誑かした世界に終わりを告げて

山永

02



選考会は教会前の広場で行われる。
神官が候補者たちを一人ずつ選考人の前まで伴い、候補者たちは選考人の前で魔力測定器に魔力を注ぎこむ。
そして神官と選考人が魔力量の詐欺がないか、魔力量はどれほどかを測定し神子を決める。


選考人は候補者が薬を使い、推薦前より魔力を増幅させていないかを魔力探知で調べるのが主な仕事だ。
今回の候補者は6人。約一日魔力探知を真剣に発動させないといけない。


魔力量が少ないのでそれだけ疲れてしまうのに、真剣にやるとなるといつもの気配だけではなく感情まで読めてしまう。
前世の職業の名残で目を見ればなんとなくの感情は読めるが、真剣のときはなんとなくではなくはっきりと分かる。
それも対象者どころか周りの人の感情まで読めてしまうのだ。


実に気が滅入る。


周り、特に今日参加している父、レイノは勿論従者としているリアン、王宮ということで国王陛下と殿下の感情はあまり読みたくない。
親しい人ほど感情を読みたくないとは…私も随分甘くなった。


しかし、選考人をする以上手抜きはしたくないので、全力でやらせてもらう。


感情が読めてしまったらそれをネタに存分に弄らせてもらおう。主に国王陛下を。




神官に案内され、広場に来れば見物人の多くは用意された席に座っていた。
その特等席に父とレイノ、後ろにリアンを見つけた。その後ろに公爵家とお近づきになりたい貴族が取り巻いている。
取り巻きの中にエリオ伯爵を見つけ、ゆるりと口角が上がってしまった。
調子の良い人間を絵に描いたような人だ。本当に面白い。


余所見をしながらも選考人の席に案内され、着席する。
着席すると神官が下がり、司会の神官が軽く資料をチェックし、口を開いた。


「それでは只今より、神子様の選考会をさせて頂きます。御立ちの方はご着席願います」


取り巻きしていた人がすごすごと己の席に戻る。
全員が座ったことを確認すると神官は流れを軽く説明し、国王陛下の挨拶などを済ませていく。


国王陛下が挨拶を済ませ、席に戻る途中目が合ったが、実に憎たらしい顔でこちらを見られた。
軽くムカついたので、対象の次に感情を読むのは国王陛下にしよう。
そう決意していると、第一の候補者が神官に連れられてきた。


さて、仕事の時間だ。
候補者を見つめ一度目を瞑り、小出しにしていた魔力探知を本格的に発動させる。
ゆっくりと瞼を上げると視界に様々な色が映る。この色が俗に言う人のオーラというやつなのだろう。


一番最初に目に入った候補者は緊張している。オーラがゆらゆら揺れているのがその証拠だ。
それを懸命に抑えようとしているのが手に取るように分かる。
性格は赤い熱烈なオーラから我が強いタイプだろう。
魔力もとても大きいが殿下やレイノほどの多さはない。S+でも低いほうのランクだろう。
そう思うが、先に配られた候補者の選考に関する資料に記入するのは不正を疑われてしまうので、候補者が魔力測定器に魔力を注ぐの待つ。


候補者は選考人が座る席の中央に来ると、神官に説明をされながらオーラを先ほどより揺らし、魔力測定器に魔力を注ぎこんでいく。


魔力測定器に魔力を注ぐと魔力量が分かるとは他の選考人たちの言葉だ。
どうやら普段ではなんとなく多いや、少ない程度が限界なのだといっていた。
しかし、欠席した老人は見ただけで分かるという。適正の強い者は見ただけで分かると。
適正が強く出るものが少ないのが魔力探知のプロフェッショナルが少ない原因だとも言っていた。


私はどうやら適正が強いというのが今回分かった大きな事だな、と考えていると候補者が魔力測定器を置く。
これが魔力測定が終わったことの合図だ。


私はゆっくりペンを持ち、不正の有無や魔力量の多さを記載していく。
その間に候補者は控え室に戻され、次の候補者を神官が連れてくる。


新たな候補者は先ほどの候補者より少し魔力が多い程度と分かった私は、先ほどより候補者より私に意識を向けている5つの気配にため息を心の中で付いた。


リアンはまぁ良いとして、神聖な儀式の神子を決めるのに集中しなくてどうする、国の重鎮共。
未来の重鎮共も。


もう一度心の中で大きくため息を吐く。


次も次も候補者は殿下やレイノほどの魔力はなく、ふっと先ほど廊下ですれ違ったかわいらしい女性を思い出した。
そういえば大きな魔力を持っていたな。ここまで登場してこないとなると、最後の二人に居るのかも知れない。


4人目の候補者が魔力測定器を置いたところで、執筆を始めながらそんなことを思う。


そして、案の定5人目で先ほど廊下ですれ違った女性が出てきた。
容姿の端麗さから一瞬会場がざわめく。


それ程その女性は可憐で可愛らしかった。
大きな目が特徴だが、小顔で鼻も口も小さい。その小ささがより一層目を協調しているのだろう。
愛らしい淡いピンクの髪と睫に彩られた黄色とも緑とも言える不思議な色の瞳。
腰まである髪は緩くウェーブがかかっており、容姿をより引き立たせている。
年齢は私と同じ18歳位だろう。その幼さと成人の不安定さが奇跡的だ。


まさに神の使い。誰かがそう言った。


会場にも納得の空気が流れるが、私は彼女から醸し出されるオーラに納得できない。


恐らくどころか彼女は性格が悪い。
周りの反応に当たり前ように受け、心の中で不敵に笑っているのだ。
「当たり前でしょう」という声さえも聞こえてきそうな程。
これを性格は良いという人に出逢ってみたいな。


オーラも見た目の可憐さとはかけ離れ、淀みを持っている。
仄かにピンク色なのを見ると異性が好きなのだろう。今も国王陛下と殿下をチラチラと伺っている気配がする。
そのピンクも黒く淀んでいて仄かに分かる程度だが。


彼女が神子確定か、とため息が出てしまう。
今日は心の中とはいえ、ため息の良く出る一日だ。



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