嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

一歩

八街の家の目の前までついた。その家は普通の家だった。和風という感じではなくかといって洋風の家といった感じではなかった。けれど何か落ち着く空気感があった。それは別に俺の家が殺伐としているとかそういうことじゃなかった。むしろ俺の家は無茶苦茶、落ち着いてるしな。養ってもらえるし実家最強なのだがそれでもいつか、やばくなる時が来るだろう。いや、もしかしたら来ないかもな。有名作家と役者が親だし一生養ってくれてもいいんだけどなぁ。許してくれるような親じゃないことも確か。それはそうと家までついたのなら親御さんに謝罪しなければならない。
『ちょっと会ってもいいか?一応遅くなった謝罪ぐらいはしておきたい』
「え?えっと別に遅くなったのは師匠の責任ではないのでお気になさらなくてもいいのですが・・・。師匠がお望みならばそれでもいいですけれど・・・。」
『いや、俺としても流石にこんな時間までいさせるっていうのはどうかと思うしな。それに夕飯とかも食べて貰っちゃっただろ?用意しちゃってたなら悪いし』
「師匠はお優しいのですね。カッコイイです。見習いたい」
『優しさとかそういうのじゃない。見習わなくていい』
そう。これは優しさじゃない。贖罪だ。八街を貶めたのは確実に俺。ほんの一瞬でも向けてくれた好意を利用したというのは俺の中じゃ罪なのだ。腐った世界であることを知っている。他のやつらが何をしようと俺は、謝ることは無いだろう。謝ったとしてもそれは貴族の嗜みとしてのもの。けれど今回だけは違う。俺の利益の為の贖罪だ。
「どうぞ。お入りください」
「ごめんください」
鍵は開いているようで俺は、音のボリュームに気をつけて声を出す。あんまり大きい声で迷惑かけるのも嫌だし小さすぎて聞こえないと印象が悪い。俺が声をかけた数秒後には、どたばたと駆けて来る足音が聞こえた。
「あら。お客さん?」
「すみません。娘さんをこんな時間まで連れ出してしまって。夕飯を作ってしまってもし御夕飯をおつくりになっていたらと思ったのですが大丈夫でしたか?」
「言葉遣いも立派ね。いいのよそんなこと。うちの娘が迷惑かけなかったかしら。なんかごめんなさいね」
「いえいえ。それと気持ちだけですがこれを」
そういって差し出すのは俺がさっき作ったクッキーをつめた箱だ。きれいにラッピングしてまるで売り物のように見えるが自作、という何ともサプライズ仕様でこれを渡すと結構喜ばれる。
「あらまあ、ありがとねぇ。もしよかったら上がっていってもいいのよ?」
「いえいえ。家に妹がいるので早めに帰ります。お気遣いありがとうございます。」
俺は、そういって一礼して後ずさりした。八街は、ぺこりと頭を下げる。俺もぺこりと一礼して帰った。


家につき俺は何をするかといえば仕事である。学級委員の仕事だが暇だしライデイもさっき携帯ゲーム機版でやったのでやることないし。ということで仕事をさっさと終わらす。今日も活き活き社畜ライフ。仕事が無くても仕事して、暇にしてたら即くびだ。何かの標語みたいになったけどそんなのはどうでもいい。案外中身は多いように見えたけど中身は薄かったのでその日中に終わった。


翌日。朝のうちに書類を先生に提出して俺は教室に向かった。すると既に八街がそこにいてなんかすごいそわそわしていた。まあ、急に何かを始めた時ってそわそわするのが普通だし気持ちは分からなくもないけれどな。でもそんなに変わって無いと思うぞ。昨日は基礎能力あげだしな。あと残り少ない日数でも何とかするぐらいの事は俺には出来るし八街の才能もかなりあるから不可能じゃない。けれどこの時点であんなにそわそわしているのをみると何か危なっかしい。教室はいつも通り。俺が学級委員で目立った事もあって若干ではあるが俺への視線が多くなった気がするがその視線がどういうものなのかは分からない。敵意である事は間違いないと思うのだがその敵意にも種類があって以下略。あんまり語りだすと切りがないのでそれはわすれておこう。さてさて、それはさておき一応この教室の分析もしておく必要があるだろう。鹿渡と東浪見のグループがこのクラスの覇権をとっていることは間違いないのだが問題はそれがどこまでのものか。具体的には鹿渡はどこまで男子の王になっていて東浪見がどこまで女子の王になっているのか。東浪見は先輩の中にいても大きな影響を与えるのかそれとも内弁慶なのか。それを分析しなければならない。




放課後までの暇な時間、音楽を聞きながら時間を潰した。たびたび耳からイヤホンを外して観察をしてそれが終わったらまたキャラソンを聞く。そんな楽しい時間を過ごして放課後。八街が俺と一緒に図書室に行くと八街のデビューに差支えがあるので俺は、さっさと図書室に向かう。
「師匠、お待ちください」
そんな声が聞こえるだなんて言うのはきっと気のせいだ。そうだよね?俺の幻聴でしょ?幻聴だと言って。いやそんなことを言ってくれる人はいないけど。無視してさっさと進んでいく。ここで反応して幽霊に出会ってもラブコメが展開する気がしない。そのうち人になる、とか言い出しそうでマジでめんどくさい。
「し、師匠。お願いいたします。少しお待ちください」
きっと気のせいだ。そう自分に暗示をかけながら第二図書室にたどり着いた。周りの目がどんどん酷くなって辛かったから最後は駆け込んだが真面目である俺は普段、走ったりしないから追いつけるはずだ。もしも本当に待てといってくる人がいたら追いつくはずだからそんなこと言っている人はいない。
「し、師匠。酷いです。いくら私が未熟だからといって」
「何?いきなり襲ったの?『八街さん災難だったわね。大丈夫?』
「あ、いえお気遣いありがとうございます」
『俺が貶められていくのはこの際無視して今日は無意識にこっち来ちゃったけど昨日と同じ練習をやるだけなんだけど。』
「あら、そうなの?ならここでやったら?一応依頼人が来る可能性もあるわけだし」
「それもそうだな。『八街、ここで今日は特訓するけどいいか?』
「はい、勿論です」
そして今日もスパルタ特訓が始まった。


1週間が過ぎたときの基礎能力の上昇は目覚しいものですぐに次の段階にいけた。思いつくだけのことをやらせてすべて修得、特に家事スキル全般は、素晴らしいものになった。それだけなら俺に並ぶ。他の点でもこの2週間で上昇した北風原と同格レベルに成長している。そして今日は、特別に朝も集まっている。ホームルームが始まる前に図書室に集まっている。今日、作戦決行だ。会話のレベルも高くなっている。耳が聞こえないことをそれとなく伝えるというのはやめて読唇術である程度分かるようにさせた。S君レベルではないもののマイナス1くらいまでハンデキャップを消すことが出来た。庇う、といったほうが正しいな。けれどいくらそれをカバーできてももう無理なんじゃないかと思う。クラスは完全にグループが形成されてしまっている。もう、どうしようもないのだろう。俺にだって手の出しようが無い。それでも行く末を信じることぐらい出来る。明日で、俺の仮入部も最後だ。無難ではないもののある程度猫を被ったきれいな分を既に用意している。この1週間半、確かにいろいろなことがあった。けれどもそんなのは俺にとっては大きな変化じゃない。だから変わらない。

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