嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

俺達は・・・・

「むぅ、当然であろう。我は紅き吸血鬼レッドフードであるぞ?」
「そうか・・・・。なら言う」
十分に息をすって溜めてそれで、部室の空気が俺の言葉をより鋭くしてくれるような空気になったその瞬間に俺は、口を開く。
「じゃあ、まずいいところ。」
人は、相手のいいところを挙げる。それはコミュニケーションとして必要なものであり褒める、おだてる、というのは大抵が権力の無いものが権力のあるものにすることである。しかしそれ以外にも用法があるのは大抵の人間が理解している。例えば権力のある人間が権力の無い人間の作業効率を上げるために褒めたりおだてたりする場合がある。だが、今回の場合は違う。闇をのぞかせてから一筋の光を見せる。それにより後から光を見せるよりも光が記憶に残りやすくなる。光を見せてからまた闇に落とし今度は深淵に突き落として出てこれなくする。それによって深淵が全て頭に残り忘れられなくなるのだ。
「全体的に景色描写は素晴らしい。その辺はやっぱり短歌を書いてるからだろうな。感情描写も結構景色に伴っていて美しい。心に結構は言ってくる感じだしやっぱり短歌を書いたりするのに向いてるだろうな」
「むぅ、ではどこがいけないのだ?」
「悪いところは結構致命的だ。」
「むぅ?なんだ」
「その前にクイズだ。ただ単に答えをやるだけじゃ変革にも教育にもつながらないからな。ハチ。お前は小説で大切な3つの要素ってなんだと思う?」
答えを教え続けるのは教育ではなく一種の作業工程でしかない。そして俺がやっているのは求名の救済とハチの教育、世界の変革だ。故に答えをあげてしまってはいけない。ヒントを与え分かるようにする。そうやって考える力を与えることこそ教育だと思う。俺の教育理念は強い姿を見せてヒントを見せて簡略化させて超えるのがあたかも楽であるかのように見せる。
「えーっとストーリー構成ときれいな日本語や分かりやすい日本語とあとは・・・アイディアですかね?あまり詳しくないのですが・・・。」
「んん・・まあ、ヒントなしで答えられただけいい。全部不正解だな。アイディアなんて必要じゃない。いまどきは時代に媚びた作品のほうが売れるしその中で如何に目に付かせるかの方が重要だしな。ストーリー構成も壊滅的過ぎなきゃいい。日本語だって極端に分かり辛かったりしなければ関係はないしな。じゃあヒント。売れて共感をもたれる小説って意味で考えてみろ」
俺がそういうとハチが「うーん・・」と唸った。
「・・・・リアリティですかね?」
「まあ、リアリティは惜しいな。後の2つは?」
「分かりません」
まあ、俺が育てたっていってもそこまで長い日数をかけたわけじゃないしな。しょうがないだろう。頑張って考えたし答えをやろう。
「登場人物の思考をどれだけ読者に似せるか、その思考にどれだけ感情、景色描写を違和感無く近づけるか、そして芯の通った人間性のある登場人物や作品にできるかどうか、だ」
自己投影をする読者というのは多くどれだけ読者に似せられるかによって共感を与えられるかどうかが決まる。かといってそこだけ読者に近づけて感情、景色描写に使う日本語が美しすぎたり汚すぎたりすると違和感が出てしまう。だが、かといって読者に従いぐにゃぐにゃと芯のなく脆くない作品だとつまらないし人の感情を動かせないから売れたとしても意味がない。人が物語を考えそれを人に読ませるというのにはその人の感情を動かしたかったり何か与えてあげたい。そういう感情があるはずだ。それは何かを伝えたい、とかそういうことの可能性もある。
「なるほ、ど・・・・・」
「だが、脚本になるとこれは違う。ミュージカルや演劇みたいな誰かが演じるものの場合どれだけ演じる側が感情を入れてそれを見る側が受け取れるか、というほうが重要になる。多分、だから脚本を書くのが上手くて小説を書くのに向いてないんだろうな。」
「むぅ・・・」
「お前は、感情描写や景色描写が美しすぎる。だから脚本向きだけど小説向きじゃない。登場人物は、読者に寄っていない。だから小説だと読んでいて人の心を動かせないけれど脚本にすると演じる側の人間が居るから美しくて伝わりやすい。心打たれる。」
「む・・・・ぅぅぅ」
悪いところを挙げる。けれども脚本家に向いているというのも事実だから織り交ぜる。求名のひざは少しだけ震えていてまるで悪いことをして怒られている子供のようなそういう感じだ。恐れ、というのとはちょっと違う。でも恐れている。何に恐れているのか分かってはいるけれどそれを隠そうとしている。だからきっと震えているのだ。震えでもしないと油断してしまって不意に零れ落ちてしまうから。その経験は確かに俺にもあった。
「まあ、そんな事は大抵の小説家が無視しているポイントだ。だからどうだっていい」
「え?」
ただの女の子になった求名が俺の言葉に驚いているように感じた。
「この小説は、お前の心情を投影しすぎていて脆い。お前は弱いから、助けてといっているように感じてしまう。そのくせは直らないだろうしかと言ってそれを続けたら神経をすり減らす。お前のかく脚本はそういうんじゃなかったが小説になると急に神経を無茶苦茶すり減らしている。だから、お前は小説を書くのに向いていない」
ホントは求名の技術は確かにあるのだ。勿論確かに欠点がある。けれどそれはプロだって見逃しているようなことでプロにだって同じことを言う。けれど求名の小説は確かに違う。作家の願いである「自分の書いた作品で何かを伝えたい」というのが強すぎる。それは小説家に向いていて向いていない。プロの中にはそんな願いを忘れてしまった人だっている。けれど求名はそれが強い。それは逆に言えば危険なことだ。
「ぅぅ・・・・」
スカートのすそをぎゅっと握った求名は部室を出た。


「・・・・・・」
部室にいる北風原と八街の両名は俺をじーっとみてきた。やりすぎだ、とでも言いたいのだろうか。多分そうだろう。けどいくらやりすぎでも俺がやってやらなければきっと求名は神経をすり減らすことになる。この摩訶不思議な部屋から早く引きずりだしてやらないといけない。
「はぁ・・・・・・あーあー、疲れた。今日はもう、終わりにしようぜ」
「・・そうね」
そういう北風原の声はどこか悲嘆しているように思えた。


その日の夜。また昨日のように走ることにした。目的は求名に会うこと。いつもあそこにいるらしいから今日も多分。絶対にいる。
「2日間連続で走って何をしたいのだ?」
昨日、求名に会った場所にたどり着くとそんな声をかけられた。その声は先ほどの普通の女の子とは違ういつもどおりのレッドフードたる求名の声だった。
「ダイエット・・とかな」
「ダイエットなど必要なかろう。まあ、別にいいがな。」
そう話すと俺は、求名のすぐ近くに行く。
「むぅ、何だ?」
「いや、さっきのことで話がしたくてな。」
「話か・・・・。ぬしに話すことは無いぞ」
「まあ、お前がどうして今にいたったのかとかそういうことを聞く気もないしお前の感情を画さず話せって言えるほど俺は善人じゃないからな。何より世界が腐ってるからお前みたいな奴がうまれることなんて分かってる。」
「じゃあ、何だ?我の静寂の時間を邪魔するのなら許さぬぞ?」
求名がそういってから俺は、ふっと笑う。ほんとにその通りだ。別にここから何か策があるわけじゃない。ただ、何か足りないと思ってきてしまっただけなのだ。そんな効率の悪い合理性の無いことをするなんて俺らしくも無い。けれどそこまで計算しての行動だ。
「この世界には神なんていない」
「むぅ?」
「神も仏も釈迦もいない。」
「夢も希望も無いことを言うのだな。なんじゃ?慰めにきたんじゃないのか?」
「何で慰めるんだよ。意味分からん。お前は、慰めなんて必要ないだろ?」
「むぅ」
「いって置くが世界には神も仏も釈迦もいない。世界は腐りきってるからなぁ。神様なんているはずがないだろ?もしいたらその神様は腐ってる」
もしも腐ってない神様なんていてくれたらどれだけよかっただろう。そう思う事はたまにもある。だが、俺は知っている。世界の摂理を理解しつくした俺だ。神様はいないけどその中で守っていくことの出来る奴がいることを。
「でもなぁ、世界にたった一人だけ腐ってない奴がいるんだなぁ、これが」
「我か?」
「いや。俺だ。」
「むぅ?笑わせる。お主のどこが腐っていないというのだ」
「知ってるか?ゾンビゲームだとなクリアしきって無いとゾンビになるか分からないんだ。けどクリアすると絶対ゾンビにならない」
「なるほどな」
「だからまあ、部活はいれ。唯一腐ってない俺のいる部活にはいれば腐ることも無いだろ。腐ってない奴には腐った奴を直すことも出来るからな」
「ほぅ・・・・・。まあ、元々あの部屋が我のものだからな。勝手に使われるぐらいなら我の監視下に置いたほうがよかろう。」
「だろ?じゃ、今日は寝るから帰る。明日な」
これで救えたとは思わない。そんな簡単に人を救えていたら世界は腐っていない。俺がもっと早く救ってるからな。でも
「むぅ。明日、また会おうぞ。」
その一言があったから少しは救えたという実感をもらえた。




翌日。俺は部室に少し遅れていった。先生に呼び出されてた。というのが原因だが教室をみたらハチがいなかったので少し早めに歩いて部室に行った。部室の扉を開けてその目の前に広がった景色は少しだけ穏やかで心地よいものだった。求名の美しい言葉で表現する景色と同じかそれ以上の価値があるように見えた。求名もすっかりハチと北風原に馴染んでいてすごく楽しそうだ。北風原も俺が初めてこの部屋に、入ったときより優しい口調だしハチもよく話すようになった。暖かい色をする目前の景色は、歪んでいなくてむしろ歪んだ目でみた景色がこれならホントは歪んでいるんじゃないかと不安になった。


女の子はお砂糖とスパイスと素敵な何かで出来ていて男の子はカエルとカタツムリと小犬の尻尾で出来ている。お砂糖とスパイスは打ち消しあわずにお互い味を濃くしていく。素敵な何かはきっと人によってちがくて七面倒臭かったり優しかったりプライドの塊だったりする。カエルは跳ねて届かないものに向かってはねて進んでいきカタツムリは見えないほうからの攻撃を防ぐため甲羅をつける。小犬の尻尾は小犬の感情を表してくれる。ならきっと男の娘はお砂糖とスパイスと素敵な何かとカエルとカタツムリと小犬の尻尾。6つの要素で出来ていてでもちょうど6等分じゃなくて混ざり合って出来ている。カエルの形の砂糖菓子、カタツムリみたいな塩辛、小犬の尻尾を追う小犬を見て過ごす素敵な一時。ラノベの主人公は弱さと孤独と裏腹な優しさで出来ているのだろう。


なら女の子と女の子と女の子とラノベ主人公の男の子とかけ離れる男の娘の集まった思いやり部は何でできて行くのだろう。そんなことを考えながら歪んで居ない景色を今だけは受け止めようと思っていつもの定位置に座った。

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