言葉を言葉にしたい

黒虱十航

不思議な感じ

クラス中が感じたいやな予感は、見事に的中した。
このクラスの担任の田本 隼人たもとはやとが教室に入るなり
あいさつを済ませると話し始めた。
「よし全員居るな。じゃ、話すぞ。
今年うちのクラスは、学校対抗の合唱大会のうちの学校の代表になった。
何でその責任者兼リーダーを決める。
誰かやりたい奴居ないか?」
合唱会とは、東京都の全部の高校でそれぞれオリジナルもしくは、課題曲を歌い
評価を競うものだ。
俺たち2年は、過去に1-3がやっていてつまり1年ごとにクラス替えする今となっては、
2年連続やる奴も出てくるのだ。
受験まであと1年しかなく忙しい2年にとって面倒でしかないのだ。
「何で2年連続でうちらの学年がやらないといけないの」
もっともな意見を言うのは、一番右の列の一番後ろの女子、飛鳥だ。
彼女は、最近彼氏が出来たらしくいつも忙しそうにしている。
ほかにもぶーぶー文句を言う生徒が20人ほど居る。
後の10数人はというと3人ほど爆睡中、
五人ほど勉強、そしてあとの二人は
俺と後夏花である。
この両名は、何もせずボーとしている。
とはいえ俺は、周りとあわせようとがやがややってる感じに見せようとしている。
「あのね、文句言ったってどうにもなんないから。
これもなんかの運命だと思うんだね若者諸君。
いやこういうことがあった方がきっと青春ぽくていいじゃないか。
で、立候補する人は居ないの?」
上から目線にものを言う。
誰がそんなことやるか。
心の中でつぶやく。
そんな中驚いたことに夏花が挙手した。
そもそも話を聞いていたこと自体が驚きだがそれよりも
暗い夏花が目立つようなことをすることに気が行く。
「わたしやりたいです・・・」
まるで生まれたばかりの子馬のようにぶるぶると振るえ頼りない声が響いた。
もちろん声は、異常なほどに小さい。
だがクラス中が夏花がしゃべったことへの驚きで静まり返っている。
と、驚いたことに夏花は、ふらふらとして倒れた。


ここは・・・
目を覚ますとベッドに横たわっていた。
また調子に乗ってしまった。
何馬鹿なことを。
自分のやったことをとがめ続ける。
いつも黙っているのになんだか出来る気がしてしまった。
でも何でだろう。何で出来ると思ったんだろう?
自分に尋ねながらゆっくりと立ちまわりを見回す。
どうやら医務室のようだ。
どうやらいつも居る先生は、居ないようだ。
メモを残しさっさと立ち去ろう。そう思い
持ち歩いているメモ帳を出した。


夏花が医務室に運ばれた。とはいえ特に何もないようなので
授業が再開された。
「で、ほかに居ない?
そうだな出来れば男子。
ま、女子でも良いしだれかいない?」
~あの夏花も手を挙げたんだ。もしあいつとやったら面白いんじゃないか。
                 いやいくべきだ。あいつだって頑張ったんだから~
こころのそこでささやく声がする。
でも面倒だ。
~でももうやめたい。周りに合わせて嘘つくのを。
             もしあいつとやれば1歩先に進めるかも~
そんな声が俺に手を挙げさせた。
自分でもわかんない変な感じだ。           



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