言葉を言葉にしたい

黒虱十航

助けてという叫び後編

俺が合唱大会のリーダーになって
今まで話しもしなかった夏花に
信じられない呪いとやらを暴露され
そんなことがあった。
そして今日は、終わった。
翌日。いつもより少し早く学校に向かう。
今日は、忙しくなるのだ。
クラスに説明し、そしておそらく出るであろう
文句に対応しなきゃならない。
昨日と同じように自転車をこぐ。
少しして学校に着き足早に教室に向かう。
教室に着くと周りから反応される。
「あれ、快今日早いね。」
俺は、笑みを見せながら言う。
「まあな。ほら合唱大会のことで忙しくなりそうだからさ」
あいさつを済ませると席に座る。
少ししてチャイムがなる。
部活の朝練メンバーが戻ってくる。
そして田本先生が入ってくる。
「えっと1時限目は、ホームルームに変更するからな。
夏花、吉川頼んだぞ。」
俺と夏花は教壇に乗り話し始める。
「えっと合唱大会のことだけど、
オリジナルの曲を作ることに決定した・・じゃなくてしました。」
敬語を使うべきか非常に悩むがやはりため口で行こう。
そう一人決める。
教室は、案の定ざわつく。
「何でそんなことするんですか。
今ある曲歌ったほうがいいでしょ。
第一、今まで優勝してるんだから
変に工夫して優勝を逃すより
安全圏内でやったほうがいいでしょ。」
こういうのは、彼氏が最近出来たとか言う
蜜山 架乃みつやまかのだ。
うちの学校は、20年前からこの伝統を守っているため
これを崩すのは、確かにまずい。
「そうだよ」
そんな声が響く。
「俺さ実を言うと今さっきまでみんなとおんなじ気持ちだった。
でも今みんなの気持ち聞けて変わった。
みんなさ、つらいと思うんだ忙しいし
将来への不安とか友達関係とか
恋とか昔のトラウマとか。全部みんな感じてると思うんだ。
俺も今ここに立ってて怖いよ。
もし変なこと言ったらどうしようとか、
しくじったら嫌だなとか。
色々あるよ。心の中では助けてって叫んでるんだ。
みんなさ。そういう気持ちあると思うんだ。
そういう気持ち心の中でとどめるんじゃなくて
吐き出しちゃったほうが良いと思うんだ。
だってさ、いつもはしゃべらない夏花だって
昨日すっごいしゃべったじゃん
夏花は、しゃべると立てなくなるぐらいすごい痛みを感じる
呪いを掛けられてるんだ。
でも、俺に私の言葉を歌にしてくださいって
しっかりこころから叫んだんだ。
痛くなるのにそれでも
恐怖に勝ってこの合唱大会のためにしゃべったんだ。
だからさ俺、こんなに頑張ってる奴がいるなら
全力で応援しようって思ってた。
でも、まだ今ある歌のほうが応援になるんじゃないかって
思ってた。
でもさ、皆と舞台に立って歌うのを考えたら
今ある歌より
皆で夏花の本当の言葉を歌ったほうが
ずっと楽しいなって思った。
周りの目気にしていたら俺たち
もう一生本当の言葉口にできない気がするんだ。
だから少しでいいから力貸して欲しい。
あと1年ちょっとの高校生活でこのメンバー全員で
こいつを夏花をいっしょうけんめいやってる奴と
同じ立場に立って皆でそいつと一緒に
全力でもがいてみたい。
だから協力してくれないかな。」
俺は、心に任せて口をただひたすら動かした。
後ろを向くとぽろぽろと
大粒の涙を流す夏花と親指を立てにっこっと笑い
「よくやった」
と伝えるような目で見る田本先生がいた。
夏花は、涙をぬぐうと大きな声で話した。
「お願いです。私なんかじゃ
何もできないから皆さんのお力貸してください。
絶対絶対絶対皆さんに恥をかかせたりなんかしません。
だから私の本当の本当の言葉。
7年以上ずっとずっと話せないでいた言葉
皆さんとなら言える気がするんです。
だから一緒に歌ってください。」
痛みに耐えるように夏花は、強く踏ん張りながら言った。
夏花が倒れそうになり支える。
そこに田本先生が来て
俺の肩をポンとたたいた。
「本当は、口出さないつもりだったんだけどな。
お前らが頑張ってるのみたら燃えてきたじゃんか。
ここで黙るのは、青春に大人が口出すより
ありえないからな。」
にこっと笑い田本先生が小声で言う。
「さあこいつらは、充分叫んだ。
ここからは、お前らが答える番だぜ。
ほら同じクラスの仲間だろ。
だったらこいつらの頑張りに答えて
本当の言葉っての叫ぶのに
協力するのが絆じゃないのか。」
さらにクラス中に言う。
        ~仲間。そっか仲間だもんな。
                    仲間。俺は、皆の仲間になれてるのかな~
そんな声が胸の奥で響く。
せめて今だけは、この仕事をやりきるまでは、皆の仲間だと
錯覚していたい。もし仲間じゃなくても今だけは・・・・



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