誑かした世界に終わりを告げて

山永

改革者の行動

ベレミア王国には闇があった。
貧困街という闇は、長い歴史をもつベレミア王国と共に大きくなっていた。
最早収拾不可能だと思われていたその闇は、二人の子供の登場で幕を閉じた。




「リアンにおねがいしたいことがあるの」


ヴィヴィとリアンが出逢ってから数日たった頃のことである。
ヴィヴィは突如提案してきたのだ。
そういったヴィヴィの顔は真剣そのもので、リアンにも大事な話なのだと分かった。


ヴィヴィの提案は至極簡単だった。
子供たちで自分の住処の近くのゴミ拾いをする。
それだけ。


リアンの呼びかけで子供たちはゴミ拾いをするようになった。
最初は嫌々やっていた子供は、ヴィヴィと少し話すと率先してゴミを拾うようになる。
ヴィヴィになにを話したのかと聞くと、少しリアンについて聞いただけだと応える。
勿論、ゴミ拾いはヴィヴィも率先してやっていた。ヴィヴィはリアンの住処を重点的に、やる気のない子供のところへ出向いては一緒にやるのが、常だった。


そんな子供たちのゴミ拾いをみた大人たちは最初、無駄だと罵っていた。
しかし、毎日のようにゴミ拾いをする子供たちに都合の良いと思った大人は、賃金をやるから自分のところも、と依頼するようになった。
その依頼はヴィヴィがリアンに人間関係を聞き、問題ないと思った子供にお願いする。
そんなことを続けていると、いつの間にかゴミ拾いに大人たちまで参加し始めた。


次にヴィヴィは、大人たちにお願いして商いをしている客寄せに子供たちを使ってもらえないか、とお願いするようになった。
賃金は少しでいい。他は子供たちに手を出さなければ何でも、と頭を下げたのだ。
ゴミ拾いをするようになった大人たちを重点にお願いしていたので、快く承諾する者が多数だった。
そして、子供たちに約束ごとを取り付け、仕事場に送る。
約束ごとには、仕事の報告をヴィヴィに、言いづらいことはリアンに言う。体調の悪いときは無理をしない。賃金は自分のもの、他の人には賃金の額を言わない、など。


約束はたまに破られるが、それでも成果がでると子供たちは嬉々として報告をくれるようになった。


勿論、ぽっと出のヴィヴィに反感をもつ子供たちはいた。
筆頭はリアンの側にいつもいたクルト。
いきなり現れたヴィヴィの言うことなど聞かないと、ゴミ拾いを断ったのだ。
ヴィヴィはそんなクルトに、あるお願いをした。


「ゴミ拾いのリーダーになってほしい」


実質的なリーダーはリアンだが、ゴミ拾いの総指揮をクルトに任せた。
子供とは単純なもので、リーダーになれると分かったクルトは率先してゴミ拾いの指揮を執るようになった。
元々仕切りたがりの性格なのも功を奏したのだろう。


次に反感を持っていた、女のリーダー的存在のマリアナだ。
ゴミ拾いに嫌々ながらも参加していたマリアナは、クルトが仕切り始めたことでヴィヴィに反感をもった。
突然ヴィヴィに近づいてきたマリアナは、何も言わずヴィヴィに平手打ちをした。
これで懲りるだろうと思っての行動だったのだが、ヴィヴィは泣き出しもせず、マリアナに派遣のリアンの手伝いをお願いしたのだ。
リアンが好きだったマリアナは頬を染めながら承諾してくれた。


反感の大元を取り除いたヴィヴィは、次に子供たちの行動に参加してくれている気の良い大人たちに提案を持ちかけた。
手先の器用な者が作った作品を貧困街で売ってくれないか、と。
手先の器用な者には子供たちの作品もある。他にも、貧困街の女性が趣味で作った作品もある。
その趣味の作品を集めるから、売ってほしい。報酬は半々でどうだろう。数を売ればある程度のお金になる。
そう持ちかけ、大人たちに物を押し付けた。


最初は貧困街の入り口ということで、売れ行きは悪かったが、毎日居れば物好きの客が物を買い、物がよければ噂は広まる。
いつしか、商いの露店は店に変わり、売れ行きも良くなった。


コツコツ、コツコツとヴィヴィは周りを説得した。
リアンには組織化され始めた組織のリーダーを頼み、子供たちや参加し始めた大人たちの精神的支柱となってもらった。


派遣が貧困街だけでなく、近くの町からも呼ばれるようになると、ヴィヴィだけでは報告が間に合わない。
そこで、ヴィヴィはニコラとニクラスという二人の男女の双子に報告の分担を頼んだ。
双子は大人しい性格だが、しっかりしている。
周りからの信頼も厚く、報告係には最適だった。


その他にも、会計をしっかりするためにイルヤナという少年に算術を教え、会計の総括をお願いした。
イルヤナは頭の回転が速く、あっという間に算術を覚え、気づけばヴィヴィの右腕のような存在になっていた。






ヴィヴィが初めて現れてから既に13年。
少年、少女たちは大人に成長した。


「もう私がいなくても、町は回ると思うわね」


「おいおい、改革者筆頭がなに言ってるんだよ」


活気づいた町を眺めながら、呟くヴィヴィ。
それに返すのはクルト。


リアンが死んでしまってからも改革は進み、リアヴィの町と名前が付いた。
その町の名前にもなったヴィヴィの発言にクルトはぎょっとした。


彼らが居るのリアンの死後、集会場として使われているリアンの住処。


「でも、事実じゃない?」


「そうだとしても、俺らの礎はお前らだ。そういう発言はやめてくれよ」


ヴィヴィの悪びれない態度に怒気を表すクルト。
野性味のある精悍な顔立ちには迫力がある。


「そうよ、いきなり何言ってるのよ!」


同じ住処にいたマリアナも同じように声を上げる。
気の強そうな顔立ちの彼女の顔は一層強さを増している。


「いきなりじゃないわ。前から思っていたことよ」


「それでも、その発言はいただけません」


敬語で話すのはイルヤナだ。
普段温和な顔は、こわばっている。


「そうだよ、いきなりどうしたの?」


ニクラスの優しさと心配のこもった声。
ニコラも心配そうにヴィヴィを見ている。
普段無表情な双子だが、ヴィヴィの発言は心配になるものだったようだ。


「なにもないわよ」


あまりに周りから反応があったため、ヴィヴィは苦笑する。
周りの心配な表情にヴィヴィは今は、と付け足すのをやめた。


13年で結束の固くなったこの5人をこれ以上心配させるのは本意ではないと思ったのだ。
その後、リアヴィの町について語り合い、ヴィヴィはリアヴィの町を後にした。




その会話をしたのが、ヴィヴィ基ヴィーラが失踪する少し前のこと。



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