嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

思いやり

友達。その定義は定かではなくむしろ気持ち悪いほどに曖昧である。今の時代、文明の力がありそれでも曖昧だといっている時点でまずいであろう。例えば結婚。それならば婚約するなり入籍するなりすればしっかりと分かりやすく指輪なんかがあれば可視化もされる。目に見えれば困ることもないしあれ?この人たちは夫婦なの?俺たちって夫婦になれてる?みたいに戸惑うことも無い。そこらにいるぼっちたちは、大抵の場合友達の定義って何?と考えるはずだ。逆にそれを考えずに友達百人とか言っているなんて片腹痛い。どこかの心理学によると友達の定義とは、深夜に家に駆けつけて死体を見せた時に、黙って話に乗ってくれるような間柄のことを指すとすら言うではないか。情けは人のためならず、とはよく言ったものだ。そんなものが友情ならば絶対人のためにならない。故に依頼として「友達を作りたい」だなんてものが来たら俺は考えるであろう。それが正しいのかどうか。
『何でそんな風に思うんだ?』
そうメールを送る。意味合い的には何故クラスの奴らと話してみたいのか、という質問の意味だったのだが八街は、そう受け取らなかったみたいで俺の思っていた答えとは全く違う答えがとんでくる。
『何でって普通耳が聞こえない人を前にしたら皆近づこうとしないですし』
『そうじゃなくてなんでクラスの人と話してみたいのかってこと』
正直俺には理解できない。この世界の奴は腐りきっていて八街だって耳が聞こえなかったら近づこうとしないような人間ばかりなのだと分かっているのだ。それなのにまだ、関わりたいと思う。その理由が俺には理解できない。
『八街さん。あなたはメールじゃなくてもいいのよ』
「あ、はいそうですね・・・。お二人がメールしてるので私もそのほうがいいかと思ったんですが入力が遅いですか?』
『いいえ。そういうことではないけれどそこの男はあなたのファンなわけだしあなただって面倒でしょ牛わざわざあわせなくてもいいわ』
「北風原さん・・・・。」
こっちがかなり真剣なことを聞いているのに北風原が話をそらした。まあ、口で言ってくれたほうが心地いいし早いしいいんだけど。声が可愛いのでマジで至福。一応北風原も声自体はきれいなんだよな。
『それで?何で話したいんだ?』
「そ・・・それは昔からあんまり話せなくてそれで皆が話していてすごく楽しそうだったから私も話してみたいな、と思いまして」
『敬語じゃなくていいわ』
「おい北風原。話をずらすな」
「いいでしょ?そのほうがスムーズに進むのだし」
妨害というよりサポートなのだろうがいちいちめんどくさい。
『いや、でも話しても傷つくだけだぞ。前みたいに』
会話。そんなものは人を傷つけるためだけに行われるものだ。グループが不安定ながら形成されていく今頃にグループを作る初期からいなかったような奴が急に入ってきたら絶対に傷つける的になる。きっと誰しも誰かを傷つけることでしかアイデンデティを保てない。だから世界は腐っているんだ。話したことの無いぼっちは、経験が少ないから会話することにあこがれる。けれどリア充たちは、気遣いなどですごい体力を使うしそれで気を回しても誰かが誰かを傷つけ始めて神経をすり減らす羽目になる。期待してしまえば裏切られるのがオチだ。
『多分だけどやめといたほうがいいぞ。あいつらと話しても意味ないし』
「そうかもですけど・・・」
さっきの北風原の言葉に促され八街は乱れた敬語?風になる。制服のスカートのすそをぎゅっと握っているのが座っていても分かった。だめだ。心の声が希望にまみれてる。期待しすぎている。俺がここまでいってそれでも期待をしてしまっているのだ。それはかなりまずい。昔、俺が見限りきれてない頃に世界に期待して面白いものが見れるんじゃないかとワクワクしてそれで世界が腐っていると断定した時のあの、絶望と同種の絶望をこいつが抱いてしまったらこいつが耐えられるのか俺には分からない。むしろ耐えられないであろうとすら感じる。この部が「思いやり」部だというのなら依頼人望むことが意味が無いということを教えてあげる思いやりも与えるべきであろう。
『もし納得できないならそれでも構わない。でもこの世界の奴らは期待するに値しない奴らだけしかいないぞ。100%傷つく』
「でも・・・・でも」
俺が言っても聞かない。期待が心からあふれ出している。だめだ。それ以上やったらこいつがぶっ壊れる。それだけはいけない。こいつもきっと他のやつらと同じで腐っている。けれどそれでも俺が害をなした人物だからせめて一度くらいは害から遠ざけてやりたい。
『いいんじゃないかしら?』
俺が考えていると無情にも北風原は、一言短文を入力した。その言葉が八街に火をつける。だめだ。こいつはまだ分かっちゃいない。この世界が期待するに値しないことを。この世界は、誰も救ってはくれないことを。
「だめだ。北風原、撤回しろ」
「いいえ。八街さんがそうしたいというのだから私はそれの支援を全力でする。それが思いやりよ。」
「そんなのは思いやりじゃねえよ。」
「思いやりよ」
「じゃあ、お前は犯罪者予備軍が人を殺したいっていったら全力で支援するのか?いじめられっ子が死にたいって言ったら全力で自殺の手伝いをするのか?」
「ええ。するわ。そう思った時点でその人はゲームオーバー。諦めゲーはよくあることなんだし別にいいじゃない。無理してやるほどの価値のあるゲームなんかないわ」
俺が問うと北風原は立ち上がってそう言う。また、口論だ。しかも今度は俺がおされ気味。けれど正論を言っているのは俺だ。
「あなたこそそれは思いやりではないんじゃないのかしら?」
「は?なに言ってるんだよ」
「依頼人の求めないことをやるのはお節介というべきよ」
お節介。もしそういわれようと煙たがれようと構わない。俺が正しいことは真実であり唯一の真理。世界を攻略しきった俺を否定してもそれは間違いにしかならない。
「ていうかお前、何でそこまで人を助けることに固執するんだよ」
「理由なんか無いわ。ただ、助けたいだけ。優れた人間が手を差し伸べる。強者の義務だからやるだけ。それだけのことよ」
相変わらずの自信だ。けれども救うという事はそういうことじゃない。もしもこいつらが望むというのなら救うということを見せてやってもいい。
『分かった。じゃあ八街さんがクラスに溶け込める方法を考えよう』
ここからが始まりだ。見せてやるよ世界の再生を。

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