嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

あめの時間

俺は、一度咳払いをしてから立ち上がる。それと同様に八街も立ちあがる。しかしふらついて俺のほうに倒れてきた。これでラノベ主人公なら俺も倒れてラッキースケベ、という展開なのだろうがそこは、俺。ラノベ主人公にはならずむしろ完璧という点を考慮すると後々主人公に負けて主人公を尊敬するようになるキャラみたいだ。何それしょぼい。主人公じゃない俺は倒れることも無くきれいに受け止める。しかもラッキースケベも一切無い。そういった要素を求めるほど俺はやわじゃない。何せこの世界は腐りきってるからな。声優は2.5次元だなんて意見もあるようだが俺からすれば声優も変わらない。3次元であることに変わりはない。なのでどきどきするのは自然な反応でありどきどきが恋に発展する事はゼロだ。だが何?明らかにふらついてるのは、俺のペンのせいだから何だか申し訳ない。
「師匠。こんな不甲斐ない私で申し訳ございません。」
何だか謝って来たがむしろ謝りたいのはこっちだ。同じ強さの電流しか流さなかった為電流を流していることに気付いてすらいない。故にふらついた理由が俺だと思ってしまっている。その罪悪感は結構すごい。そういう気持ちもこめてお兄ちゃんスキルを発動して頭を軽くなでる。こんなの普通にやったら引かれるだけだがこんなことさえも俺のスキルがあればそんな心配も無く出来る。
「師匠。ありがとうございます」
しっかりと立たせてからスマホに入力する。流石に可哀想なので慰めるぐらいの事はしなければならない。それはまあ、義務という奴だ。
『まあ、何だ?はじめてなんてそんなもんだから』
何か、文面だけみれば如何わしくも取れるのだが実際言いたい事は間違ってないのでしょうがない。顎で外に出るように合図をして扉をあける。ぺこりと頭を上げてからぴょこぴょこと八街は歩いていった。一度部屋を確認してから外に出る。ふと思い出したんだが俺、仕事あるんだったな。期限ギリギリで提出するくらいなら早めに出しておきたいものだし今日の夜にでもやることにしてさっさと部屋から出た。


リビングに戻るとそれはもう、楽しげに八街と春が会話していた。実際は春はメールをしているだけのはずなんだが喋りながらじゃないとメールでも会話できないのか喋りながら入力している為無茶苦茶にぎやかに見える。まあそれにしたって女性という生き物は話しているだけで盛り上がって楽しそうに見えるものだ。北風原と八街のときだってそうだった。
「全員そろってるな。よぉし、じゃあ食べるか。」
「お兄ちゃん。八街さんって声優なんだって。」
「おう、そうだなぁ。知ってる」
「驚いたで・・・・え?嘘知ってるの。」
「そうだな。はい、じゃあ頂きます」
俺が手を合わせて頭を下げると八街もそれにならって手を合わせた。しかし唯一、春だけは手を合わせようとすらしなかった。マジで?反抗期なのかしら。
「どうしたんだ?しっかりと手を合わせないと。」
「いや、そうじゃなくていつの間に教えてもらったの?声優だっていつ知ったのよ」
「いつも何も声を聞けばすぐ分かった。ほら、あとさっきまでいたもう一人の奴も声優だってさ。あいつのほうは、俺も分からなかったけど」
「うわぁ・・・流石お兄ちゃん。ま、いいか。いっただきます」
春も納得したのか手を合わせてからオムライスを食べ始める。


オムライス、とはやたらとメイドが出す料理だったり萌えの料理だったりとかと捉えられがりだが全然違う。オムライスというのはもっと奥深い。例えばかける調味料。普通はケチャップだがそれだって他のものに変えることが出来る。デミグラスソースをかけるのが主流だがマヨネーズをかけると滑らかさが増す。何もかけなければ温かみのある味になるしこしょうをかけたりするだけならぴりっといい味になる。萌えなんて要素は一切無くむしろ燃えの要素こそが高いといえるメニューだろう。そもそもご飯と卵、という組み合わせを人類は好むのだ。卵かけご飯だってあるしチャーハンにも卵が入っている。どうしたってオムライスが人類に受け入れられるのは当然のことだといえる。
「師匠?師匠は、オムライスがお好きなのですか?」
「あ?えっと・・・・」
『そうなんですよ。お兄ちゃん、オムライスへのこだわりがすごくて。今日は一番普通の奴ですけどたまに作るかわりものだとご飯をケチャップじゃなくてマヨネーズで炒めて卵にケチャップを混ぜたりしますし毎週金曜日はオムライスデーだって言って必ずオムライスを作るんですよ』
俺がスマホをとろうとすると春が先に説明してしまった。まあ、事実であるし文句は無い。毎週金曜日はオムライスデーなので今週は2回オムライスだということになる。でも俺は思う。オムライスは神なのだと。
「師匠、とても美味しいです」
『なんかアレルギーがあったらと思ったが無くてよかった。』
そんな会話をしながら食べたんだがどうしてもはたから見ると形の整っていない会話だった。いやそもそも師匠とか呼ばれてるだけで形整ってない。


オムライスは至福だし神なのだがまあそんな俺でもオムライスが全世界の人々のあめになるだなんて思ってはいない。しかーし、そんな時のために作っていたのがスイーツである。今回作ったのはチーズケーキとクッキーである。いい感じのお茶会をしようと思ってたんだがこんな時間になっちゃったしクッキーは明日にとっておいて今はチーズケーキだろう。
『デザートあるんだけど食べない?』
「で、デザートですか?感動です。私のために・・・。はい、食べさせていただきます。よろしくお願いいたします。」
「よし、春も食べるだろ?チーズケーキ。」
「え?チーズケーキなの?うん食べる。用意する」
春は、たたたっと走って用意する。フォークとお皿を用意するのはこいつの役目、みたいな部分があるので完全に任せる。まあこれは日常茶飯事の出来事なので慣れっこなんだけど。
「あ、私も」
『大丈夫だ。こいつ慣れてるから』
「そ、そうですか?すみません」
八街が申し訳なさそうにちょこんと椅子に座りなおす。いつもどおりに用意してくれたので切り分けてさらにおく。
「師匠はいつもやってるんですか?」
『お兄ちゃんはオムライスの後には必ずデザートも作ってくれるんです。だからオムライスデーも捨てられないんですけど・・・・』
「ほれ、食べていいぞ。」
「頂きます」
春が言ってそれにならって頭をぺこりと下げてから八街も食べ始めた。

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