遺産を相続したら異世界の独裁者になったんだけど、今度こそ俺はまともな人間に生まれ変わる事ができるかもしれない

ノベルバユーザー234468

プロローグ

 鼓笛隊が勇ましい音楽を演奏しながら行進していた。
 芸人たちが踊ったり、飛び上がったり、バク転したりと音楽に合わせてパフォーマンスを見せつけながら花びらをまき散らす。
 その後ろを鎧を着た騎士たちが軍靴の音を立てながら勇ましく行進した。
 鈴木海すずきかいはその後ろを屋根のない馬車に乗ってついて行く。
 幼なじみの六花雪菜りっかせつな明松真琴かがりまことも馬車に同乗している。
 雪菜は仏頂面で頬杖をつき、魔法使いみたいなフードを被った真琴は心なしかニヤニヤとしていた。


「カイ、手くらい振ってやれよ」


 幼なじみの真琴にそう言われたカイは、あわてて沿道に集まった民衆に手を振る。
 すると民衆は興奮した。


「大佐さま~!」


「いよっ! 大佐様!」


「たいささまー! がんばれー!」


 気軽なわりに力強い声援が帰ってくる。
 大佐というのは国家元首のことらしい。
 カイはそれ以上深く考えたくはない。
 某フランチャイズチェーンのパロディなのか、それとも……
 なぜか冷静になったカイは自分の腹を見た。だらしなくぶよんぶよんの肉が出ている。
 衣装は軍服。なぜかこれだけは二十一世紀の独裁者風だ。
 帽子も独裁者の好きそうな金の鷹がついたなんとも言えないデザインだ。


(悪の幹部かよ……)


 実際は悪の組織の幹部にすらなりきれていない。
 カイはあらためて思った。
 どう見ても自分は高校生だ。それもとびきりさえない。


(なぜ自分が元首になんかなってしまったのだろうか)


 カイは自問自答した。
 だが、これは紛れもない現実。
 カイは祖父の形見の懐中時計、花と小鳥の懐中時計がもたらした運命なのだ。
 カイは懐中時計をそっと握りしめた。
 金の鎖がしゃらんと鳴った。
 カイは息を吐いた。
 そうだ自分は成し遂げなければならない。
 だからカイは仏頂面の雪菜を見据えた。
 それを見て真琴はニヤニヤする。
 カイの胸が高鳴った。
 耳から血管を流れる血の音が聞こえた。
 そしてカイは勇気を出して言った。


「せ、雪菜、ボクは……」

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