嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

「いや、お前の小説読みながら走ろうと思ってな」
「小説を読みながら走る?全く理解できぬな。そんなことでは小説が、頭に入らないであろう。それにこんな時間にわざわざ走る理由にはなるまい。」
「まあ、そうだな。小説自体はさっき読み終わった。何で今は、小説をちらちら見ながら音楽聞いて走ってるだけだ。何か眠れなくてな」
「眠れない、か。」
そういう求名の声は、いつものやけに元気な中2病臭い口調ではなく男らしいいつもの危うさの無い口調だった。
「お前はどうしたんだ?」
「我か?まあ、我にも色々な事情があるのだよ。」
「事情ってなんだよ。俺が話したんだしお前も話せ」
「むぅ、人間ごときが我の平等を語るなど片腹痛い。特におぬしは怖いからの。今も我を驚かしたし先ほども我を脅しただけでなく縛った。そんな輩に話してやるわけが無かろう」
事実、俺は求名に酷いことをしているわけなのだがかと言って俺が一概に悪いとも言い切れないと思うのだ。部活中に限っては求名が俺たちを驚かしたのがいけないわけだしあのままならば俺の愛弟子であるハチに害を与える可能性もあったわけだ。別に愛弟子ってほど弟子じゃないけどね。なんなら弟子かどうかも怪しいレベルである。まあ、俺が技術を教えてるわけだしハチが認めてくれているうちは師弟関係という安心安全の関係を保っていたい。
「まあ、確かにそうだなぁ。いや、でも俺ってそこまで怖くないだろ?実際に驚いちゃってるのは自分な、訳だし恨むなら自分を恨めよ。」
「なんなのだ?貴様、自分が怖く無いと思っているのか?流石にそこまでの恐ろしさのくせに怖く無いと思っているだなんて軽く引くぞ」
「そんなことで引くな。っていうか実際怖くないだろ?どこが怖いんだよ」
「怖いところなんて挙げればいくらでもあるぞ。」
「はぁ?マジかよ」
ちょっとマジでショック過ぎる。俺って・・・怖くないよねぇ?だって春にもよく言われるぞ。『考えてることが分かりにくくなければ可愛い男の娘なんだけどなぁ』って。
「ちょっと待て落ち着け。むしろ可愛いぐらいだろ?よく男の娘みたいだって言われるぞ?じゃあ、逆に怖いところを挙げてみろよ」
「考えが読みにくいところとかだな」
「それは、驚かせるとかそういうことじゃないだろ?」
「そうであるか?考えが読めなければまるで暗闇に立っているかのような気分になりいつ刺客が我に不意打ちをするのかと不安になってしまうであろう?」
「吸血鬼って闇の種族なんじゃね?まあ、よく知らないけど闇の中で不意打ちって無いんじゃないの?まあ、それは似非吸血鬼だと思えばいいのか?」
正直、吸血鬼とかそういう事はいまいち詳しくない。ラノベとかでかじった知識がほとんどで後は、そっち系の奴らと話してたときに得た知識である。っていうか皆、考えが読みにくいって言うんだな。考えが読みにくくても怖く無いと思うんだけどな。
「似非とかいうでない。我はれっきとした吸血鬼であるぞ。伝説の亜種、紅い吸血鬼レッドフードである。我が極炎魔法の力があればおぬしなど燃やせるのであるぞ?」
「燃やせるねぇ。じゃあ、燃やしてみてくれよ」
「そうしたいのもマウンテンマウンテンなのだがなぁ。」
「マウンテンマウンテンって口で言うんじゃなくてラノベのモノローグで軽くボケる時に使う奴だと思うんだが。まあ、詳しくないけど」
「半端な知識でものを言う出ないぞ、若者よ。10000年の輪廻転生を繰り返す我の言葉に口を出せば我が吸血の力で傷つけてやるぞ」
お、レベルが下がりまくった。燃やさねぇの?殺さねぇの?傷つけるだけってレベル低いな。こんな感じなのに天才歌人で天才脚本家で天才監督っていうのが理解不能だ。
「で、何で燃やさないんだ?」
「むぅ、よくぞ聞いてくれたぞ。」
そういうと求名は一度咳払いをしてから仁王立ちになり笑みを浮かべながら話す。
「我は10000年の間輪廻転生を繰り返している故に魔力が、溜まりすぎていたな。今のような幼い体だと魔力を制御できなくなってしまうのだ」
「駄目じゃんか」
「だが、また、もう少し年をとれば魔力を制御出来るようになる。30歳になればとうとう我の魔力が解放されて世界が変わるであろう」
「何だそれ。」
童貞が30歳で魔法使いになる、レベルに神話的だった。というかむしろその話がベースなんじゃないかと思うんだけどなぁ。こいつのことだ。そういう逸話的な噂は知っていても当然であろう。
「・・・・・。おぬしは我の伝説を知っておるのであろう?ならば、我を敬う気持ちをもって敬語を使うべきではないのか?」
「なんだその論理。お前がいくら文学関係の天才だからといって俺が敬う必要は無いだろ?俺はお前の出来ないことを何でも出来る。多分だけど文学の才能もちょっとあるだろうしな」
「何故そう思うのだ?」
「簡単な話だ。俺の母さんが無茶苦茶文学の才能があるからだよ。いくら努力したって売れるのに面白い小説なんてそうやすやすとかけないだろ?」
「おぬしの母上は小説家であったか。だが、小説が売れるかどうかなんて運だと思うがなぁ。我のように輪廻転生を繰り返すと多くのものをみているから運など関係なく売れることが出来るがな。それに両親が天才だからといって子供が天才だとも限らないであろう?その逆も然りだ。我は、両親ともに平凡な人間であったがこうして紅き吸血鬼レッドフードとして生まれたのだからな」
「それは、才能以前に種族が違うだろ」
「まあ、そうであるが後天的に吸血鬼になるというのもあるのだよ。」
ちょっとこいつの言ってる事、ご都合主義過ぎるんだけど。まあ、それはどうでもいい。だが、なんだろうな。最近こうやって仮面は、外すことが多くなった気がする。それでも仮面の下の仮面を外してはしないからあまり今までと変わらない上っ面な会話なんだが相手が本音を話してくれていると感じるのだ。隠し事はしているけれど、それは相手を巻き込まないようにと努力する勤めた嘘だ。俺に知っている虚ろな言葉ではなく故に神の耳でかけ離れた音が聞こえることも無い。


俺の神の耳は、持ちうる情報を元に瞬時に考えて相手の声を無意識のうちに出すものだ。この思考速度は明らかに普段の思考速度より早い。それは、無駄なことを考えずに持ちうる情報をコンマ0.1秒で割り出そうとするからであろう。故に情報さえそろっていけば完全に正しい推測が出来る。
「・・・・・・・・・明日、絶対部室に来いよ。」
「勿論だ。我が部屋でもあるのだからな」
その声は不確かで弱々しいものだった。だから、救ってやらないといけないと思った。あまりにも不確か過ぎるから。まるで命が途絶えてしまいそうな消え掛かった炎のようだった。

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