言葉を言葉にしたい

黒虱十航

いまだ決まらないその先~彼女に捧げる10年間~

俺達は、トロフィーを受け取り学校に帰った。
ただバスの中では、俺の話題で持ちきりで
正直驚いた。
「なあ転校って本当なのか?」
岩崎が聞いてくる。俺は、ほほを掻きながら答える。
「ま、まあな。両親が離婚したんだ。
んで俺は、親戚に引き取られることになって。
だから、転校することになっちゃった」
俺は、笑顔を保つ。
しかし本当は、泣きたい。もっと皆といたい。
もっともっと夏花と・・・・
でも俺が泣いたらだめなんだ。
だってせっかく夏花の言葉を歌にして
そのうたが評価されたんだ。
笑顔でいなきゃだめなんだ。
最後まで笑顔じゃなきゃ。
こうして俺達の合唱大会は、幕を閉じた。


学校には、たくさんの出迎えの人がいた。
でも私は、まったく喜べない。
笑顔でいられない。いまだ涙が止まらない。
目を一生懸命こする。涙を流さないように。
私たちは、教室に一度戻り解散した。
私は、一人でさっさと帰る。
1ヶ月ほどで私は友達も増えたし呪いも改善の一途をたどっている。
でも今日は、一人で居たかった。
だって私は・・・・・
家に帰ると私は、スマートフォンを出した。
吉川とのメール履歴を見る。
吉川からメールが来ている様子はない。
「はあ・・・」
ため息をつく。吉川のこと好きではなかった。
心の中が覗かれてる気がして怖かったし
なんとなく一緒にいると苦しくなった。
特に最近は。胸の奥がずきずきする。
しゃべってないのに激痛が走る。
「おかしいな・・・しゃべって・・・ないのにな・・・
呪いがなんで?・・・・」
私はつぶやく。無意識に吉川に助けのメールを送る。
なんで?全然消えない。苦しくなる一方だ。
「なんで?なんでなの!我慢したのに・・・
出来るだけしゃべらないようになのになんで・・・・」


帰り道の途中。夏花からメールが来る。
「「助けて・・痛い」」
俺はこのメールから悟る。
何らかのことで呪いが発生したと。
だが一人でいるときになぜ?
俺は心配になって自転車で夏花の家に行く。
10分もせずに家に着いた。
急いでドアに向かう。どうやらあいているようだ。
俺は、すぐに家の中に入り靴を脱ぎ捨て
夏花の部屋を探す。
「どこだ夏花?」
俺は叫ぶ。すると1番奥の部屋から音がした。


「どこだ夏花?」
吉川が言うのが聞こえた。
私は、力を振り絞って言おうとする。
しかし力は残っておらずベッドの下にばたっと倒れた。


音が下部屋に入るとそこには夏花がいた。だが倒れていた。
しかも苦しそうに。
「困るんだよね。せっかくしゃべらないようにするかわりに
 あの子の魂をもらうはずだったのに。」
そういった悪魔の声を思い出す。
魂をもらう?もし、もしも俺の今日の発言において彼女が
しゃべりたくないと思ったら?
もしも今日の結果に満足してしゃべる必要性を彼女が失っていたら
だとすれば魂は悪魔に売られてしまうのだ。
そんな・・・・そんな・・・・
俺が無駄なことを言ったせいで・・・
また・・・また大事な人を・・・
悔し涙も出ない。
「夏花そんなのなしだぜ・・・
俺がこれから10年間で何をやるのか最後まで見ててくれよ」
俺が叫ぶ。そこに悪魔が現れた。
「やあ。」
悪魔が言った。ふと彼の言葉を思い出す。
「僕は君にも呪いをかけたんだよ。
 二重人格になる呪いって言うか。
もし君が本当の言葉を言って傷つくようなら
 もう一つの人格が現れるて言う呪いをね」
俺は、十分傷ついた。でも呪いは発揮されない。
つまり俺のこの言葉は・・・この言葉でさえ
偽りの・・・虚飾だというのか。
「おいそこの悪魔。
俺の魂をやるから夏花の魂は、返してくれ」
すると悪魔は微笑む。
「嫌だね。だって魂をあげるからなんて奴の魂は欲しくないんだ。
もがき苦しむ魂が欲しいんだ」
悪魔が言う。俺は手をぎゅっと握る。
こいつ楽しんでいる・・・
こいつ・・・・・・・・・・
「わたーしはゆめをみるー。わたしだけのきょーくでー
いつか、白馬のおうじさまと一晩中おどるたーめにー
 わたーしはうたをつくるーいつーかおどるためにー
 きっと白馬のおうじさまが目の前にあらわれるー
 わたーしは歌を歌うー。ゆめーを与えるためにー
 ゆめをみながらうたーうの希望を与えるためにー
 けれどなぜかおもいつかないー白馬のーおうじーさまはー
 どこにーいるのーみつからないのよー
絶望のーなかーでわたーしはであった
 ほんとうのーはくーばのおうじさまーに
 きらめくその時
かがやくじかーんゆめのようなひととーき
 うたはできまーしたー
 みんなーのまえーでうたーうのーまほーうのうたーを
 みんなーにゆめーをみせーてかがやくえーがおー
 けれーどもわたーしはおひめさまーにはなれーない
 はくーばのおうじさまとーー
 うたっておどることはできないー
 きめーたのーわたーしはー
 こくばばらのーとーげでー
 いきーをひきとるーくるしみたくーーないーーからーーーーーー」
いつの間にか夏花が歌っていた。
俺は、ただ涙を流す。
悪魔も驚いている様子だった。
「なぜなぜ歌えるんだ。そんな体力ないはず・・」
悪魔がつぶやく。それに夏花は答える。
「わ、私はここで死ぬわけには行かないから。」
俺は、息を呑んでいただけだった。
なんという無力感。
「吉川君ありがとう。」
俺は、夏花の言葉に答える。
「あ、ああ」
すると夏花は、笑みを浮かべる。
「もう大丈夫だから。本当にありがとう
そしてさようなら」
そっと言う夏花に向かって俺も言う。
「あ、ああ。さ、さような・・ら・・」
涙があふれるが俺は笑顔で立ち去った。


ロシア語のさようならである
「ダスヴィダーニャ」は、さようならだけでなく
また会おうという意味もあるらしい。
つまりさようならとまた会おうとは、紙一重なのだ。
10年後彼女が約束の場所に来るかは分からない。
俺は、言葉を言葉に出来ただろうか?
10年後までには出来るようにしておこう






~皆言葉を使うけど皆言葉をつかっていない
        でもいいんだゆっくりでも本当の言葉に出来ればそれで
                 だって最初から本当の言葉を口に出来る人なんかいないから~

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品