嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

赤頭巾は傷つくⅢ

「求名~、いるのか?」
部室に入り発した第一声はそれだった。今まで求名がこの部屋にいることに気付かなかったわけだしここを部室として使ってから俺が気付かなかったという事は、この部屋にいなかったという可能性のほうが高いといえるであろう。
「むぅ、うむ。我の部屋であるからな。いて当然である。」
「そうか?今までほとんどいなかっただろ?」
「むぅ?いたぞ?」
「・・・・?ああ、確かに」
そういわれて部室をサーチすると明らかに隠し扉っぽい場所があった。今まで全然気にしてもいなかったが言われてみれば分かりやすいところにある。この部屋を与えた人は絶対社畜でしょ。なんかもう可哀想だなぁ。
「それで、どうだった?」
「ああ、まあハチがきたらな」
「むぅ、まあよかろう。レッドフードたる我は心も広いからのぅ」
「お前、体調大丈夫?」
「何故だ?」
何故だ、ときかれても言葉で説明するのは結構難しい。何故かといえば常人には考えられないようなことで体調が悪いと判別しているからだ。血流の流れとかで。もうこれ、医者になったほうが人生勝ちなんじゃね?いや、でも医者は医者でミスったら謝罪とかで大変そうだし寝れなそうで社畜っぽいしやめておこうかなぁ。なんなら働かないで主夫という選択肢が俺的には嬉しい。
「ま、なんとなくな。昨日もあんな時間に外にいたわけだし」
「むぅ、まあ色々あるからの。まあ、あの時間帯にはいつも外にいるのだよ。体調も良好だしの。レッドフードは夜の眷族であるからの」
その言葉を信じることはできなかった。元々俺は、人の言葉を信じるような性質じゃない。むしろ自分で見聞きしたもの以外は信じない。だから俺が感じた求名の体調不良に確信をもっていた。例えば本人が自覚していなくても何かある可能性はある。
「師匠。送れてしまいすみません」
そのとき扉が開いて八街が送れたことを謝罪する言葉を発した。
「いや、そんなに待ってない。茶請けとか色々もってきてるんだろ?」
「流石、師匠。お優しいんですね。」
「ま、そんなんじゃねぇよ。」
「そうですか・・・・。」
そんな会話をして気まずい感じの空気になってしまった。”空気”というのは厄介なものでこれの扱いが上手ければどうとでもなるのだがその扱いはどんなに上手くても成功確率が100%になる事はない。会話によっては0にすらなる。
「むぅ、空気が悪いの。まあ、いい。我の依頼に答えてもらうか」
「おう。そうだな。じゃあ、いい。北風原からいっていけよ」
「そうね・・・・。けれど長くなってしまうしハチさんからお願い出来る?」
「はい」
そういってからコホンと可愛らしく咳払いをしてハチは話しはじめた。
「全体的に面白かったです。ストーリー構成も中々のものでしたが情景描写もきれいでした。登場人物の感情のリアリティがあってよかったです」
「むぅ、そうか」
「悪かったところは?」
「特にないですかね・・。あんまり詳しくは無いのですが普通に売っていてもおかしくないクオリティでした。」
そこまで話しているのが事実なのかお世辞なのかその真意を探る事は容易い。俺が教えた嘘をつく技術。くせだって分析しながら教えていたんだし分かる。これは、心から思っている言葉だ。
「・・・・・じゃ、北風原。先に言ってくれ。」
「・・・そう。なら・・。まず冒頭部分。赤頭巾の第一声までの景色描写や情景描写はとても素晴らしかったわ。特にこの『オオカミの遠吠えが聞こえるかのような部屋の五月蝿さが耳に響き教室はさながらジャングルのような荒々しさを放っていた』という部分、とても好きだわ。」
何かどんどんぺらぺらと饒舌に話し始める北風原の感情が全くといっていいほど理解できなかった。俺はこいつの書いた作品が素晴らしいとは思わない。面白いというのは事実であろう。ストーリー構成自体は悪くない。それはまあ、脚本家という面が幸いしているのであろう。だが、そのストーリーを上手く生かしきれていない。しかし北風原は、それを理解していない。それとも俺の思い違いというか俺に合わなかっただけっていうかそんな感じなのだろうか。それは分からん。
「むぅ、そうであるか」
「それから――――――――――――」
それからしばらく北風原の熱弁が続いた。


「むぅむぅ、よかろう。では、猫実」
「おう、終わったか」
俺は、咳払いをしてからやや真剣なトーンで言う。
「正直に言うぞ?」
「そのほうがありがたい。そちは我の天才っぷりを理解できているからの」
「そうか。じゃあ・・・・」
確認してから息を吸い言葉を発する。


「正直に言うともう、お前は小説を書かないほうがいいんじゃね?多分、お前は小説を書くのに向いてない。これはもう特性みたいなものだ。変わりようが無い。」
「は?」
「え?」
「むぅ?」
俺が一言言うと他の3人は驚きの声を漏らす。もしかして俺が少しでも甘い言葉をかけてやるとでも思ったのだろうか?それとも「正直言って不朽の名作だわこれ。マジやばい」とでもいうと思ったのか?その両者がありえるはずも無いのだがまあ、いい。だが、俺はその言葉を続けるべきか分からずにいた。それは先ほどから考えていた。向いていないのだとそう一個といってしまえばその先の言葉をつむぐ必要は無いんじゃないかと思う。けれども求名はその先の言葉を求めるようにこちらをただ見ていた。第3者である八街や北風原もだ。ならばハチはきっと師匠たる俺の考えを知ろうとしているのであろう。ハチはそこまで俺を信じてくれている。北風原は逆に俺の間違いを探している。自分が素晴らしいと思った作品を馬鹿にされたからだろう。そういうプライドを北風原はもっている。
「求名。お前は確かに天才だ。正直言って俺だって持ち合わせていない能力をお前はもっているだろう。それは普通に評価されるべきだ」
「むぅ。ならば何故向いていないと思うのだ?」
見るだけでなく遂に言葉で尋ねてきた。出来るのならばそれが実は勘違いで、本当はその先を聞きたくは無く自分を慰める為のものなのだと思いたかった。けれどそうは思えなかった。だから、その先の言葉を隠さずに言ってぼろぼろにしてやるしかないんじゃないかと思った。だから




「ホントにいいんだな?」
そう、一言問いかけた。

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