嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

本気で・・・・

手をひいてぱっぱと移動した俺たちは、既に映画館にたどり着いていた。ゴールデンウィーク初日とはいえやはり人が多く、映画館は混んでいた。想像通りだったのでいいのだがやっぱり外に出るもんじゃないと思う。
「で?なに見る?」
「・・・見たいのがあるわけじゃないんですか?」
「そだね。特に特別みたいって訳じゃないけど映画館ならあんまり喋らずに時間を潰せるから君は、喜ぶと思ったんだけどね。」
「・・・・・・・・・・そりゃども」
やっぱりこの人は苦手だ。確かに俺は、あのころ喋るのが面倒な奴と出かける時映画館に行くことを薦め、まず100%意見を通し2時間ほど潰していた。
「でもまあ、みたいものがあるわけじゃないからなぁ。じゃあカラオケは?この辺あったかなぁ・・・。私この辺来ないんだよね」
「そうなんですか?結構色々ありますし来てると思ったんですが」
「こう見えて私、ぼっちなのよ?休日は基本外に出ないしね。人が多いのも嫌だからね。」
「そうなんですか」
十中八苦この人は、計算してぼっちを演じている。きっと俺と同じ考えにたどり着きぼっちになったのだろう。しかもこの人は、俺よりもレベルが高い。俺が存在に気付いていなかったということはそれだけ存在感を隠すのが上手い、ということだ。生谷さんが言っていたとおり俺は、警戒心を隠せていない。勿論隠そうとはしているしむしろ得意な分野でもある。けれどもこの人と比べてしまうともう、どうしようもないぐらいにレベルが低い。
「じゃあ、家だとなにやってるんですか?」
「家で?うーん・・・・・踊ってるかなぁ」
「へぇ・・・・・って踊るってなんですか?」
「踊ってるの。ダンス、ダンス」
ああ、やっぱこの人は分からない。まあ、ダンスが好き、ということなんだろう。いや、よく分からないけど。てか、それって家でやる?
「後はねぇ、普通の人と同じだよ。勉強にゲーム、読書」
「なるほど」
不覚にも、生谷さんが普通過ぎることに驚いてしまった。マジで、普通じゃないと思っていたからな。でもよく考えてみるとこの人ほどの人が勉強で俺に勝ってない訳ないしそれなのに俺が知らないという事は、要するにあれだろ?”本気”を出してないんだろ?
「じゃ、どうしますか・・・・。」
一言そういうが生谷さんは、あくまで俺の意見を求めるようで俺もしょうがないので一生懸命考える。といっても高校生の好きそうな遊びなんて知るわけもないし服屋を提案したらカフェの時に怒られるだろうなぁ。まあ怒られてもいいけど。
「じゃあ・・・・・ここで色々みてから帰りますか?この間、卓球行ったんで買い物終わったら行きましょうよ」
「うむむ・・・そうだね。あ、でもその前にやっぱり映画見ていかない?」
「別にいいですけど」
俺が、脊髄反射的に返事をするとぱぱっと生谷さんはチケットを買いに行った。なんだろう。面白そうなものでも見つけたのか、それとも俺の提案がそぐわなかったのか。どちらにしたって俺もあの人に合わせるしかないんだけど。


「ほら、買ってきたよ」
生谷さんが戻ってくると俺にもチケットを渡してくれた。二人分買ってくるとか男前過ぎる。ちょっと正直言ってこの人には勝てないなと思ってしまうがそんなことはおいておいて財布からチケットの代金を出す。
「そういう所は律儀なのね」
「まあ、一応。」
「そ。じゃ、いこ」
急につまらそうに言ってから生谷さんは、進んで行った。


どうやら、その映画は、二人で見ると特別なアイテム?をもらえるらしく、そのために俺を連れてきたんじゃないかと思わなくも無かった。思わなくも無いのだが・・・・この人ならぼっちオーラを断ってしまえばすぐに男子の一人や二人、来てくれるだろう。
「好きなんですか?こういうの」
既にみて、2度目にみるとかいう人たちのひそひそ話しを聞いてラブコメの映画だという事は分かった。何でもすごい切ないらしい。まあ、俺は映像をみることなど叶わないのだがそれでも話を聞いていれば凝った映画である事はパンフレットを見なくても分かった。
「どうだろ。私的には、そうでもないかな。でも何?こういう限定アイテムとかって惹かれるじゃない?レアなものや面白いものってついつい集めたくなっちゃうのよね」
「そうなんすか・・・」
じゃあ、アイテムだけ貰って帰ってもいいんじゃないのか?と、思いはしたが俺自身そういうのは何かずるい気もしてしまう。そういう考えを持っているか分からないがいいだろう。そんなことを思っていると別の映画の予告が始まりそして本編が始まった。


「いやぁ・・・・結構よかったんじゃない?見ててイライラした部分もあったけど」
不意に見せてきた、常人なら”素顔”だと勘違いしてしまいそうな一面さえも作ってしまうあたりが本当に恐ろしく、出来れば、その冷たい声が彼女の素顔であって欲しいと祈ってしまう。さもなくば俺は、ものすごい実力差を思い知らされることになってしまう。
「さて、と。じゃあ、アクセサリー見に行こう。服はめんどくさいしいいや」
「・・・そうですか。じゃあ、アクセサリーショップに行きますか?ていっても俺は、行き着けとか無いんですけど。」
「そうだねぇ・・・。私、行きつけのお店があるから電車に乗ろ。その近くにテニスが出来るところがあるからそっちでもいい?」
「あー、別にいいですよ。卓球にこだわりがあるわけじゃないんで」
「そう。じゃあとりあえずこっち」
俺は、生谷さんに従って電車に乗った。別に逆らっても意味が無いと思ってるわけじゃない。まあ、思ってはいるけどそれだけが動機じゃない。単純に興味がわいたのだ。この、完璧超神がどれぐらい、テニスが上手いのか。卓球でもよかったがテニスのほうが俺は、得意だしいいだろう。
「ふわぁぁ・・・。眠い。ねぇ、何か面白い話、して」
急にこてんと、俺の肩に首を乗せてきた生谷さんは、耳元でささやいてきた。つい、びくんと体が震えてしまう。あ、別に如何わしい意味じゃなくて。普通に恐怖もある。でもやっぱり可愛いのだ。目で見えなくても他の要素で分かってしまう。それこそシャンプーの匂いだってこの距離なら間違えることはないし声質だって分析できそうな距離だ。
「面白い話ですか・・・」
前に先生に言われたときは嫌がったのに不思議と生谷さんに言われるとNOとは言えない。恐怖と共に降りかかってくる女性的な魅力。なんていうか獅子と猫のような差を感じてしまう。
「面白い話って言われても思いつかないですね。」
「じゃあ部活の話。」
「ぐ・・・・・・」
今日、何度目だろうか。こうやって言葉をつまらせたのは。
「守秘義務が・・・」
「そんなのあってないようなものじゃない。だって、私、なにがあったのか知ってるし」
「じゃあ何で?」
「君の口から聞きたくてね。”思いやり部”って何か面白そうじゃない?だから、そこに半強制的に入部させられた人からみたらどうなのかと思って」
ちょっと、本気でこの人は、怖いと思った。



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