嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

月の歌人~1

「お兄ちゃん、何で急に走りに行ってたの?」
「あ?いや別に深い意味は無い。ほら、最近俺って部屋に篭ってる時が多かっただろ?人気投票のはがきが終わったっていうのもあるし運動したい気分だったんでな」
「ふーん。春的にはどうでもいいんだけどね。誉田先生がお兄ちゃんを注目してちょくちょく何があったのか聞いてくるようになったかと思ったら久しぶりに走ってくるなんて言い出すからどうしたのかと思ったよ。ま、あの人たちもいるし無理はしないよね?」
「あの人たち?」
正直どうでもいい、というほうに食いつくべきなのだがそれよりもあの人たちって言うのが誰を指すのか野方が気になった。俺が、無理をしない理由になりうる人物は俺の周りにはいない。どうでもいいという言葉が胸に刺さって考えられなくなっているとかそういうことじゃないよ。俺、シスコンじゃないし。
「ほら、この間来てた人たちだよ。えーっと八街さんと・・もう一人のきれいな女の人ってなんていうんだっけ?」
「ああ、北風原だな。北風原とハチがどうしたんだよ」
「え?」
俺が聞くと何故か春は、呆けた表情になる。ちょっとよく分からん。そんなにも俺が女子と話しているのが驚きなのか。でも考えてみたらあいつらに会ったときは何も無かったんだしじゃあ、何でそんな表情になってしまうのか。
「お兄ちゃん、いつから八街さんは、お兄ちゃんの忠犬になったの?」
「いや、いつもなにも今もこれからもハチが俺の忠犬になる予定は無いんだけど。何でそう思ったんだよ。よくもまあ、そんなぶっ飛んだことが言えるな」
「何でも何もハチって言ったら犬じゃん?それにこの間の様子を見てたら八街さんは、忠犬みたいに従順に従ってくれてたじゃん。メイドみたいだったしいいじゃん。付き合っちゃいなよ」
「付き合うも何もそんな関係じゃないしあっちだって気が無いっつうの」
俺と八街の関係は、師弟関係以外の何物でもない。付き合うとかそんな事はありえないし何より俺について来れたとしても俺が人に付き合うって事はありえない。正直言って考えられないのだ。そもそも恋愛関係なんていうものは脆くて危うい。天才である求名でさえ、そう思っているのだ。あんなにも美しくて弱々しくて脆くて危うくてそれでいて美しい。あんな恋を書くことの出来る人間は明らかに恋愛が危ういと思っている証拠なのだ。
「へぇ~~?本当にそう思ってるの?」
下衆い顔をして春が言うのでデコピンを弱めにやる。結構弱かったのに涙目になりそうな不安定な感情をもっているのが不思議でしょうがない。
「うっせぇ。思うも何も素の俺を好きになる奴なんかいるはずが無いだろ?素を好きになってくれないんだったら恋なんかする気もないしな」
「そんなこといってると主夫になれないよ?」
「ぐ・・・お前それをどこで・・・・」
おかしい。まだ、この夢は作文に書いた以外では誰にも明かしていないのに。作文・・・・・・誉田先生か。っち、だめだぁ。妹と先生のつながりを切らないとマジで俺の命がやばい。なにそれ、何かラノベみたいなタイトルだな。100%売れなさそう。売れないラノベはただのゴミだ。売れるラノベもただの紙だ。つまりラノベってだめじゃん。
「お兄ちゃんさぁ、楽したいなら少しは妥協しないと」
「いや、俺は楽したいわけじゃないんだよ。正しい道を選ぶべきでありその中で専業主夫という選択肢こそが正しいから俺はそれを選ぶんだ」
「でも、結婚しなきゃ主夫になれないよ?」
「そのときはスポーツ選手でも企業家にでもなればいい。俺的にはどんな職業も選びたい放題だからな。犯罪さえ犯さなきゃ俺の人生は薔薇色だし。」
「・・・・・・・お兄ちゃんって人生を舐め腐ってるよね」
「実際世界が腐ってるんだ。舐め腐っててもいいだろ?」
「その論理はおかしい」
主夫、という選択肢に必ずしも結婚が伴うとは思わない。そもそも俺は、働きたくないわけじゃない。働かないほうがいい、というだけだ。働けといわれたら諦めて働く。俺の能力があれば働くくらいちょちょいのちょいだ。けれども社畜には、なりたくないと思ってはいる。まあ、どちらにしたって働かないほうがいい。だが、そのために俺を理解出来ない相手と無理して結婚しようとは思わない。きれいに騙して養ってもらおうとは思うけど。
「その口調の方がおかしいっつぅの。でも、実際、起業するぐらいの金は母さんとか父さんに言えば出してもらえるだろうし俺の運動神経なら大抵のスポーツで日本一が取れる。流石に今すぐは無理かもしれないけどそれでもちょっと頑張れば世界一取れるだろ。」
「・・・・・それが事実だからなぁ・・・」
「だろ?」
「ま、いいや。春はもう寝るから」
「おう、おやすみ」
そんなやり取りをしてから俺も部屋に戻りベッドについた。


ベッドについて寝ようと思ったのだがどうにも眠れなかった。昔、骨の髄にまでしみこませた運動能力が今日の走り込みで一気に戻っちゃってどうにも体がうずうずしている。脳も冴えてしまっている。ちょっとどうしようもない。何かこれは、長いこと読み続けたラノベの最終巻を読み終えたときの喪失感と脳の回転率に似ている。駄目だな。もうちょっと運動するか。しょうがないのでぱっぱと外着に着替えてスマホをもって家から出る。別段向かうところが決まっているわけでもないがとりあえずさっき走った道と同じルートを走るぐらいで終わらせておくことにして走り始めた。


「ふぅ、ふぅ」
呼吸をしながら走りさっきよりも早く走る。俺の存在感操作によって補導されるなんて事はありえない。なので、思い通りに走ることが出来る。春の夜風が心地よく、きっと俺に視力があれば月がきれいに見えていたのであろう。太陽の光の動きを捉える事はできないので月をみる事はもう、出来ないけれどそれでも月の光がコートになりやや冷たい夜風から守ってくれているような気がして最高に気持ちよかった。混乱していた脳が少しずつ柔軟になり活性化して行く。きっと古人はこんなひと時を短歌にでもして詠んだのだろう。そう思っていると俺の歪んだ映像にかなりぐちゃぐちゃで自信満々の色をした少女が映った。目では見えないけれどその子の色んな動きを聞いているだけでどこか神秘的だった。天才歌人求名が何故ここにいるのかちょっと気になったので近づくことにした。

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