嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

なぜぞ?

少しずつ気温が高くなってきていた。今年は結構寒く4月に入っても結構辛かったのだが流石に5月に突入すると温かくなってくるものだ。教室の空気もそれに比例して暖かくなってきていた。どこか優しい空気感が漂っている理由は勿論分かっている。鹿渡と北風原の支配力の上昇が理由だろう。鹿渡は男子の支配をより強固なものにしている。流石に1ヶ月経つとすごい支配力になる。まあ、俺と同じだろう。あまり鹿渡と話した事は無いが中々強いリア充力をもっている。北風原は、といえば女子の大半を支配下に置いただけでなく男子も虜にしている。噂によると玉砕覚悟で何人かが告白したらしい。
まあ、そんな事は俺にとってどうでもいい話だ。外の景色をみると遅咲きだった桜も散っていた。風が結構強めに吹いていて窓を見ているとばたばたと音を鳴らしてゆれていた。都心部の春、というのは大抵が心地よく五月蝿いリア充どもさえいなければきっとさわやかな季節であろう。因みにさわやかというのは秋の季語なので「さわやかな季節」を春に使うのは何となく躊躇われる。リア充は、そんな日常会話の矛盾さえ気にも留めないのであろうが俺は違う。すでにリア充ライフを体験している俺は、特にリア充を恨んだりはしないけれどちょっと愚かだな、とほくそ笑むぐらいの事はする。
「ふわぁぁーーー」
外を眺めていると適温で心地よくてつい欠伸が口から漏れ出す。正直言って欠伸を人にみられるというのにはどこか抵抗があるのだがそれでもやっぱりついつい漏れ出してしまうということはある。これについては別に寝不足で欠伸した、ということではない。
「あ、あぁぁーーー」
寝不足、というわけではなくてもついつい平和な時間がこう、長く続くと伸びをしてしまう5月といえば皐月なのだがやっぱろ皐月、というと競馬の皐月賞、という印象が強くなってしまう。誰しも、8月や12月、1月を感じるのは容易くても5月を感じるのは案外難しい。そうなると5月病というのがやはり頭に浮かぶ。が、残念なことに俺は今の状況に適応してしまっている。まあ、まだゴールデンウィークに入ったわけではなく明日からやっとゴールデンウィークに入るのでまだ、5月病になるかもしれない。そうしたら少しは労わってくれるかもしれない。まあ、ハチの入れるお茶は、普通に美味しいからストレスも最小限なんですけどね。あぁ・・・でもまあゴールデンウィークのこととか考えただけで最悪な気分になった。全くなんでこんなことに・・・・。


事の起こりは4月も終わりに差し掛かった部活中である。求名はその日も校則違反なのは明らかな赤いフードのついたパーカーを着ていた。あ、俺もよく考えて気付いたんだけどレッドフードだから赤いパーカーなんだな。まあ、それはいい。北風原は、求名やハチと会話をしていて自分のクラスのことについて時折、俺にも話しかけていた。ハチは、宣言どおり紅茶やコーヒー、日本茶などを入れた棚から紅茶の茶葉を出して入れていた。その辺の器具はハチがもってきていてカップだけそれぞれもってきている。本棚の一角を改造してやったので結構便利そうに使っていた。窓から差し込む夕日が・・・なんて美しい情景があればよかったんだけど残念なことに地下だったのでそういったことはなかった。
「そうだ。2人はゴールデンウィークどうするの?」
「・・・・・・・・・」
北風原のそんな言葉が部室全体に響くも誰も答えようとはしない。何故か理由は明解だ。”2人”という指定をしたからだ。まあ、俺的には求名とハチのことを言っているんだろうと分かりはするがハチは、半分ぼっちだからそういうことを自分が聞かれるなんて思わないかもしれない。求名は、100%ぼっちなので多分思わないであろう。
「ちょ、2人とも無視~~?」
「2人って誰のことを言ってるんだよ。いや、ね。俺は分かってますよ?けど他のやつがそこまで考えが及ぶかわかんないだろ?」
「そうですね。師匠が中々お返事なさらないのでもしかしたら何か考え事をなさっているのかと思いました」
「むぅ、我もだな。我が予定を聞かれる事など無いゆえ」
「何言ってるの?ハチちゃんと蜜ちゃんに決まってるじゃん」
普段、ハチさん、と呼んでたりするところからしてもまだまだこの部室では自分を偽ってるのだと思う。まあ、それがディフォルトだろう。そもそも女子同士でちゃん付けだなんて痛々しいし何か怖い。裏の顔の存在を彷彿とさせるんだけど。
「むぅ・・・我のことだったのか?」
「私はまだ半人前なので1人にカウントされないかと思いました」
「いや、俺に予定聞くわけ無いんだし2人に決まってるだろ。北風原、俺に話しかけるときは大体俺を貶めたり弄ったりするときだからな」
「あら、よく分かってるじゃない」
まあ、俺を貶めたり弄ったりするときや2人きりの時は仮面を何重にも被ってはいない。俺には無駄だからって理由だろうけど。
「それで?予定ある?」
「我は、仕事があるからの。」
「仕事?」
「むぅ、最近は一旦休んでいるんだがの。それでも監督とかやら無いといけないことはあってな。作詞とかも依頼されるせいで休日はつぶれるのだ。」
「それが無くても一人で遊んでそうだけどな」
「無論。当然であろう?」
何か一人で遊ぶことをここまで堂々と言われてしまうと悲しくなってくる。
「ハチ、お前は?」
「私は、休日の修行や仕事です」
「お前もか?」
「はい。キララと違うアニメのキャラクターをやらせていただくことになりまして。」
「・・・ああ、思い出した。確か深夜アニメとか専門で作ってた会社が映画作るんで声優を期待の新人にしようっていうことでキャスティングしてる企画だろ?北風原も選ばれてたよな?」
「そうね。まあ、公開はまだまだ先だからアフレコも毎日じゃないし新人は結局そこまで台詞多くないけれどね。だから結構暇なのよ」
「それで、2人が空いているようだったら一緒にどっか行きたかったと?」
「そうね」
「リア充で暇な奴がいるだろ」
「馬鹿ね。ハチちゃんや蜜ちゃんと出かけたほうが楽しいじゃない。」
「ほぅ・・・・」
北風原も案外思いやり部のメンバーが気に入ってる、ということなのだろう。”俺”という存在以外だろうけどね。何かそれ酷くない?
「じゃあ、あれだ。三人でいけばいいじゃん。ハチは、あれだろ?修行が無きゃ暇な日もあるだろ?求名だって1日くらい暇な日あるだろうし」
「ですが1日休むだけでも人の能力は低下するのでは?」
「暇な日はあるが1人で居たいのだが・・・」
「・・・ハチは、あれだ。友達との外出も修行だと思え。求名はこの部に入ったんだし友達作りに否定的になるな。」
「むぅむぅ、それはおぬしもであろう?」
「いや。女子だけで出かけたほうがいいだろ?」
あれ?気を漬かって3人の仲を深めようと思ったのにやばめ?
「いえ、師匠が居てくださったほうが参考になります」
「・・まあ、そうね。あなたのセンスは相当なものだし外出の質を高めるには必要かもしれないわね。買い物とかじゃ男手が必要だし」
「え?いや嘘でしょ?」
「我は5月5日なら空いてるぞ?」
「あ、私は仕事がゴールデンウィークの初日と最終日なのであとは大丈夫です。」
「あー、じゃあ5月5日にしましょうか?詳細は後でラインで・・・」
「マジかよ・・・行きたくねぇ・・・」


と、いうことがあったのである。

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