誑かした世界に終わりを告げて
改革者リアン
リアンは娼婦の母と二人で暮らしていた。
元来、リーダーシップのある性格から貧困街の子供たちのリーダーとなり、貧しい中でも幸せな日々を送っていた。
母とは死別してしまったが、貧困街では当たり前のこと。
悲しさはあったが、周りの仲間の支えがあったから、リアンは立ち直れた。
そんな中、リアンは一人の少女と出会う。
少女、ヴィヴィは不思議な少女だった。
言葉遣いも、所作もどこか気品を感じるのに、気取っておらず警戒心を抱かせない。
そんな少女に出逢ったのは全くの偶然。
リアンがたまたま貧困街の入り口に訪れた時、ヴィヴィがいた。
一人、貧困街の入り口で苦しそうな顔をしているヴィヴィに、リアンは声をかけた。
ヴィヴィはリアンをみた瞬間、痛みを絶える表情をし、次に優しく笑みを向ける。
貧困街で己に向けられる柔らかな笑みなど、母以外に居なかった。
気づけば、強引に見知らぬ少女を案内していた。
案内が終わり、名前を聞けば少しの間と、ヴィヴィという名前。
名前を知れた喜びに自分の名前を言えば、また苦しそうな顔。
子供のする表情ではないが、名前を褒められたことに喜ぶリアンは、それに気づかなかった。
幾度目かの出逢いの後、ヴィヴィはリアンに町の改革を提案してきた。
最初はゴミ拾いから、次に派遣、商いの補助など、やることは沢山あった。
改革が成果を出し始めた頃、ヴィヴィはリアンに話があると、リアンの住処までやってきた。
「話しってなんだ?」
改革を始めた当初、拙いしゃべり方もヴィヴィと話すことで、徐々にと歳相応になっていた。
リアンの方が小さかった身長も、リアンとヴィヴィはお互いの年齢を教えあった際リアンは絶望していたが、今は同じくらいの背になっている。
リアンの成長が早いのか、ヴィヴィの成長が遅いのかは分からないが。
栄養失調の兆しがあったリアンの体も、賃金を稼げているので少しづく回復へと向かっていた。
「リアンには話ておこうと思ったの」
何かを決意した様子のヴィヴィに、リアンも気を引き締める。
「私が貧困街の住人ではないことは気づいていたでしょう?」
「それは、まぁ」
確かにリアンは、ヴィヴィが貧困街の住人ではないことは薄々分かっていた。
それでも、仲間であることに変わりはなかったが。
「私は貴族の、ロズベルク家の人間なの。本名がヴィーラ・ロズベルク」
「ヴィーラ…」
突然の告白は衝撃だった。
学のないリアンでも貴族の意味は分かる。まさか目の前の少女が貴族だとは。
リアンは貴族に良い印象は教えられていない。そのことからヴィヴィは言うのを戸惑っていたのだろう。
「今まで騙していてごめんなさい」
申し訳なさそうな顔をするヴィヴィ、いやヴィーラにリアンは近づいて頭を撫でた。
「それでも、仲間のヴィヴィなのには変わりない」
出来るだけの笑顔を浮かべ、安心させようとするリアンにヴィーラは安堵するように息を吐いた。
「でも、周りにはもう少し黙っていたほうが良いかな」
「同意見だわ」
周りにはもう少し黙っていようと、二人は頷く。お互い笑みを浮かべながら。
それから、リアンは偽名でも本名でもあるヴィー、と愛称で呼び始める。
リアンはヴィーラが好きだった。
それは、改革が成果を出始めた頃からの彼の中の最重要機密だ。
見舞いに来ていたヴィーラが帰ったのを見届け、リアンはベッドの中でヴィーラを想う。
今思えば一目惚れだったとリアンは思う。
憂いた顔で貧困街の入り口にいたヴィーラにどうしようもなく惹かれたのだ。
最初は唯の興味だと思った。
しかし、貧困街の改革の為にゴミ拾いを率先してやる姿に、皆の為に頭を下げる姿に、動く姿にその興味は容易く恋愛感情だと気づく。
少しでも手が触れれば心臓は跳ね上がり、ヴィーラが笑えば頬が染まる。
ヴィーラに褒めてもらうために改革に尽力を注いでいた。
そのヴィーラが貴族だと打ち明けられたときも、嬉しさが心を占めた。
ヴィーラが己を信用して打ち明けてくれた嬉しさ。
誰でもなく、自分に。
隠していたリアンの恋愛感情を知っているのは、友人のクルトのみ。
クルトはリアンが自覚する前から気づいていたようだ。
「お前、ヴィヴィ好きすぎだろ」
と笑われたほどだ。
笑われたリアンはムカついたのでクルトの脛を蹴った。
その後の喧嘩を止めたのがヴィーラだが。
鋭そうなヴィーラは意外と気づかなかった。
いや、きっと気づかないフリをしていただけだろう。
空しい片思いにリアンは思わず溜息を吐いた。
あと少し、あと少し成長すればきっとヴィーラはこちらに気づいてくれるかもしれない。
そう思っているが、重い頭では未来を想像できなかった。
明日、ヴィーラがまた見舞いに来てくれたら元気になれる気がする。
そう思い、目を閉じる。
「おれの愛しい救世主様、大好きだったよ。ヴィーラ」
リアンの最後の告白。
元来、リーダーシップのある性格から貧困街の子供たちのリーダーとなり、貧しい中でも幸せな日々を送っていた。
母とは死別してしまったが、貧困街では当たり前のこと。
悲しさはあったが、周りの仲間の支えがあったから、リアンは立ち直れた。
そんな中、リアンは一人の少女と出会う。
少女、ヴィヴィは不思議な少女だった。
言葉遣いも、所作もどこか気品を感じるのに、気取っておらず警戒心を抱かせない。
そんな少女に出逢ったのは全くの偶然。
リアンがたまたま貧困街の入り口に訪れた時、ヴィヴィがいた。
一人、貧困街の入り口で苦しそうな顔をしているヴィヴィに、リアンは声をかけた。
ヴィヴィはリアンをみた瞬間、痛みを絶える表情をし、次に優しく笑みを向ける。
貧困街で己に向けられる柔らかな笑みなど、母以外に居なかった。
気づけば、強引に見知らぬ少女を案内していた。
案内が終わり、名前を聞けば少しの間と、ヴィヴィという名前。
名前を知れた喜びに自分の名前を言えば、また苦しそうな顔。
子供のする表情ではないが、名前を褒められたことに喜ぶリアンは、それに気づかなかった。
幾度目かの出逢いの後、ヴィヴィはリアンに町の改革を提案してきた。
最初はゴミ拾いから、次に派遣、商いの補助など、やることは沢山あった。
改革が成果を出し始めた頃、ヴィヴィはリアンに話があると、リアンの住処までやってきた。
「話しってなんだ?」
改革を始めた当初、拙いしゃべり方もヴィヴィと話すことで、徐々にと歳相応になっていた。
リアンの方が小さかった身長も、リアンとヴィヴィはお互いの年齢を教えあった際リアンは絶望していたが、今は同じくらいの背になっている。
リアンの成長が早いのか、ヴィヴィの成長が遅いのかは分からないが。
栄養失調の兆しがあったリアンの体も、賃金を稼げているので少しづく回復へと向かっていた。
「リアンには話ておこうと思ったの」
何かを決意した様子のヴィヴィに、リアンも気を引き締める。
「私が貧困街の住人ではないことは気づいていたでしょう?」
「それは、まぁ」
確かにリアンは、ヴィヴィが貧困街の住人ではないことは薄々分かっていた。
それでも、仲間であることに変わりはなかったが。
「私は貴族の、ロズベルク家の人間なの。本名がヴィーラ・ロズベルク」
「ヴィーラ…」
突然の告白は衝撃だった。
学のないリアンでも貴族の意味は分かる。まさか目の前の少女が貴族だとは。
リアンは貴族に良い印象は教えられていない。そのことからヴィヴィは言うのを戸惑っていたのだろう。
「今まで騙していてごめんなさい」
申し訳なさそうな顔をするヴィヴィ、いやヴィーラにリアンは近づいて頭を撫でた。
「それでも、仲間のヴィヴィなのには変わりない」
出来るだけの笑顔を浮かべ、安心させようとするリアンにヴィーラは安堵するように息を吐いた。
「でも、周りにはもう少し黙っていたほうが良いかな」
「同意見だわ」
周りにはもう少し黙っていようと、二人は頷く。お互い笑みを浮かべながら。
それから、リアンは偽名でも本名でもあるヴィー、と愛称で呼び始める。
リアンはヴィーラが好きだった。
それは、改革が成果を出始めた頃からの彼の中の最重要機密だ。
見舞いに来ていたヴィーラが帰ったのを見届け、リアンはベッドの中でヴィーラを想う。
今思えば一目惚れだったとリアンは思う。
憂いた顔で貧困街の入り口にいたヴィーラにどうしようもなく惹かれたのだ。
最初は唯の興味だと思った。
しかし、貧困街の改革の為にゴミ拾いを率先してやる姿に、皆の為に頭を下げる姿に、動く姿にその興味は容易く恋愛感情だと気づく。
少しでも手が触れれば心臓は跳ね上がり、ヴィーラが笑えば頬が染まる。
ヴィーラに褒めてもらうために改革に尽力を注いでいた。
そのヴィーラが貴族だと打ち明けられたときも、嬉しさが心を占めた。
ヴィーラが己を信用して打ち明けてくれた嬉しさ。
誰でもなく、自分に。
隠していたリアンの恋愛感情を知っているのは、友人のクルトのみ。
クルトはリアンが自覚する前から気づいていたようだ。
「お前、ヴィヴィ好きすぎだろ」
と笑われたほどだ。
笑われたリアンはムカついたのでクルトの脛を蹴った。
その後の喧嘩を止めたのがヴィーラだが。
鋭そうなヴィーラは意外と気づかなかった。
いや、きっと気づかないフリをしていただけだろう。
空しい片思いにリアンは思わず溜息を吐いた。
あと少し、あと少し成長すればきっとヴィーラはこちらに気づいてくれるかもしれない。
そう思っているが、重い頭では未来を想像できなかった。
明日、ヴィーラがまた見舞いに来てくれたら元気になれる気がする。
そう思い、目を閉じる。
「おれの愛しい救世主様、大好きだったよ。ヴィーラ」
リアンの最後の告白。
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