嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

お前

「ほんと、すごいな」
急にそんな声がかけられた。その声は俺も聞き覚えのある声でかといって身近な声ではなかった。けれど俺のように人生を悟っていなければ出せない声だった。だからだろうか。ちょっとだけムカッとしてしまったのは。
「ん?」
つい、そのイライラを声の主に向ける為に怪訝そうな声を出してしまう。あの頃の俺ならこんな風に感情を声に出したりしなかっただろうけどまあ、あのころあのころ五月蝿いし考えるのはやめておこう。それより何でこいつが急に話しかけてきたのか。
「悪い悪い。話しかける機会が全然見つからなくて」
「ぃゃ、まあ別にいいし。」
しっかりと適切な対応をとってくるので驚いて言葉の頭が小さくなる。それにしてもこいつイケメンだな。俺とは違う。俺も男の娘な顔じゃなくてイケメンがよかった。こっちはこっちで需要あるしいいっちゃいいけど誰もショタで男の娘な主人公なんて求めてないし主人公になれないって言うのはちょっと悲しい。これならいっそ極端に不細工なほうが加工のし甲斐があった。
「で、なんだよ急に」
「ごめんって。何でそんな暗いんだよ」
「お前・・・」
こいつ、なんかうざい。社会一般的にはうざくないんだろう。別にやたらめったらしつこいわけでもKYなわけでもないし。けどなんかな、こいつ苦手だわ。
「悪かったな。これがデフォルトなんだよ」
「え?みんなの前に出る時はすっごい明るかっただろ。あのとき居たんだしさっきだってそこまで暗くはなかっただろ」
「ぐ・・・・・・」
やっぱりこいつ、苦手だ。何が苦手かっていうのを言語化できる訳じゃないけど何かきつい。こいつと一緒にいつまでも話してるのは俺の健康を考えてもよろしくない。
「そういうのいいから。何?」
「別に深い意味は無いよ。むしろさっきのだって君に話したわけじゃない。俺、お前の隣の席だからここにいたって別におかしくないだろ?」
「おかしいだろ。いつも東浪見とかその辺と話してるだろ?」
「24時間話してるほど話題もないし義務じゃないだろ?」
「そうか。」
俺はただ、そう返事して『義務だと思うけどな』といおうとして口の中だけで噛みしめた。その言葉は明らかに俺の経験からなるものであってこいつに言っても理解される事はない。
「ただ単につぶやいたってだけだから。」
「ふーん・・・」
納得したような素振りを見せるもあの言葉が明らかに俺に向けられたものでしかも、俺と同じ立場の人間が仲間を讃えるような感じにしか思えず納得しない。
「ま、別にそれならいい」
「ん・・・・・・・」
俺は、そういって会話を切り上げようとする。だが”鹿渡”にそんな気は無いようでその次の言葉をつむいでくる。あえて逃げさせまいとしているのかそれとも天然なのかそれは分からなかったけれどどっちにしたって俺からすれば睨むだけの理由になる。
「聞かないんだな。さっきの言葉の意味。」
「まーな。お前がここにいること以外には疑問に思うことはないし独り言っていうんだったら深く詮索はしない。独り言の意味を聞かれたら恥ずかしいしな」
「なるほどな。それもそうだ。でも、尊敬するよ。君の事は」
「なんだよ。俺を理解してるわけでもないのに分かったように言うな。何か、きもい。」
「そんなこと無いだろ。ま、理解してないだろうけど。でも、この間の卓球はほんとにすごかった。プロ並だっただろ。得意なのか?」
さわやかな口調。明らかに作っていると分かるんだけど北風原と違ってレベルは高い。正直俺だって見抜くのは大変なほど。こいつは、中々やる。卓球の時はこいつが分かってないかのように思っていたし完全悪みたいに思ったけど案外すごいかもしれない。思えば俺の動きに適応してくるだけの運動神経があるわけだし勉強だって分からんけどこの学校にいるんだったらそこそこ頭がいいんだろう。
「いや。卓球とかあんまりやらない。むしろスポーツ自体やらない。」
「そうなのか?それにしては体も出来てるけど」
「ま、色々あるしな」
そんなことを話しながら東浪見たち、いつも鹿渡がつるんでいるグループの奴らがこちらをみていることに気付いた。東浪見自体はちょいちょいこちらに視線を向けてきてはいるがグループ全体が向けてきているということと東浪見の視線の感じがいつもと違うことから考えて鹿渡を待っているということだろう。ならばやるべき事はただ一つ。
「お前が作ったグループなんだろ?常に会話を回すのがお前の最低限の義務だろうが。さっさと戻れ」
鹿渡にすら聞こえるか分からないような声。鹿渡がふぅ、と一息吐いて自分のグループに戻っていくのを確認して俺も安心する。
「あ、鹿渡」
だが、その瞬間。思いついたことがあって引き止める。
「ん?どうした。」
「お前、5日暇?」
「えーっと・・・暇だな。それがどうした?」
「いやちょっと出かけがてら話さねぇ?他のやつも一緒だけど全員女子だから待ち時間多いだろうし暇つぶし相手がいると助かる」
「そういうことか・・・・。そうだな。分かった。」
「じゃ、何か待ち合わせとかは北風原に聞いてくれよ。お前のメアドとか興味ないしデータ容量の無駄だから。ほら、さっさと戻れ」
「了解。じゃ、今度」
かくして鹿渡を『お出かけ』の道連れとすることに成功したのであった。正直言って鹿渡と一緒というのは嫌なんだけどまあ、待たされて一人で暇するぐらいならこいつを上手く操る為に話しておくのもありかもしれない。もうすぐふれあい会も始まるわけだしそうしたら嫌でも話すことになる。なんなら学級委員になってしまったわけだから実行委員を俺以外に転位するためにもなんとかおだてておくべきだろう。おだてるの嫌だしおだてたくないけど。まあ、後で北風原に了承を得ておかないといけないな。
「ふわぁぁ~~」
マジで5月病になってしまいそうなほどに環境が変化している。多分5月病の患者は自覚がないんだろうし自覚無く掛かってるのかもしれないな。だからちょっと化け物を押さえつけるのに苦労してるのかもしれない。あれから練習したのにな。

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