誑かした世界に終わりを告げて

山永

01



ヴィーラ・ロズベルク
現在6歳。腰まである癖の無い黒髪に釣り気味の目に青い瞳。
気が強そうとも怜悧とも取れる中の上の容姿。


それが今世の私だ。
前世は詐欺師なんてものが職業だったけど、なぜか転生。


そんな私の目下の悩みは父。


最近の父は言動がおかしい。いや、いつも通り冷たい印象を与える素っ気無い言動なんだけど!


私の今世の父リクハルド・ロズベルクは公爵家第一位のロズベルク家現当主で我がベレミア王国の麗しの若き宰相様。
麗しとはまさにそのまま。父はとんでもない美形だ。
癖のない艶やかな銀糸を後ろに流し、整えられた眉に通った鼻筋、その中でも一際目を引く冷然とも取れるつり上がり気味な鋭い眼に輝くアクアブルー。
表情もないので精巧な人形の様。とても2児の父で30代とは思えない。
常に冷静沈着で言動も冗談とは無縁の人だ。


そんな人が、ここ最近私のことを「黒いカナリア」なんて呼び始めたのだ。
最初に呼ばれたときは目が点になった。
あまり表情を崩すことのない私を見て満足そうに微笑む姿にまた点になったが。
普段仕事に忠実で、感情を表さない使用人たちも驚愕していた。父の幼い頃から使えてる執事長なんて口まであけていたのだ。
唯一驚かなかったのはまだ状況を理解出来なかった4歳の弟、レイノだけだった。


冗談を言わない人の冗談がここまで困惑を招くなんて、前世でも知らなかった。


その時は驚愕のあまり、理由を聞きそびれてしまったが二、三日後、書斎に赴いた時再び呼ばれた。
今度は最初ほどの驚きはなかったが、やはり慣れない。
一考した後覚悟を決めて理由を尋ねてみる事にした。


「お父さま、なぜわたしをくろいカナリアとおよびになるのですか?」


「お前はよく鳴くからな」


簡潔すぎて分からない。


「なく、ですか」


「あぁ、書斎に来て良く鳴いているだろう。使用人に対してもレイノに対してもよく鳴くと聞く。
最初は狐とも例えたがな、どうにもお前の鳴き声は心地いい。だからカナリアだ」


若干変態くさい発言とは思っていない、絶対に。
しかしなるほど、家に帰ると狐がいるとは昔言われた言葉だ。
その時は褒め言葉だと受け取ったが、まさかこんな化け方をするとは。
意外とポエマーな理由に気恥ずかしくなる。


「なんだ、気に入らないのか?」


「いえ、あまりにとうとつによばれたのでりゆうがきになっただけですわ」


「そうか、ならもう寝ろ」


理由も知れたし、その日は早々に退室をした。


それからたまに私のことを黒いカナリアと呼んでいる。






***


さて、父の面白エピソードはここまでにして今世の世界について語ろうと思う。


私が転生した世界には前の世界より断然少ないが大小様々な国がある。
しかし、共通して魔法という概念が存在する。


そう、魔法が存在するのだ。


どの国にも魔法協会という協会の設立が義務づけられ管理されている。
魔力をもった動物はいるが凶暴化は少なく、魔王は存在していない。
東洋のような文化を有する国はなく、西洋世界で纏めらている。
宗教も一つしかなく、魔法協会と宗教教会は一緒。
その理由として魔法は神からの恩恵という考えかららしい。


火、水、地、無の四つの属性が基本となり、人々の生活を支えている。
魔力を持たず、生まれてくる子供は今のところ例が無いらしい。


私の生まれたベレミア王国は世界で最も古く、魔力の多い人間が生まれやすい国で、他の国より魔法制度がしっかりしているのが特徴だ。


そしてこの国の大きな特徴は王族と三大公爵家が特殊な魔法を有していること。
王族は光の魔法を、三大公爵家には氷、風、雷をそれぞれの家で直系のみが受け継いでいる。
我がロズベルク家は氷を受け継いでいる。


王族は光の魔法を操れ、公爵家も特殊な魔法を操れることから、ベレミア王国は世界のトップに君臨している。






そんな公爵家の長女に生まれながら、私の魔力量は少ない。


魔力は[無・D・C・B・A・A+・S・S+]でクラス分けされている。公爵家と王族のみ特殊魔法からS++というクラスがあるが。
無というのは魔力暴走などが原因で魔力が枯渇するとこのクラスになる。


魔力は見えない器官で形成されているというのが一般的な考えで生まれつき最大量が決まっている。
減ることはあっても増えることはない。


魔力が回復する前に一定以上の魔力を使うと最大量が減ることがあるらしい。
しかし、最大量が減るだとか、ましてや魔力無になるという事例自体本当にごく稀だ。


ベレミア王国の貴族は最低A+~が当たり前で平民でもBクラスが平均である。


そんな私はAクラス。
貴族でも魔力が無い部類だ。


一応氷魔法の適正はあるので、公爵家の人間として認められてはいるが容姿も魔力もS++とS+の父から程遠いので母の不貞が疑われた位。


氷魔法などの特殊魔法は莫大な魔力を必要とする。私が使えば即効バテる。
使うのは精々夏場の暑いときにクーラー代わりとして使うだけだ。父に使っているところを見られた時は「能力の無駄遣いだな」と言われ、呆れられた。




そんな私の得意とするのは無属性の魔法。特に緻密さを要する魔力探知。
一般向けはしないが、極めれば脅威となる。人は誰しも魔力をもっているので魔力の気配=人の気配という式ができるからだ。諜報や暗殺なんかの人間には羨ましがられる能力。
魔力の動きが分かれば人の感情も大方分かる、なんとも私向きの魔法なのだ。


前世での手先の器用さも相まって緻密な魔法操作の筋はいい。
緻密な魔法ほど魔力を使う量が少ないのが嬉しいところだ。


おかげで魔力が少なくてもそこらの無駄に魔力を喰う大技など怖くない。
S++なんて化け物染みた魔力を有する弟レイノの攻撃もかわせるし、たまにだが勝てもするのだ。
その点は父にも魔法の先生にも不思議がられている。




レイノは御年4歳になる私のかわいい弟だ。
容姿は父をそのまま子供にした様で、父の幼少期を知る執事長などは懐かしむ様な目で見ているときがある。
つまり、現時点でもとんでもない美少年が将来はもっととんでもない美形になるのが約束されているのだ。恐ろしい。
魔力傾向も父に似ていて、氷魔法を4歳にして操り、他の魔法もそつなくこなす。
既に神童として持て囃されている。


そんなレイノに今現在勝てているのは作戦勝ちだろう。
いくら神童と謳われようと所詮4歳児。思考など私からしてみれば分かり易過ぎて逆に裏を探ってしまうくらいだ。
挑発にも簡単にのってしまうのでもう少し狡賢さを学んでもらおう。





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