嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

あめと鞭と無知と無智

「とりあえず2階が俺の部屋だから行っててくれ。俺は片付けだけしてから行くから」
「分かったわ。」『八街さん行きましょう』
俺はまだ、手が塞がっているので北風原に通訳させて食材とかもろもろの片づけを行う。後夕飯の仕度もしておく。俺はまあ、料理も得意なわけで調理実習は苦手だが一人で料理をするのは好きだ。これはスウィーツ作りも含まれるのだ。二人が甘いものが好きか分からないが女子は甘いものが好きだとよく聞くし俺の経験上、大抵の女子は甘いものが好きだった。そういうときには作ってあげるんじゃなくて貰う側だったが明らかに俺が作ったほうが美味しいのでもう人に料理を作ってもらうのはやめた。
「こんなもんか」
ある程度仕度が終わったのでセットして俺の部屋に戻る。俺の部屋はかなり騒がしい。しっかしおかしいな。八街は、耳が聞こえないから一人分の声しか聞こえないはずなんだけど。ちょっと不思議に思ったので急いで俺の部屋に向かい、扉をあけるとそこはマジで修羅場だった。


説明しよう。そこには春がいた。いやおかしいでしょうよ。なぜに春が?まあ、そろそろ帰っている時間だけど俺、気付かなかったぞ。俺が気付けないって相当のものですよね?しかもまた中2キャラで話しているっぽく右目に手を当てている。ああ、もっと早く教えておけばよかった。まあ、それだけならよかったのだがもう一つ問題がある。俺の部屋がさながらお通夜のような空気になっている。完全沈黙状態になっていやがる。出直したいと心が叫んでいる。緊急信号が発信されているが止む無い。このまま放置すると春がかわいそうだ。
「それで?何故にこんな雰囲気に?」
「お兄ちゃん?何この人たち。お兄ちゃんが人が来るっていうからどんな人かなって思ったら無茶苦茶、美人だし超純粋そうじゃん。どこで知り合ったの?」
「はぁ?いや、それよりもなんでお前ここにいるんだよ。俺たちより早く帰ってきてたの?それ以外考えられないんだけど。」
「何言ってるの?お兄ちゃん、部活に入ったんだしそうしたら春が直帰すれば絶対春の方が早いに決まってるじゃん。それより私の質問に答えてって」
気まずい。けれどもここで時間を食うと特訓にならない。
「ほら、前にお前に教えてやったじゃんか。それのちょっと上の段階のことをこいつらに教えるの。別にやましいこととかしないしこいつらと出会ったのもその部活だよ」
「・・・・?師匠、自己紹介をしたほうがよろしいでしょうか?」
「師匠?お兄ちゃん、何を」
『とりあえず自己紹介をしてくれ。俺が師匠って呼ばせてるわけじゃないってことも言ってくれるか?そうしないと俺の首が飛ぶ。』
「人と話してるときに携帯を触らないって言ってるでしょ?」
俺が八街に指示しようとするのだが俺が思ったより可愛い女の子とつるんでいる事に怒ったのか結構キレ気味の声で言う。おそらく俺のことを心配してくれてるんだろう。昔、俺がラブレターをすごい送られたことや告白を煩わしいと思っていたこと、俺が本当はコミュニケーションが嫌いであることをもしかしたら何となく勘付いているのかもしれない。
「いや、耳が聞こえないんだよ。」
その事実は簡潔に述べたほうがいい。俺としてもS君という存在を知っているからあまりそういう言葉を軽々しく使いたくは無い。けれどもそういってしまったほうが楽だ。
「あ・・・そう。じゃお願いします」
どうやら怒りの矛先は元々俺にしか向けられていなかった為か、八街や北風原には穏やかな言葉遣いをする。様子を伺っていた八街に向かって合図をだすと八街は自己紹介を始める。
「私、八街町と申します。師匠には私を根本から鍛えていただくことになりまして師匠と呼ばせていただいております。」
「私は北風原菜月って言います。春ちゃん?よろしくね」
流石の対人スキルで北風原は自己紹介をするのに対して八街の自己紹介は驚くべきものだった。非リア特有の自己紹介で言葉を盛っちゃう、というのが無かった。声優の仕事とかで慣れているのかもしれない。さて、ここからはお兄ちゃんの番だ。
「よし、春。携帯渡すからこれで八街に自己紹介をしろ。北風原にもな。」
「・・・わか・・・分かった。」
そういうと春は、携帯をささっと入力した。流石に俺の妹ということもあって自己紹介は得意なようだ。伊達に俺が教えてない。
「はいはい。じゃあ、ちょっと出てってくれるか?これから用事があるから。あ、番組も今日はやめてくれよ。万が一ってこともあるから。」
「えー。番組やってもいいじゃん」
「番組?」
「あぁ、こいつネットで番組やってるらしくてな。結構人気らしい。」
「・・・・・・・・・」
俺がしっかりと解説をするのだがこれらの会話が全て聞けていない八街はかなり気まずそうだ。まあ、この程度のことでメンタルがぶっ壊れるんだったら見捨てるだけだ。
「あと、いつもの時間になっても入ってくるなよ。俺が呼びに行くから。」
「はいはーい」
そういって春は出て行った。


と、言うことで練習開始である。部屋を出るともう、いい甘い香りがするのだが二人を部屋から出すことはない。咳払いをしてから説明を始める。
『さて、これから二人には修行してもらうわけだが大きく分けるとやる事は二つだ。そしてそれらは2方向に分けられる。そして結果を出すために方針別の4項目をステータス化してもらう。可視化されるだけでも人って言うのはやる気が出る生き物だからな。』
「可視化?」
「なるほど。師匠、それは具体的にどういうことですか?」
二人の質問に答えるためにノートの見開きのページに図を描いていく。左手にはスマホをもって説明する。俺自身このやり方が一番よかったので間違いない。何個か試したわけじゃなくて俺が考えあげた方法なんだけど。
『二つっていうのは心と体。で、心を二つに分けると繊細さと豪快さだ。繊細さって言うのは察知能力とかを磨く。鈍感じゃなくなるって奴だな。それで豪快って言うのはその逆。言葉的に分かりにくいかもしれないけど自信を持つとか集団を動かす時の勇気、みたいな面だ。』
「なるほど」
分かりやすく相槌を打ってくれるので俺としても説明していて心地良い。ふぅ、と一息はいてからまたペンを滑らせる。
『それで、体っていうのを二つに分けると体力面と器用面の二つになる。体力はそのまんまの意味で運動系には役立つ。器用面って言うのは器用か不器用かってことだ。細かい作業に役立つ。それでこれらの項目それぞれの練習方法があるわけなんだが』
「じゃあそれをやればいいのね?簡単じゃない」
今度は舐め腐った声で北風原が言う。こいつ俺が話し易いとかそういうの全く気にして無いじゃんか。俺、泣いてもいいんじゃない?口調的に考えてメールでは打たなかったのだろう。
『そうじゃないんだなぁ、これが。本当ならそうなんだがどうしたってきれいに集中して鍛えられるわけじゃな。例えば繊細さを鍛えたとしても繊細さより豪快さの方が鍛えられる時もあるしその逆もまた然り。その辺はランダムだがだからといって無視するとどれかがいっぺんに鍛えられてしまう。体力面に偏ると体を器用にしても0からやるよりレベルが低い。』
「じゃあ、どうすればいいのでしょうか?」
『いい質問だ。そこは俺が利用されればいい。俺がみてるところで鍛えれば動きを確認して管理できる。それを俺がステータス化する。』
俺がそう提案すると二人は頷く。思いつかなかっただろうなこいつらは。俺の重要性、俺の能力がまさかここまでだなんて。

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