言葉を言葉にしたい

黒虱十航

秘密の部屋

俺が手を挙げると驚きの声が漏れ出す。
頭の後ろに手を当て若干の笑みを見せる。
「よしじゃあ吉川は、放課後夏花が大丈夫そうなら二人で
教員室にきてくれ。
だめそうなら一人で良いから。
じゃあよろしくな。」
田本先生に言われた。
「うっす。
分かりました」
簡単に返事をする。
その返事をした後急に我に帰り急に恥ずかしさと
だるさが体にのしかかる。
「ああやっちまった。」
気がつくと小声でつぶやいていた。
「さあ1時限目は、地理だ。
教科書43ページを開け。」
面倒な地理も面倒がっている暇は無い。
大学受験で成功しなければ両親がうるさい。
とはいえ今日ばかりは、さすがに気恥ずかしさで
胸がいっぱいになった。
慣れている笑いとは違う。
それは、楽しさを表す偽りの笑みではなく
俺を哀れむものやあざ笑うものばかりである。
この笑みが怖いから俺は、
自分を騙してまで空気が読めて
皆になじめる強い人間になろうとしたのに。
なぜこんなことをしたのか。
~本当の自分なんて要らない
        傷つかずに済むならじぶんだって騙す。
                   だからそんな目を向けないでくれ~
そんな声が胸の中で強く叫んだ。


私のせいで誰かが無理矢理やらされちゃったかな。
問題児扱いされている自分だけにリーダーなんか
任せるわけが無い。
なので監視役を誰かがやらないといけない。
「はあ」
ため息が漏れる。
迷惑を掛けるって分かってたのに
なんで立候補なんかしちゃったの。
馬鹿馬鹿。じぶんを攻めても攻め切れない。
そんなことをしながら私は、いつもの秘密の場所に行った。
屋上の隠れ部屋だ。
鍵が落ちているのを見つけよく使っている。


「うわぁぁ」
大きくあくびをした。
「それにしてもよく立候補したねあんなめんどくさいの。」
「そうだよ。あ、でも快、リーダシップはあるからな。」
クラスメイトの中でも同中の二人が話しかけてきた。
前者の特にめんどくさがりな方が神谷 風かみやふう
俺をほめる?後者が斎藤 実さいとうみのる
二人とも俺とタイプが似ている(おそらくこいつらは、
俺のように四六時中自分を偽ることは、ないだろう。
いやもしかしたらこいつらもいや皆偽りの中で生活しているんのかも知れない)
ためよく昼食を一緒に食べる。
「でも夏花さんと一緒なら今から会いに行って
交あす流を深めるべきじゃね?」
神谷が他人事のように言う。
ま、それも一理ある。
「そうだな。じゃ行ってくるかな。」
俺は、やむなく夏花を探しに出ることにした。
医務室に行くが夏花は、居ない。
俺は、ほほを掻くと屋上を見ることにした。
おそらく昼食を食べているのだろう。
教室には、いなかったしほかのクラスに行くほど
人脈があるとも思えない。
となれば後は、屋上のみ。
屋上に向かい歩く。
すると屋上に着いたところでいつもは無いドアを見つけた。
「何だこれは」
俺は、ドアノブをつかむ。


「がちゃ。がちゃがちゃ。」
ドアのほうで音がする。
そこではっと思い出す。隠し部屋の入り口に掛かっている
カーテンを閉め忘れてしまった。
とはいえ相手は複数でもなさそうだ。
事情を説明さえ出来ればどうにかなるはずだ。
だがそれが出来ない。
そんな中いいことを思いついた。


扉は、開かない。
どうやら鍵が閉まっているようだ。
まあ良いと思い屋上のほかのところを見に行こうとする。
そのとき。扉は、
「がちゃ」
と音を立て開いた。
好奇心から入ってみると
そこに夏花が居た。両手にメモを持ち
こちらに向けている。
が、顔は真っ赤だ。
「えっとすぐに出で行きます?
いや別に出て行って欲しいわけじゃないし。
こんな場所あったっけなと思っただけだから。
それより夏花さん。
俺、合唱大会の担当になったから。
で、先生が放課後二人で教員室来いって行ってたから」
俺は、そういって外に出た。

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