言葉を言葉にしたい

黒虱十航

これからもずっと~約束~

あれからクラス総動員で練習をしてついに本番になった。
会場にはバスで行く。
クラス中が緊張している様子だ。
会場に着く。皆緊張のあまりしゃべる余裕もないようだ。
「これから第89回東京都合唱大会を開催します。
では、まず1校目の梅川高校の皆さんお願いします。」
そしてどんどんと俺たちの番が近づく。
しばらく経つ。38番目の高校が終わる。
ついに俺たちの番が来る。
これまでにオリジナルきょくを使った学校はない。
それは当然だ。これまでルール上オリジナル曲OKとしているが
88回ともどこの高校もオリジナル曲なんて出してない。
俺たちは、舞台に向かった。
俺は、舞台につきさらに緊張している皆に気づく。
俺はピアノの椅子から立ち皆に話す。
普通ここで話すような高校無いのだが別にルールに反してるわけでもない。
「ほら、皆。笑顔だぜ。顔が引きつってたら本当の言葉なんて伝えられないだろ。」
渇?というよりは応援かな。
俺は、笑顔で言った。皆笑顔で返してくれた。
俺はゆっくり伴奏を始めた。夏花だけじゃなくて皆すごく思いをこめて歌っていた。
「わたーしはゆめをみるー。わたしだけのきょーくでー
 いつか、白馬のおうじさまと一晩中おどるたーめにー
 わたーしはうたをつくるーいつーかおどるためにー
 きっと白馬のおうじさまが目の前にあらわれるー
 わたーしは歌を歌うー。ゆめーを与えるためにー
 ゆめをみながらうたーうの希望を与えるためにー
 けれどなぜかおもいつかないー白馬のーおうじーさまはー
 どこにーいるのーみつからないのよー
絶望のーなかーでわたーしはであった
 ほんとうのーはくーばのおうじさまーに
 きらめくその時
かがやくじかーんゆめのようなひととーき
 うたはできまーしたー
 みんなーのまえーでうたーうのーまほーうのうたーを
 みんなーにゆめーをみせーてかがやくえーがおー
 けれーどもわたーしはおひめさまーにはなれーない
 はくーばのおうじさまとーー
 うたっておどることはできないー
 きめーたのーわたーしはー
 こくばばらのーとーげでー
 いきーをひきとるーくるしみたくーーないーーからーーーーーー」
だんだん終わりに近づく。
そして夏花のソロのシーンだ。
俺は、打ち合わせどおりの曲を演奏した。
「わたしのおうじーさまー
あなたがすきだからーだからくるしーんでも
こいをしていーたい
わたしのおうじーさまー
あなたがすきだとつたえられないわたしはのろーわれているからー
でもーあなたとーいっしょーにいるとー
できーるきがーして ついはなしてーしまうー。
きーずつけてしまーうと、わかっているのにー
きらわれてもいいーからはなしたいー
ほんとうのーことばをくちにしーたい
おーひめさまになれなくてもーずっとそばにいたーいからー
しゃべらないーくらいーわたしのー
ゆめをめざしてくーれーたーあなたにーあいたい
はくばのおーうじーさまー」
大粒の涙を夏花は流していた。
なぜだか苦しんでいるような
そしてすがすがしい顔で泣いていた。
観客も審査員も大きな大きな拍手をした。
~よかった夏花の言葉を伝えられた。これでもう皆と・・・・~
俺たちは、席に戻った。
夏花は、まだ泣いていた。




しばらく経ち結果発表が始まった。
有名な学園ものの小説を書く小説家秋原宏樹あきはらひろき
舞台に出た。彼はこの大会の主催者であり審査委員長だ。
「今年も皆さんいい歌でした。
毎年僅差で勝敗を決めていた今大会ですがやはり今年も僅差でした。
ですが歌唱力という点より感情についてを重視すると
圧倒的な高校が1校ありました。
彼らは、きっとここにいる皆さんの中で1番今大会に対する思いが強いのでしょう。
そしてクラス全員が分かり合っています。
そこで彼らに優勝を捧げたいと思います。火比谷高校の皆さん舞台へどうぞ」
俺達は舞台に向かって歩き出した。
舞台に着くと秋原さんが言う。
「さてとどなたかにスピーチをお願いしましょうか
量は問いません。あなた方の中で言いたい方いますか」
クラス中が俺を見る。俺が恐れていた
軽蔑の目でなく仲間として応援しているそんな目で。
夏花も見ていた。俺は、皆にうなずき手を挙げる。
「そうですかではあなたお願いします。」
俺は、マイクを受け取り話す。
「えっと何と言うかこんなに立派な賞をいただけて光栄です。
でも俺何にも役に立ってなくて。
皆で嘘つかないで行こうって話してたのに
言ってない事もあるし。
でもそんな俺だからこそ言いたいことを言います。
まず今回のうたの歌詞を作ったのは夏花心って言う子です。
そのこは、小さいときにトラウマがあってしゃべれなくなったんです。
しゃべると激痛が走るような。
でも今日のために1杯話してつらかったと思います。
でも今日だっていままでだって弱音も吐かずに。
なので皆頑張ったので俺もこういう場を頂いたので
いま皆に言いたいことを言おうと思います。
言ってもいいですかね?」
すると秋原さんが言う。
「もちろん迷ってたら失っちゃうと思ったから今言おうとしたんでしょ
だったら迷わず全部言っちゃいなよ失ったら取り返せないんだから」
その言葉に俺は決意する。息を吸い込み話す。
「えっと皆にいいたいことがあります。
それと夏花にも言いたいことが一つ。
まず皆に。俺、明日からこのクラスにいないんだ。
転校しなきゃならないんだ。だからごめん皆とこれからも一緒にいられない。
そして夏花。こんなところで言われたら嫌かもしれないけど言う。
俺お前のことが好きだ。ずっと一緒にいたい。皆のこともだけど
夏花にはそれ以上の思いを持ってる。
上手く言えないけれど、えっとつまり俺は、夏花のことが
好きだ。友達としても人としても女の子としても。
だから10年後の10月19日俺がもしこの世界を面白くするようなことをしてたら
駅前の広場に来てくれないか。」
クラス中が驚きを見せ皆が大粒の涙を流していた。
夏花は、特に大粒の涙をぽろぽろと流し崩れていた。





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