嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

後日談

俺がかっこつけて叫んだあと、俺は八街と分かれた。まあ、ちょっと自分の話したことが気恥ずかしくなったって言うのもあるし甘やかさないほうがいい、と思ったのも事実だ。端的に言ってしまえば今は、一緒にいるわけではなかったということだ。んで、家に帰ってきたわけなのだがちょっとどうしてもやる気が起きない。俺の下で、だなんて言ってたくせに俺がこれからどうするのか考えてなかった。まあ、まず思いやり部は、自主退部だろうな。部活自体めんどくさいし2週間過ぎたらやらなくてもいいんだから俺に参加する理由は存在していない。けれどもその先は?俺があいつらに勝った以上クラスの空気が悪くなるのは容易く予想できる。八街自体がクラスの奴らに馴染めないであろう。もう、馴染むのは諦めたほうがいい。大学デビューを狙うしかない。しかし俺が教えるっていっても今までのようには行かないだろう。確かに北風原は、ほとんど参加せずに別個でやっていたけれどそれでも北風原と協力した部分もままあった。じゃあ俺の下、とは何なのか。個人的にはここまで状況が酷くなるだなんて思ってもいなかったのだ。どういうことかというと少しずつ会話を弾ませていってそれでもしも失敗してもたまたま失敗、みたいなレベルで終わってまだまだ技術が足りなかったな、という感じになる予定だったのだ。けれども何故かは分からないが北風原が話しかけてきた。北風原が話しかけてくるというのがそもそも分からないが何故八街に敵意をむき出しにしていたかも分からない。八街は東浪見からすれば完全な格下のはずだ。いくらあいつが馬鹿であろうとクラス内カースト上では東浪見が圧倒的に上。わざわざ話しかけて印象ダウンの可能性を1%でも作るのは得策とはいえない。では、何故話しかけてきたのだろう。
「ちょっと。夕飯まだ?」
「・・・・・・・・・・」
「お兄ちゃんってば」
八街と東浪見の共通の話題を俺は知らない。あの怒りの理由を聞くことが出来ないという事は俺が知らない情報があるということだ。ならば俺の知らない二人の共通の話題こそが今回の原因であるということだろう。
「お兄ちゃん。無視しないで」
「うわっ。何だよ急にでかい声出して」
本当に驚いた。驚いたせいで一気に思考が止まってしまったではないか。まあそれはいい。春の声ががんがん響いたせいで母さんの部屋からは五月蝿い、と文句を言う怒鳴り声が聞こえる。何か申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「で?何なのよ、急に話しかけてきて」
「急じゃないし。さっきから話しかけてたし。」
「そうなのか?全然気付かなかった。いやぁ、もう歳かもなぁ。それで何?」
「ちょっとイラつくんだけど。」
「さっさと用件を言え」
「夕飯作ってってだけだよ。そんなことどうでもいいけど何かあったの?久しぶりに難しい顔してるよ。もう無理しないんじゃないの?」
春は、俺を心配してくれる。それは俺にとってはとても喜ばしいことで俺を本気で心配してくれる人なんて限られているのだ。まあ、春も本当の俺を知ってるわけじゃないけど。それでも心配してくれるのは嬉しい。世界が腐ってさえいなければ。
「ま、弟子が出来たからな。師匠として考えねばならないことの一つや二つあるんだよ。それよりお前、勉強してるのか?最近勉強してる姿みてないんだけど。」
「は、話ずらした。今お兄ちゃんのこと」
「今終わっただろ。お前こそ話ずらしてんじゃねぇか。」
「う、五月蝿い。いいんだよ。もう、中1の分なんて終わっちゃってるんだからサボってても何とかなるって。だいじょぶだいじょぶ」
「大丈夫じゃないだろ。あのなぁ、受験志望の奴なんかはもう、中学生の課題を全部終わらせてるんだよ。この間の区のテストだってそこまで点数よくなかったじゃんか。俺の妹としてあんな成績じゃ許されないからな?」
「よくないって国語が95点だっただけじゃん。あとはしっかり100点だったしクラスの中でも成績は、無茶苦茶よかったんだよ?」
「はい、じゃあその間違えた国語は100%分かるんだよな?」
「勿論。」
「では、問題。いらっしゃる、は敬語の中で何語?」
「へ?え、えっと・・・謙譲語」
「尊敬語だ。駄目じゃねぇか。もっと勉強だな。お前、国語は苦手なんだからもっと気を配っておかないとだぞ。苦手教科こそ100点をとる。そしたらとれない教科にも熱が入るしな」
「お兄ちゃんってたまにインテリ系っていうか頭よさげ系だよね。東大にいそうな感じだし」
「頭よさげとはなんだ。俺は、実際頭いいしIQ自体は前に計った時天才だって言われるレベルに高かったんだぞ。」
実際にIQ自体はかなり高い。それも当然だ。この世界は腐ってるんだからそのレベルに合わせて計測されるIQで俺が人より優れていないはずが無い。
「お兄ちゃんってさ、クラスの人と馴染めてるの?」
「想像に任せる」
お兄ちゃんがクラスに馴染んでないだなんてお兄ちゃんの口からは言えないぜ。ちゃんちゃん五月蝿い。まあ、多分想像に任せても馴染めてないって結論にたどり着くだろうけどね。
「さてと、じゃあ飯作るか。今日はカレーか?」
「おお、カレー。お肉多くしといてね。ほら、私これから生放送して疲れちゃうから」
「疲れると思うならやめとけ。」
「いや、でもこうやって有名になっておくと便利なんだよ?そのうちトラブル起こしそうとか思ってるかも知んないけど既にファンクラブが出来てるから守ってもらえるしアイドル事務所からも声が掛かってるんだから」
「事務所?なんだよ、アニメかよそれ。妹にはアイドル主人公適正があるのにお兄ちゃんには何で主人公適正がないんだろうなぁ。」
つい、感慨深くつぶやいてしまった。いや、それにしたっておかしいと思うのだ。アイドル主人公適正があるっていうのになぁ。マジで主人公とか爆発しねぇかな。
「いや、それはなんていうの?お兄ちゃんだって主人公になれるよ。ちょっと可愛くと服着てると女の子にしか見えなかったり服脱ぐとむちゃくちゃムキムキだったりするけど多分大丈夫だよ。うん、お兄ちゃんだっていつかは恋できるから」
「恋できるって言うのは振られるってことなんだけど。振られないで実る場合、彼女が出来るとかいってほしいんですけど。いいか?恋っていうのはだな」
「語るのはいいからカレー」
「いいから聞いてけって。恋っていう字の上のほうは変っていう字の上と同じだろ?で、それに心だ。何か赤っぽい形だし心が血みどろになったって考えていいはずだ」
「よくないでしょ。何、その壊滅てきな論理」
「恋なんて馬鹿のすることって意味だよ。まあ、俺はそう思うってだけでお前にそれを強要するきも無いけどな」
「お兄ちゃんが妙に素直で気持ち悪い」
「五月蝿い。余計なお世話だ。とっとと行って来い」
ほんとに何かやばいな。どうも素直になってしまう。恥ずかしさレベルカンスト状態だからなのだろうか。

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