嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

既視感

古くより『無常観』というものがある。万物は流転し、皆が必ず大人になって行く。多くのライトノベルでもそれを主軸とされている場合が多く、大抵の場合、変わるべきなのかで迷うのだ。しかしちょっと待ってほしい。そもそも誰も友達がいないぼっちは、変わっても誰にも気付かれないし気付かれないのだったらそれを変化とは言わないのではないだろうか。リア充たちは、髪を切ったくらいで数十分話す場合だってあると聞くしちょっと髪型を変えても気付けなかったら『センスがない』と無情にも言われ下手したらグループから疎外される。万物が流転するというのだとしても、真のぼっちやリア充では、変化のベクトルが違うのではないだろうか。皆違って皆よく、人類皆兄妹なのならベクトルが違っても疎外されないはずでありぼっちが疎外されないのはおかしい。つまり、ぼっちというのは、人類では、ないんじゃないだろうか。


気付いたであろうか。私も既に気付いた。ぼっちとは、疎外されてしまうわけなのだから神なのだ。やはり私こそが世界のジャスティスだったようだ……


いつも小説を書いている影響で迷ったら文字にしてみればいいのでは? などと思ってしまい与太話をパソコンで書き続けた。先ほどの黄金色のワインの香りが部屋中に残り、度数が高くは無いのに脳にアルコールが届きそうになっているのはそれほどに香りが強いからなのだろう。ほろ酔い気分が心地よくつい筆が乗ってしまい既に50枚以上文章を書き連ねてしまっていた。しかしながら結論が出ることはなくしょうがないので置いていったキングの駒をパソコンのすぐ横において頭の仲を再び整理することにした。


そもそも、である。生谷猫真という女性は、どんな人物なのであろうか。そこから考えなくてはならないと思う。初めに会った時は血流すら読み取れなかったというのにさっきは、不明確ながらも血流や心臓の動きを読み取れた。おそらくあえて隠さないことでこちらに威圧をかけてきたのだろうがあそこまでコントロールが出来るなんて尋常じゃない。尋常じゃないついでに言えばあらゆる要素で人間離れしている。テニスという肉体面においてもチェスという頭脳面においても俺を凌駕するなんて人間離れしすぎている。確かにもしかしたらその道のスペシャリストなら俺に勝てるかもしれない。けれども全ての面において、というのは人間じゃありえない。あってはならないのだ。彼女の何処か人生を悟りきっているかのような面持ちはこちらにとっては、上から見られているように感じるし容姿の幼さを引いても十分あまりが出るほどに大人びている――この表現は望ましくないと思うが――のだ。
(ホントなんなんだよ)
イライラと気持ち悪さをいっぺんに吐き出してしまいたくなるがそんな言葉を発してしまったら誰かに助けを求めているみたいで何とか声に出る前に我慢した。考えなくてはならないことが山積しているのだ。こんなところで誰かに助けを求めることなんか許されるはずが無い。


分からないものがあるときは別の視点で考えるべきだ。その考えの下に今までの俺は多くの分野を学んだしそれによって成功したことも多々ある。人の心理なんかは、心理学に長けるだけでなく多くのことを学ばなければならない、と俺は思う。故に今回も別視点で考えるべきだ。
今、分からないのは生谷猫真という人物像だ。あらかた全てのことが分かっていないと言ってもいい。町で急に寝始めたのもよく分からないしチート級のスペックも気になるところだ。だが、見るポイントをそこからずらしてみる。例えば……
『何故、俺や生谷さん、求名のような天才肌が同じ学校に通っているのか』
とか。パソコンに入力してから考え始める。この問題は些細なようで実はものすごく大きい。俺が通う学校――名を銀杏高校というが――は、本当に天才が多い。自分のことを天才だなんのと誉めそやすナルシストな訳じゃないが、それでも高スペックからして天才と呼べるはずだ。そうじゃなくてもこんなハイスペックの奴がいる高校なんて珍しい。求名だってそうだ。求名に限って言えば高校の理事長の部屋を与えられたとのことだ。確かに高校側としても優秀な生徒がいるのは喜ばしいことなのだろうが部屋を与えるというのは過度だし受験や模試の成績を見れば俺で十分だと思うはずだ。成績自体は隠しようがあるから生谷さんは、意図したものじゃないのかもしれない。それなりの進学校だし将来のことを考えたら入学してきても問題はない。しかし、だからといってこんな偶然がありうるのだろうか。『これは、さっき言ってた人に貰ったダイアより希少な宝石で作られたキングの駒。君に渡すように言われてるんだよ』と、生谷さんは確かに言った。そしてその『さっき言ってた人』というのも今は、いないらしい。その”今”というのが”この場所には”という意味なのかそれとも”現在は、存在していない”という意味なのか俺には分かりかねるがどちらにしても俺と出会うことを予期していたかのように聞こえる。
じゃあ、予期していたとして考えてみよう。もし予期していたとしてじゃあ、どうやって予期した? 俺はこの高校を自分で選択した。親に何か言われたわけでなければHPも見てはいない。影響を与えることなんてありえない。勿論、ここに引っ越してきた理由は操作することが出来るかもしれない。だが、高校に入らなくても俺はやっていけたわけでその場合、引きこもることだって十分にありえるのだ。キングの駒を渡すということがそもそもありえなくなる。ましてや、今日のような落ち着いた日がない可能性だってある。筋書き通りにいったとしても今日、俺が断ったりどこかのタイミングで逃げていればさっきのような瞬間は存在しなかっただろう。たらればに意味がないのは分かっているのだがそれでもこればっかりは何千分の一であること故に考えなければならない。


そこまで、考えが及んだところで電気が消える音がした。春が寝る時間なのだろう。天気予報じゃ今日は晴天って言ってたしおそらく月光が部屋の窓から入ってきているのだろう。もしも視力があったのならしっかりと生谷さんと目と目を合わせて分かり合うことが出来るのかもしれない。月光の光を感じ取ることだって今の俺には出来る。それだけの努力をして人間離れだってしている。それでも努力だけはどうしようもないものだってある。そのことを何千年も前から理解しているような気がして、気持ち悪くなって眠ることにした。

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