嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

あめと鞭

「なるほど。じゃあ師匠。よろしくお願いします。」
『おう。じゃあまずは繊細さから鍛える。このノートにこれを永遠と書き続けろ。3行使って一文字で構わない。』
そういって渡したのは無茶苦茶難しいとされる漢字を適当に並べた文字列。これをつぶれないようにノートに書くというのが訓練内容だ。少しのミスでもやり直す、というのが重要なことなのでまずミスらない、だなんていうことはありえない。それだけ難しい。
「ほれ、お前も」
「何これ?絶対こんなの役に立たないじゃない」
「役に立つかどうかじゃない。」
そこまで言ってから八街にも教えておいたほうが良いと思ってメールに切り替える。これは俺の理念みたいな部分がある。
『いいか?世界は効率で出来ている。効率と合理性でできた美しい世界だ。でもこの世界の奴って言うのは効率も合理性も無い。そんな奴らが考えることが合理的で効率的だと思うか?』
「・・・・」
二人は沈黙になるがそんなのは無視してどんどん入力をする。
『効率って言うのは基礎が出来て初めて生まれる。基礎も出来てないのにいっぺんに鍛えられることを、とか何かしらの意味が、とか考えて鍛えても意味が無い。これは見てのとおり繊細さを鍛えたり自分磨き以外には何の意味も無い。こんなの覚えても無駄だしな。それでも無心でやることだ』
「・・・なるほど。流石師匠です。超かっこいいです。」
八街はそういうとノートを開いて一心不乱に書き始めようとする。
『ちょっと待て。使うのはこれで頼む』
「は、はい。分かりました」
俺が渡したのはスーパーで買ったシャーペンだ。けれど当然普通に渡すわけはない。先程効率は基礎ができてから、とかいったな。あれは方便だ。嘘とも言える。嘘としか言えない。しかーし。嘘だからといってこいつらに不利益をこうむる事はない。何をしたか、というとちょっと手を加えて作ったパーツをつけておいたのだ。見かけは普通だけどこれを持つと本人も気付かない小規模の電流が発せられている。脳波を俺がはかってもしもやる気がないようだったら俺がスイッチを押して強電流を流す。と、いうものだ。因みに死なないと思う。俺の場合常に中にして10分に一回強に自然になっていたがそれでも死ななかったし体に刺激が与えられるので運動時にも自然に動きやすくなるのだ。
「じゃあ、始めます」
そういって集中してから八街は書き始めた、しかし、北風原はまだやろうとしない。どうやら不審がっているようだ。まあ、無理もないな。だが気付いたところでやらせるのみだ。大丈夫。鞭にはしっかりあめも付属されるから。
「なにやってんだ?早くやれよ」
「・・・・やっぱり私やめとくわ。」
「は?」
「私は私のやり方でやる。そのほうが八街さんもライバル意識が持てて良いのではなくて?」
「そういう考えか・・・。怖気づいたとはあくまで言わないんだな。まあいい。妹がいるって分かっただろうから八街も安心できるだろうし」
「じゃあそういうことで」
そういって北風原は去っていった。まあ、これが自然な反応だろうな。むしろ八街のほうがおかしい。こんなのみただけでやめる。春だってこんなのやってられないから基本をすっ飛ばしてやる、とかいって進めちゃったし。それでも形にはなる。しかーし、八街は文句無いんだしならばいいだろう。俺も監視するか。一応北風原は八街にメールを打ったが八街は、しょうがないと思ったのか残念そうな顔をしながらも見送った。
「うむむむむ・・・」
うなりながらもサボらずに怠けずにやり続ける八街を見ているとなんだか感心してしまう。俺だって軽く引くレベルにやっているんだ。脳波自体もサボっているような様子がみられない。俺もちょっと退屈になるぐらいスイッチを押す機会が無いので退屈だ。かと言ってメールをやたらというのも申し訳ない。しょうがないのでパソコンで小説でも書いておくことにする。何だかんだでインスピレーションが湧いてくる。美少女と密室・・・。まずい。支障をきたしてしまいそうだ。師匠だけに。上手くねぇな。


「師匠。ノート1冊書き終えました。」
「はやっ・・・・」
集中して小説を書いていると急に話しかけられた。急いでパソコンを閉じる。読まれると恥ずかしいので。それで時計を確認すると既に7時になっていた。いや八街大丈夫なんだろうか。そのほうが心配なんですがその辺はいいんですかね?
『そうか。頑張ったな。時間が結構いってるけど親御さんに言っておいたのか?』
脈路のあまり無い会話だがしょうがない。これを言っておかないとまずいのは俺でも分かる。とりあえず送らないといけないのはわかるんだがそろそろ夕飯を作らないといけない。
「はい。大丈夫です。先程ここに来るまでの間に師匠の家に行くといったのでいくら時間が遅くなっても大丈夫だと言われました」
『そうか・・・・・。じゃああれだ。夕飯食べていってくれないか?そろそろつくんないといけないから今は送っていけないし』
「なるほど。師匠のお手を煩わせるのも申し訳ないですが私の親も送ってもらうように言っていたのでありがたくお夕飯を食べさせていただきます」
『おう、頼んだ』
キャラ崩壊も甚だしかった。けれどそんなこと気にしている余裕が無い。さっさと夕飯作らないと春がキレるだろうし。
『じゃあ、呼びにくるからそれまでここにいてくれ』
「了解しました、師匠。」
そういって俺はキッチンに向かう。


さっき作ったスイーツはとりあえず冷やしておいて料理を作るのだが正直あいつが何が嫌いとかもわからない。変に聞くのも嫌だしさっきまでの観察で予想するしかない。さっきまでのあいつの脈を確認、電流を流していたことを考慮すると・・・・・オムライスか?甘いものだし俺の得意料理だし。ちょうど材料もあるのでさっさと作ってついでにほんの少し隠し味を入れておく。それが完成したので春を声で呼んで八街を呼びに行くために部屋に戻った。俺の部屋の扉を開けた。流石に冷たい風が少し開いた窓から吹いたのだがそんなことよりも俺の意識は八街のほうに向かった。端的に言うと八街は倒れていた。というより眠っていたといったほうがいいだろう。俺のやらせたことを考えればなんか予想できるのだがそれでも少し慌ててしまう。あんまり気持ちよく寝ていて「すー」と吐く寝息が耳に届いた時、その声がとても心地良くてゾクゾクと背筋を這った。無茶苦茶どきどきして俺の心臓の律動は音に出て聞こえそうなほどにはねていた。別に理性が崩壊しそうだとかそういうことじゃない。ただ、無茶苦茶起こすのが躊躇われるというだけだ。大丈夫大丈夫。そう、自分に言い聞かせながら春を起こす為に学んだやり方で起こそうと手を伸ばす。けれども寝返りしたりするだけで驚いて手を元に戻してしまう。
「ふぅーーふぅーー・・・・」
一度、息を整えて今一度手を伸ばす。今度は寝返りにも動じない。そぅっと伸ばした手が首筋に触れるまで後数秒といったところでもう一度息を整えて一気に手を伸ばして触れる。そこからは早業だ。寝起きの悪い春を起こす為に練習した起こし方は既に脳内にこびりついていてサッとなでるように素早くやる。すると可愛い声を出しながら八街は目覚めた。
「んん・・・師匠?」
こくりと頷く。流石にまだ寝ぼけてるようだし寝起き一発目からメールというのも嫌だったので頷いて意思表示をするしかない。
「・・・・!し、師匠申し訳ありません。私の体力が欠如しているせいでつい、寝てしまったことをお許しください。」
『いや別にそこまで謝らなくていい。夕飯できたから来い』
慌てる八街は、結構可愛い。

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