一体何者だ?そいつらは……)


レイダーは面倒な事になりそうだと、顔をしかめ、ヤマトと一緒に男達が倒れていると言う場所に向かうのだった。






たどり着いた場所で数人の男達が倒れている光景をレイダーは眉一つ動かさず見ると、そのまま男達の体を調べだす。


「ったく、何が悲しくてこの俺が男の体なんぞ弄らないとならないんだか……ん?おいおい……!?この魔具を持ってるって事はこいつらは……」


レイダーは倒れている男達を調べると、何かを見つけ、嫌そうに顔をしかめ呟いた。


「……何なんです?」


ヤマトが何かしら思い当たる事があるのかと、不思議そうな顔をレイダーに向ける。


「あ~。ま、何だ。……面倒な奴らだ。マギアソールって国の狂信者だな」


レイダーは逆さ十字のネックレスをヒラヒラさせながら、心底嫌そうに言った。


「狂信者……」


ヤマトも狂信者と聞いて顔をしかめる。。


宗教は心の安寧や、価値観の違う者同士に同じ価値観を持たせる事、社会生活に生きる上で欠かせない基礎的な道徳観を持たせる為に必要なモノだと、ヤマトは理解している。


が、教義のねじ曲がった解釈や、そもそも教義自体が歪んでいる場合、信仰という盾を手に、人がどれだけ狂った存在になるか。ヤマトは嫌と言うほどに学んでいた。


「ああ、そういえば、お前がこの村にずっと居るって宣言したから、誰もこの世界の歴史や、この大陸の情勢とか教えてなかったな…」


正確には教えてもらえる機会が何度かあったのだが、ヤマトに興味がなく、村を出る気もなかったので必要もないだろうと思い、教わらなかったのだ。


「この大陸には4つの大国があるんだが、その中で一番魔術に精通してる宗教国家だ……ま、後で時間が出来たら話してやる。ところで……話に出て来た女の子とやらどこに居るんだ?」
「ああ、肩を斬られてたみたいなので、家のベッドで寝かせてますよ。キレイな銀髪をしてまし…」


銀髪と聞いた瞬間、レイダーの顔が少し強張った。


「……っ!?銀髪だと…!?間違いないのか?」


「……ん?間違い無いですよ」


「そうか……」とレイダーは呟くと目を細め、気怠げな雰囲気から、鋭い雰囲気に気配を変化させて空を見上げた。


「……俺は顔面にくっきりと拳の形が付いている男を尋問するから、お前は寝ていいぞ」


(んー?これは銀髪の女の子に心当たりでもあるのか?ま、レイダーさんに任せればいいか……)


ヤマトは寝ないでも、3日くらいなら全く問題なく過ごせるが、睡魔がないという訳ではなく、睡眠欲は普通の人より強い方だ。


「じゃあ…お言葉に甘えて、寝させてもらいます」


「オゥ!しっかり寝てデッカくなれよ!」


ヤマトは子供扱いだなぁ……と思いながらも不思議と悪い気はせず、レイダーの言葉に甘えて、寝るために家である宿屋に入って行った。


それを確認したレイダーは「さて…」と呟き、目に暴力の光を宿す。


「ここだと声がうるせぇな……」


おもむろにレイダーは倒れている男達を2つに分けると、軽々と男達を掴み、森の方に向かう。


かなりの速度で森を駆け抜けたレイダーは、掴んでいた男達を乱暴に地面に放り投げた。


「お~い、起きろ~!」


まるで知り合いを起こすかのような気軽い口調で、レイダーはリーダー格らしい男に近づくとペチペチと叩く。


「うっ…ヒッ!!!」


男は目を覚ました途端に、視界に写り込んだ暴力的空気を纏ったレイダーに怯え後ずさる。


先ほど、自分を容易く倒した少年の殻を被った化け物ではない。


だが、男はレイダーを見て、一目でその実力が理解出来た。己がどうこう出来る相手ではないと。


「そう怯えるなよ?ちょっと聞きたい事があるだけなんだ」


口調は穏やかだが……いや、穏やかだからこそ、その目に宿る暴力の匂いと発せられる威圧感から、目の前の存在が冷静に手段として暴力を使う存在と男は感じ、抵抗を諦めた。ヘタな抵抗をしようものなら、一切躊躇なくレイダーが己を拷問する事を理解したからだ。


「はいっ!にゃにゃんでもはなします!」


男は先程まで、浮かべていた顔はどこに行ったのか……。媚びるような卑屈な顔を浮かべる。


聞き取り辛い声もだが、それなりに整っていた顔立ちも、鼻が潰れ、前歯が折れているために、出来の悪い人形のように不細工になっている。レイダーは思わず顔をしかめた。


「まぁ、いいさ。で?なんで、こんな所で魔族の女の子を追っていた?」


この大陸において、銀髪は魔族の証だ。だが、神話において語られる創世の女神に戦い挑んだ魔王の子孫……魔族達が住むと言われるのは、ここから西にある、ウィクトル王国に隣接する最低討伐ランクA以上の危険な魔物がばかりが存在する魔の森を抜けた先と言われているはずだ。様々な場所を訪れた事のあるレイダーでさえ、これまでの人生で見た事のある魔族は1人しかいない。


「はっい…あの魔族は、私の上司であらだれるマーじゅ様が飼っていのでしゅが、その命にじたがったのです」


「マーズ…って」


独り言のように呟いたレイダーの脳裏には女が羨むほど、綺麗に整った顔立ちに、薄ら寒い笑みを貼り付けた男が思い浮かんだ。レイダーにとって……いや、村に住んでいる大人達全員の宿敵とも言うべき存在。


レイダーは思い出すだけで殺意が湧き上がるが、僅かに違和感を感じた。


人教は人間こそが創世の女神に選ばれた者であり、それ以外種族……獣人や、森人エルフは奴隷として尽くす為に女神が遣わした存在であると言う教えを持っている。
もっともそれは奴隷制度を容認する為に後で付け加えられた教義であり、元々の人教の思想は人間以外の存在は魔物と変わらず、害悪な者と言う過激なものである。


そしてマーズは労働力として亜人の奴隷について容認してはいるものの、元々の教義を信仰している為、亜人は魔物と同じ程度の存在だと思っている……そんな男が亜人の中でも、魔王の子孫とされる事から教義内で、もっとも穢れた存在とされる魔族の少女を?


「ふん…?人教の幹部がわざわざ目の仇にしてる魔族をねぇ……。理由は?」


命惜しさに必死になりながら、男がレイダーの質問に応えようとした所で「り、理由は…ギギ…アアアアー!」突如として奇声上げて白目を向きながら、ヨダレ垂らし、男の体は痙攣したようにビクビクと不気味に震え出した。


「チッ!これは……」


レイダーは男の様子に目を細め、一歩下がり僅かに距離をとった。レイダーには男の異常な様子に心当たりが有ったのだ。男は痙攣が止まると、うっすらと笑み浮かべて口を開いた。


「遠視の魔術が無効化されたので、体を乗っ取ってみれば……お久しぶりですね。【暴獣】レイダー・アルバトス殿。やはり生きていましたか」


その声も、姿も先程まで必死にレイダーに媚びへつらっていた男と一切変わりがない。だが…その男の纏う雰囲気は明らかに違った。目には冷徹な狂気と知性が宿り、ヤマトにより強制的に変形させられた顔は、人を不安にさせるような笑みを浮かべていた。


不可解な男の変化に対して、レイダーはかつて戦場で浮かべていた凶悪な笑みを男に向けた。


「ハッ…!久しぶり……か。俺とお前はそんな挨拶をする仲じゃないだろう?出会ってやる事は一つだけ……殺し合いだろう!マーズ!」


常人ならば本能的な恐怖で失禁しかねないほどの殺意を受けながらも、男……正解には男の体に己の精神を憑依させたマーズは、笑みを崩さずに肩を竦めた。


「確かに仰る通りですが……生憎とこの程度の体では、アナタに傷一つ付けれませんよ。まぁ?そもそもな話として、アナタのような化け物とは優れた肉体を使ったとしても正攻法で挑もうとは思いませんがね」


「ハッ!化け物か。俺とタメかそれ以上の力を持つ使徒の中で、第二位のお前が言うのか?」


「いえいえ、私など直接的な戦闘力では、彼女が抜けて以来空位であった末席をこの前手に入れた少女にも負けますよ。第二位を頂いているのはあくまでも、自由な方々が多い使徒を多少なりとも統制する為ですよ」


おどけるマーズに殺意を更に募らせながら、レイダーは第10位が埋まった事に多少驚いた。使徒とはマギアソールの中でも、直接宗主自身に仕える10人の名称である。亜人を差別する人教が主教であるマギアソールなので、もちろん【人間】だ。しかし…普通とはかけ離れた力を持つ人の枠から外れた人外である。全員が例外なく魔術の域を逸脱した魔法を操り、人には出来ない筈の魔の術を介さない魔力による直接的な身体強化が出来る者達。


そして、かつて第10位の座に居たのは【絶炎姫】と呼ばれた真紅の髪を持つカルラという1人の少女であった。


「……カルラの後釜か。ふん…!まぁいい。それで?お前が悪趣味なのは十分理解してるが……わざわざ部下を使って魔族の少女を追い掛け回していたのはどういう了見だ?」


「ふふふ、さて?なぜだと思いますか?」


どこまでも飄々とした態度を崩さないマーズ。


「ああ…聞いた俺が悪かったな!死ね!」


レイダーは感情の籠もらない声でそう告げると、マーズが……正解にはマーズが乗っ取っている男の頭部に向けて、蹴りを放った。


ブッオン!


本来、蹴りでは出ないような空気を裂くような鋭さと、巨体であるが故の体重を乗せ、人を殺傷するに十分な威力を持った、重く、鋭い蹴り。


「っと…やれやれ…短気ですね…」


が、しかしマーズは大きく後ろに飛んで避ける。


蹴りを避けたマーズを見て、忌々しく舌打ちするレイダーにマーズは笑みを深くする。


「フフフ……追撃を仕掛けて来ないのですから、相当気になる様子ですねぇ?」


無言で睨むレイダーにマーズは嬉しそうに笑う。


「まぁ、私としては遠視の魔術を無効化していた結界や、世では20年前の災害を引き起こした大罪人と認識されているはずの、あなた達を手助けした方々を聞きたいところですが……良いでしょう。その悔しそうな顔に免じて多少は話すとしましょうか」


そのマーズの言葉にレイダーは今すぐにでも殺してやりたくなったが、所詮目の前にいるのは本人ではなく、男の体を乗っ取っているだけなのだと己に言い聞かせた。


「魔族の少女……ルナスはあなた達と共に、20年前の魔の森で起こった魔物の進行を止めたあの女の娘……と言っ…!?」


マーズが彼女と言ったその瞬間……レイダーは瞬時に間合いを詰めてマーズの首を片手で掴み、地面から浮かせると静かに問う。


「……彼女がどうした?」


マーズはレイダーの目を見て震えた。その理由は本能的な恐怖と歓喜だ。レイダーの目にあるのは、先程までの殺意が生ぬるいと感じる程の冷酷な殺意だった。


「は…はは!素晴らしい。素晴らしい表情です!どうやら鈍ってはいないようですね」


「……………彼女は?」


「はは…!恐ろしいですね?そんなに睨まないでください。ルナスは間違いなく彼女の娘ですよ。そして……彼女も私の手元に居ます」


「彼女を解放しろ……」


ただ静かにレイダーは告げる。そしてマーズは……口の端を吊り上げ、その言葉を待っていたように笑みを浮かべて言った。


「ええ…構いませんよ」


「なに?」


レイダーは眉をひそめ、構わないと言ったマーズを訝しげに見た。解放しろとは言ったが当たり前の話として素直に解放するとは思っていない。それが構わないと言ったのだ。


「ああ、ただし、もちろん条件があります。あなた方には私の遊び相手になって欲しいのですよ」


「遊び相手だぁ…!?はっ!ママゴトでもしようってか?」


獰猛な笑みを浮かべるレイダーに何ら怯む事もなく、マーズは笑みで頷く。


「ええ…それも構いませんがもっと面白い遊びをしましょう。魔の森の一件で邪魔をしてくれたあなた方を大罪人に仕立て上げ20年、最早数年もすればこの大陸全ての人間は人教の教えを信じ、魔物と変わらない程度の存在である亜人達も、創世の女神様の威光を前にひれ伏すでしょう」


どこかつまらないそうに言うマーズに、レイダーは鼻で笑う。


「はっ!それでお前達の目的達成だろう?」


「そうなのですがね……。正直、退屈なのですよ、敵がいないと言うのはね。人教と対立しようとしていた帝国の皇帝……確かあなたの義理の弟君ですか?彼は実権をほとんど失いましたし、彼の息子であり、あなたの甥である皇子や、公国の姫君は成長すれば多少は楽しめそうですが……まだまだ未熟。私は敵が欲しいのですよ。一手間違えれば窮地に陥るような敵が……ね」


「ふんっ!で、その敵役を俺に…俺達にやらせようってか」


「ええ…。この大陸の運命をかけて、必死に命がけで私の邪魔してください。そうすれば……そうですね。ルナスからは私は手を引きましょう。元々、この体の持ち主に追わせていたのも退屈凌ぎのお遊びですからね」
どうですか?と言って、レイダーを見るマーズの目には断るはずがないと言う確信があった。その目を見たレイダーは舌打ちして答えた。


「ちっ!ああ…良いだろう。で、彼女……ルミナスはお前をぶち殺して取り戻せって事でいいんだな?」


「フフ……ええ。捕らわれのお姫様がいた方がやる気が出してくれるようですからね。ではでは……私はこの辺で失礼致します。あなたが私を殺すのを楽しみに待たせていただきます」


冷笑を浮かべたマーズは、レイダーをバカにするかのように、上流貴族のような優雅で気品ある動作で一礼した。


すると、糸の切れた操り人形のように不自然に体が傾くと、元の男でも、マーズが乗っ取っていた時とも違う……人形のように無機質な目をした男が顔を上げる。


それと同時に倒れていた男の部下らしい者達も起き上がり、こちらを全く気にせずに背を向けて、走り去って行った。


「相変わらず薄気味悪りぃ……」


男達が消え去ったのを見ながら、レイダーは1人呟いた。
【人形師】と呼ばれるマーズの持つ魔法それはそれはたちが悪い。レイダーが知っているだけでも、簡単な意識操作から完全洗脳を成す精神操作、今のように他人の体を自分の体のように操る事も出来るし、自分の意識を入れる事も出来る。
参謀的な役割から前線に出ることは早々ないが、戦闘になると、文字通り気色悪い人形や希少な魔金属で作くられた人工生命体ゴーレムを数十体操るのだから、たちの悪さは想像に難くないだろう。


「しかし、なんだ?」


レイダーはふっと呟いた。


先程は激昂して気づかなかったが、冷静になった頭で考えると、レイダーはマーズに妙な違和感を感じた。まるで自分でも理解出来ない行動に、無理やり理屈を当てはめて、自分を納得させたようなチグハグな違和感。


「ま……考えても仕方ねぇな」


レイダーは頭を振り、マーズに感じた違和感について考えるのを止めた。レイダーがマーズと対峙したの数回しかなく……20年近く時が経っているのだ。多少の違いは少なからずあるだろうと、レイダーは納得して口角を吊り上げて凶悪に笑った。


「何にしろ……ルミナスは必ず助ける。俺様を表舞台に引きずり出した事を後悔させてやろう」


かつて、北の帝国には【暴獣】在りと大陸中にその名を轟かせ、畏れられた1人の男がそこには立って居た。





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