言葉を言葉にしたい

黒虱十航

傷つけているという恐怖

しばらく歩くと質素な家があった。
「「ここです。」」
夏花からメールが来た。
確かに質素であるがなんだか落ち着く。
夏花が扉を開けた。
「えっとお邪魔します。」
俺は、誰も居ないのは知っているがあいさつする。
「「どこか座れそうなところに座っといてください。
まず夕飯をお作りします。」」
再びメールが来る。
「えっとそういえばここピアノある?
なきゃ別に良いんだけど。」
俺が尋ねる。するとメールが来る。
「「あ、あります。階段を上がってすぐの部屋です。」」
俺は、手を洗ってからソファーに座る。
「そっか。じゃあ後で行くか」
俺は、つぶやき周りを見る。
どうやら洋風の家具をそろえている様だ。
なんだか落ち着くのは、外見と変わらない。
安らぐ。ついつい寝てしまいたくなる位だ。
一つ一つの家具がそれぞれを引き立てあっている。
一人暮らしなのにこの様に外見に気遣っているのは
性格なのだろうか?
それとも・・・・
「あのさ、夏花っていつから一人暮らししてるの」
するとエプロンをした所であった夏花が
メールを打つ。
「「中学に入ってからです。親の仕送りを受け取って
生活してます。」」
そのメールを見てふと言葉を発する。
「親御さんは何をしてるの?」
はっと思う。また出しゃばってしまった。
余計なことを・・・・
悔いいていると頭に過去のトラウマがよぎる。


あの時も。俺が仲がよかった親友が母親をなくしたとき。
俺は・・・・・
あの時も・・・あの時も・・・・
あの時もやった。あ、あの時も同じことを。
何度悔いいても幼かった俺は、過ちを繰り返した。
また・・・・またやってしまった。
頭痛がする。胸の奥で声がする。
~またやったのかよ。まったくお前は・・・~
そんな中で何かが暴れだす。
~いいじゃないかお前のせいじゃないよ
     今までだってお前は、何にも悪くない。 
           そりゃその言葉のせいでお前の両親も親友も
                 苦しんじゃいるけどよ。それだってあいつらの心が
                          弱いからいけないんだお前のせいじゃない~
何なんだ。この声は。違う俺のせいだ。
いや俺の中にいる<誰か>のせいだ。
今回は違うけどいつもは、誰かが勝手に言ってるんだ。
心の声なんかじゃない。だって本当にそんなこと言おうとしなかったし
そもそも相手を傷つけることなんか考えない。
~誰だお前は。誰なんだ~
目の前が真っ暗になる。光に照らされ2つの道が見える。
先に見えるのは片方が地獄。
もう片方が楽園だ。しかしその両方の道が断たれる。
すると蜂のような妖精が現れる。
「君か。あの子に変なことを吹き込んだのは。」
あの子が夏花であるとするなら奴は、
夏花の言っていた妖精だ。
「困るんだよね。せっかくしゃべらないようにするかわりに
あの子の魂をもらうはずだったのに。
君が近づいたせいであの子はしゃべってもいいと思ってしまった。
これじゃ商売上がったりだよ」
妖精がいう。いや言い直そう。
悪魔が言った。悪魔の言った言葉に怒りを覚える。
「何が困るだ。しゃべることにトラウマがあったから
夏花は、しゃべりたくなかっただけだ。
それだって夏花がいけないんじゃない。
お前がかけた呪いさえなければ夏花は、
もっと早く気づいたはずだ。
お前がいけないんじゃないか」
すると悪魔は笑みを見せる。
「そう言ってもね。あの子が願ったことだし。
それにさ君がいえることじゃないんじゃない。
君のほうがしゃべってないじゃん。
もし僕があって呪いをかけていたら
大変な目にあってたよ。君に言われたくないと思うよ
あの子はさぁ。」
俺は、唇を軽くかむ。そして叫ぶ。
「そうかもな。本当の言葉を失った俺になんか言われたくもないかもな。
でも、そんな俺だからこそ大事なことに気づけたし
そんな俺だからこそ俺みたいに夏花がなって欲しくないって思う。
お前も呪いといてくれよ。
あいつの本当の言葉聞きたいからさ。」
すると悪魔は、笑みを見せる。
「ふふっ。やっぱり君は、甘い。
君覚えてないの?僕は君にも呪いをかけたんだよ。
二重人格になる呪いって言うか。
もし君が本当の言葉を言って傷つくようなら
もう一つの人格が現れるて言う呪いをね。じゃあね」
そういって悪魔は、去っていった。
そして少しすると目の前が真っ白になりソファーに横たわっていた。
「「大丈夫ですか?」」
夏花がメールを送ってくる。
「う、うん。少し眠くなっただけだから。」
適当にはぐらかす。
~もしかしたら傷つけているのかも知れない。
            俺のせいで夏花は、苦しんでいるのかも~
でもそうであっても夏花との約束は、守る。
そうしないと後で10年後20年後苦しみ続けることになるから。・・・・



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