嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

キーボードを叩き過ぎていたせいでまだ、指は若干疲れている。が、それよりも今は、いろんなことを考えなくてはならなくてそんな疲れ忘れてしまった。そもそも、である。生谷さんをどうするのかという点がまず問題なのだ。勿論、今日はもう家に泊めてやるしかない。そうしないと後日何をされるか分かったもんじゃないしやむにやまれず、というやつである。だが、問題はそこじゃない。問題は、『じゃあ、その後はどうするのか』である。明日なんかは特に困る。どう困るかって我が弟子たるハチと本を選びに行くので面倒を見ていられない。流石に高校生だから1人で帰るくらいの事は、出来るだろう、しかし、この家にはか弱い妹が2人もいる。そのうち1名は、まだ歩くことも喋ることもましてや相手の顔すらろくに認識、出来ていないほど小さい。あの恐ろしさを考えると玩ばれそうで怖くて怖くてやってられない。ロリコンなわけでなければロリ婚でもないけれども実の妹が完全な危機にあるのに放置するほど愚かでもないのである。
(どうすっかな……)
口を開きはせず、外に出さないように口の中だけでそう、つぶやいた。もしも、本当に機械的に無慈悲な事を話してしまうのなら今から外に出したっていい。今日1日はただ、俺が振り回されて1日無駄にされたわけだし生谷さんを泊めてやるいわれもない。寧ろ後日なんかよりも今を大事に、というどこぞのRPGみたいな考えが湧いてきてしまう。しかし、残念な事にそれが出来ない。俺は、そこまで悪人になりきれてはいないのだ。結局、ハチの依頼の時も求名の依頼の時も俺の力を見せ付けたようなものなのだ。つまりは、自分自身の得意な分野で正面切ってぶつかっただけだ。だが、今回ばかりはそうも行かない。鹿渡と高かった時は相手もこちらも自分の得意な分野というわけではなかった。鹿渡が卓球得意なのか知らんけれど。でもまあ、そこまで得意な分野ではなくどちらの世界に踏み込んだわけでもないのだ。けれども生谷さんは、俺が得意なテニスという分野において全力でぶつかったのにもかかわらず勝てなかった。俺と生谷さんをRPGで言ってしまうならこうだ。俺は、自分の得意な属性、間合いにおいては圧倒的な能力を見せるが生谷さんはどの分野においても圧倒的な能力で他を引き離す。結論を言ってしまうと正気話は、なし。悪人になる、という新しい選択でキャラチェンする以外にはどうすることも出来ないのである。


そんなことを考えていると玄関が開く音が聞こえた。春が、コンビニにでも出かけたのだろうか。それとも母さんが気晴らしに散歩にでも出たのか。最近無茶苦茶忙しそうな父さんは、どうでもいい。ホントあんたのおかげでこっちは楽な生活出来てるから、マジ感謝してる。などと思っていたのだが騒がしい足音が聞こえるのでそうではないようだ。その足音はどうやらこの部屋に近づいて来ている。
「お兄ちゃん、さっきの人が、急に起きて外に言ったんだけど」
「――は?」
部屋の扉が開いて、瞬間的に伝えられたその言葉の意味を理解しろっていうほうがおかしい。さっきまであんだけ寝てたんだ。寝てるふりっていうのもありえるので一概には言えないがそれでも人の家に来てるって分かったら事情を聴こうとするのが普通だ。なにより生谷さんほど頭の回る人ならばあせって外に出るなんてことするはずが無い。情報収集は仕事の鉄則中の鉄則。
「今の音ってもしかして出て行った音か?」
「え? うん、そうそう。お兄ちゃん何とかしてよ」
「はぁ? 何とかするってどうするんだよ。そもそも目的はなんだよ」
「そんなの決まってるじゃん」
俺が聞くと迷うこともなく春が答えを真顔で言ってくる。
「――お兄ちゃん、このままだと捕まるよ?」
「そんなわけあるかっつうの。そもそもな、どこに捕まる要素があるんだよ」
今回の件に関しては、いや、今回の意見に関さなくても俺は捕まる要素なんて1つもない。さっき不良さんたちを追い返したのは自己防衛ってことで許されるはずだし。それに、何度も言うようだが生谷さんはああ見えて頭がいいのだ。学力的な話もそうだが何より頭が切れる。まさか通報なんてありえない。裁判沙汰になったら勝てる気がしないのも生谷さんのチート級能力のせいだ。
「でもどうしたもんか……色々事情説明しないといけないのは確かだしな」
今日のことについて色々話さなければならないのは確かだ。起きてくれたのなら好都合だし希望するのなら家まで送るくらいの事はする。勿論泊まる事を希望すればそれぐらいは、甘んじて受け入れる。こちらとしても文句が言いたいからな。
「とりあえずお前は戻れ。キッチンからへんな匂いがする。火でも使ったんだろ?」
「え? ああ、そうそう。折角のお客さんだからいいもの作ろうと思ってね。何か最近のお兄ちゃんって言い感じだしあれぐらい可愛かったら可愛いお兄ちゃんを弄ぼうともしないでしょ?」
「ああ、まあ見かけはそうだな」
実際は、無茶苦茶弄ばれている。勿論、おもちゃとしてだろうけれど。あの人が誰かに興味を持つってことは、何となく想像できるが恋愛的な意味で弄ぶ、というのはあまりにも想像しがたい部分がある。言ってしまうなら生谷さんはアイドルみたいなものなのだろう。恋愛一歩手前で多くの人と関わるが恋愛をする、ということを考える事はタブーとされ、それゆえに誰もそんなことは考えない。
「ほれ、さっさといけないと食材がだめになるぞ」
「そしたらお兄ちゃんが何とかしてくれるでしょ? ま、いいや。じゃあ私行くから」
春はそういってまた、ばたばたと大きな足音を鳴らしながら去っていった。あの感じからするに拓もやかましくなるんだろうな。俺に似たらそれはそれでまずいし。いや、俺的には問題ないと思ってるんですよ。そういうように生きてきたし。ただ、俺の人生マジ波乱万丈、超偉人的だからお兄ちゃんマジ不安何だよ。


そんな事はどうでもいいので置いておいてとりあえずどうするかを考えなくてはならない。俺は、気を取り直すために軽く自分の頬をつねって頭を搔いた。ほんのりと漂ってくる体の疲れを無視して出来るだけ早く思考を回転させた。

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