嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

生谷猫真

放課後。ゴールデンウィークのことを話したいのかいつもよりもベチャクチャと話しているリア充は多く特に東浪見、鹿渡のグループはいつもより騒がしい。とはいえ、あいつらも毎日同じ面子で遊ぶわけは無く5月5日は俺が頼んだということもあり予定はなし、という風になっていた。流石にコミュ力が高い鹿渡だ。あれを天然でやってのけているならもうそれは人間関係の天才だし今日1日サーチした感じだと運動もかなり出来て振動とかからわかるようにかなりのイケメンだった。周りの女子から好意を貰いまくっていてかつての自分を彷彿とさせるようだったが俺と違った部分も幾つかあった。俺は自分の望んだ人に好かれる自分でいようとしているのに対して鹿渡は他人の望んだ人に好かれる自分でいようとしている。これには大きな違いが有ってむしろ似ているようで全くの別物だ。簡単に言えばあいつはキョロ充だ、ということだ。しかも無茶苦茶レベルが高い。キョロ充のくせにリア充神のように振る舞い実際それを成功させている。人に合わせ人の望むようになり、けれども人の嫌われたくないから逆らわない。まあ、それでもただのキョロ充ではない辺りが流石だ。しっかり自分の意見も通すし堂々としている。キョロ充亜種といったところか。
「ふぅ」
夕日が差し込みとても心地よい。雲のカーテンがほのかに照らす夕日を隠したり出したりしていてどこかもどかしくきもちがいい。吐息がつい口から漏れ出しそれと同時に疲れたな、という感情もどこからか湧き出した。ただのその感情には前のような面倒臭いといったものとは違う何かも混ざっているように思えた。
「師匠、お疲れですか?」
「ん?ああ、ハチ。まあちょっとな。ほら、さっき掃除したしそれ抜きにしても最近忙しかっただろ?求名を教室に来させたあととかは平和だったけど求名と北風原がすぐ喧嘩して大変だし」
「そうですね。現実的な北風原さんと逆に想像的な求名さん。あのお2人の喧嘩は師匠でもお疲れになるのですね」
「そりゃそうだ。お前も含め俺のまわりはキャラが濃すぎる」
ほんとにキャラが濃すぎて困る。なんなら俺のキャラが立たないレベルだ。これで極端にモブキャラだったらそれはそれでいけると思うんだがそういうわけでもないあたりが悲しい。
「師匠もそうですよ?それより、今日、新しいレシピでクッキーを作ってみたのですが試食のお手伝いをお願いできますか?」
「お、おう。大歓迎だ。お前は既に並の女子の数倍料理が上手くなってるしな。」
「それは師匠に教えていただけば誰でもなりますよ」
そんなたわいも無い話をしながら少しずつ意識を鹿渡たちの元に向けていた。正直言って俺に影響を受けたとかでもないのにあの技術というのはちょっと恐ろしい。
「ねぇねぇ、2人って思いやり部とかいう部活に入ってるんだよね?」
唐突にそんなことを言ってくるやからがいて俺は誰なのかと思い声の主について調べる。女子生徒の制服を着てるし上履きの色から考えても1年生である事は間違いなかった。けれど驚くことにかなり背が小さい。それこそ俺より小さい。そういうと普通に思えてしまうが小さいといってもちょっとの差、とかではないのだ。それこそ15センチぐらいだろうか?
「え、あ、まあ」
急な声だったが返事をしなければと思ってしまいへんな声を出してしまう。だがまあ、それにも事情があるわけだ。そもそも!俺が近づかれているのに気付かないというのがおかしい。いやもうそこがおかしくて他のところとか考える必要あるの?ってくらい。だがまあ、他にも考えなければならないポイントはある。俺の目に映るその人の色がにごることの無い黒だった。これが意味するものを統計的に計った事はあるのだがこの色は解読不能の色だった。みたことが無い、とかそういうことじゃなくて何の情報も無い。そういう証だった。これはスマホのネット記事でみたスーパーコンピューターでしかでなかった結果だ。そしておそらく意図的に隠してきているのだろう。血液の動きを読み取ることもスピードを読み取ることも出来ない。他のやつからどう見えるかは分からないが俺からは人形にしか見えなかった。


北風原菜月。俺は彼女を心のどこかで幽霊のような女の子だと感じていたしここまで感情を隠すのが上手な奴は俺以外にいないんじゃないかと思っていた。―――――――――しかし表れたその人は元から感情なんて無い人形のような感じだった。
「え、えっと・・・・・依頼か何かですか?」
「ううん、違う違う。ちょっと面白そうな部活だったからどういう部活なのか気になったの。学校中にすごいポスターが貼ってあるし」
「ああ、そうですか」
どうにも敬語になってしまう。本能的にこの人は俺よりも優れていると察しているのかもしくは普通に初対面だからなのか。
「じゃ、じゃあ俺たち行くんで」
とにかくやばい事だけははっきりしていた。何がやばいって色々やばい。まあ、とにかく関わらないのが吉。なのでまあ、関わらないでいることにした。


「し、師匠?」
「はぁ、はぁ。どうした?」
「あの・・・体調が優れないのでしょうか?とても苦しそうになさってるのですが」
「いや、そういうわけじゃない。ほら、あんまり部活に遅れるとまずいだろうからさっさと行こうぜ。さっきのクッキーの試食早くしたいし」
変に教室に残っていたせいで絶対勝てない隠しボスに出会ってしまったのだとそう思うことにした。そうでもしないとマジでやってられない。ほんとにあの人はやばい。
「なあ、さっきの奴知ってるか?」
「は、はい。確か生谷猫真おぶかいねこまさんだったと思います。」
「ほぅ・・・なんかそんな名前がいた気がしなくも無いな。」
実際、名前だけは学年全員覚えている俺としては言われてみればああそんな奴いるとなる。それが今回のようにやたらと名前が似ている場合は尚のことである。猫が名前につくだけでやばいだろうにそれをわざわざ名前に付けられてしまったはずだ。親御さんも代々伝わる苗字じゃないのにそんなキラキラネームをつけるのはかわいそうなんじゃないかと思う。俺もそうだけど。
「お前も気をつけろ?」
部室までの道中、夕日がちょうど翳った瞬間たまたま発したその言葉はハチに向けたものであり自分に向けたものであった。

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