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セミになりたい少女と内気な僕

ノベルバユーザー173668

再開

「おい! 幸夫くんじゃないか。」
と言われ、僕は、振り返った。そこには、50歳くらいの男性がいた。
「先生!」
それは、僕の憧れの人だった。弟が息を引き取り、追い詰められていた僕を救ってくれたカウンセリングの先生だ。先生は、僕を見るなり、
「どうやら。かなり悩んでいるみたいだね。よかったら相談に乗るよ。」
と言われた。どうやら、僕が悩んでいることはお見通しらしい。
「いや、大丈夫です。」
と答えた。この話は先生にするべきじゃない。僕一人の問題だ。すると、先生は、
「相変わらず君は強情だな。いいから来なさい。」と半端強引にカウンセリング室に連れていかれた。話すもんかと心に決めていたのに、何故か先生の前では全てを話してしまっていた。先生にハンカチを渡されるどうやら泣いていたらしい。僕は、
「すいません。見苦しいところを見せて。」
と言った。先生は、
「君はとても優しい、それ故に一人で思い悩んでしまうとこらがある。」
と言った。先生は続けて、
「一人で全てを抱えることは、決してえらくなんかない、人を頼ることも、とても大切だと思うよ。」
と言った。先生が、僕の話を親身になって聞いてくれた。
「君は自分のことを人殺しと言いたいと?」
僕は、
「はい。」
と言った。先生は僕に、
「そうか、兄が人殺しと知ると、弟も悲しむだろうな。」
僕は、意外な言葉を掛けられ、
「はい。その通りです。弟に合わせる顔がありません。」
というしかなかった。
先生は、
「本当にそれでいいのか?」
と尋ねてくる。
僕は、
「今頃どうしようもありません。」
と言った。先生は、僕に叱りつけるように、
「君は弟の約束を破れなくて、とても悔しい思いをしたのだろう。また君は逃げて、その女の子に同じことをするのかい?そして、君はまた後悔して、自分を傷つけてしまう。」
僕は、頭の中が真っ白になっていた。先生は、
「君なら、今するべきことができる。そう信じているよ。」
そう呟き、先生は、部屋を出ていった。
空が赤く染まり、からすの鳴き声が聞こえる。僕は一体どうすればいいんだ。今頃何ができるんだ。考えるほど分からなくなる。今何時だろ、ふと時計を見る、
「お兄ちゃんと一緒に公園で遊びたかった。」
ふと、脳裏に弟の悲しい顔が浮かび上がった。そうか、自分は逃げていたんだ。セミちゃんの気持ちと覚悟を知らずセミちゃんの死を恐れて逃げていた。弟の時と同じように。
僕は、
「セミちゃんごめん。」
と呟いた。すると、先生が部屋に入ってきた。
「過去は変えられないけど未来は変えられる。君のすべきことはもう分かるよね。
と言った。僕は、
「先生ありがとうございます。僕も、いつか先生みたいに誰かを助けれる人間になりたいです。」
とお礼を言った。先生は、
「君のカウンセラーへの道への第一歩だね。」
と言った。僕は、
「はい。」
と力強く返事をした。こうはしていられない。セミちゃんの余命はいまも一刻と近づいている。僕は、急いで電車に乗り込んだ。

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