嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

やっと依頼

世界極めなおし発言をしてから数分後。俺達はそれぞれに読書をしたりと自由なことをしていた。北風原はと言えばまたしても読書をしている。よく分からないけれどおそらく真面目真面目している本を読んでるんだろうな。母さんが書いているような奴だろう。こいつはラノベとか読むんだろうか。俺的にはよく分からないけど何かラノベとか読まなそう。まあ、それはアニメにもいえることでそれこそキララなんて深夜番組を知っているのがおかしい。例えば深夜まで勉強していたとしてそこでたまたま見ていても素人がベナというキャラクターに目をつけて八田町をいう声優の声を聞いただけで分かるなんて不可能だ。つまり何かしらの理由があってベナ、もしくは八田町について詳しいということだ。じゃああれか?話をあわせるためにって感じか?いや、でもこいつに限ってこそれは無い。自分・・じゃなくてファンの立場で言うのもなんだけどベナ自体そこまで有名なキャラではないしむしろマニアックでさえないレベルだ。八田町もキララ以外の作品にはまだ出演すらしていない。エキストラでさえだ。そして八街の性格を考えれば友達からの情報って可能性も無きにしも非ず。ここは聞いてみるのが吉か?
「なあ、北風原」
「・・・・・・何?」
俺が呼び捨てしたことによりかなり不快な顔を見せたものの文句は言わない。それもそうだろうな。俺がちょっと暴走してこいつの自信という自信をぶっ壊したんだから。そう考えるとちょっと申し訳なくなる。
「いや、何で八街の声がベナだってすぐ分かったんだ」
「何を言っているの?そんなの簡単じゃない」
「簡単ってお前、アニメとか見るのか」
「まあ、みるにはみるわね。けれども分かったのはそんな理由じゃないわ。そうね。勝負よ」
どうやらさっきのがかなり悔しかったようで俺にそういってくる。これから何かあったら勝負を挑まれそうでめんどくさい。
「・・・・友達とあわせるため?」
「まさか。キララはかなりマニアックなアニメだし流石にそんなアニメのファンは私の身近にはいないわ。あなた以外は」
「じゃあ何だ?」
「私が声優だからよ」
「は?」
俺は、流石にそんな声を漏らしてしまう。
「どうしたんですか?」
俺がまだ状況を理解できていない間に八街は俺に聞いてくる。そうだよな。こいつ聞こえないから何の話してるのか一切わかんないんだな。ちょっとその辺が面倒だよな。
『いや、何で北風原がすぐに八街さんが八田町だって分かったのかって話をしてたんだけど』
「それで?どうだったんですか?」
『それが北風原が声優だって』
「え?」
俺が八街に伝えると勿論八街も驚いた。八街は、耳も聞こえないしどんな声をしてるのかどうかなんて分かりもしないだろうからしょうがない。俺は?
「ねえ、そうやって通訳するの面倒だからメールで話さない?私にもメアド教えて」
「お、おう。『八街さん。北風原にもメアド教えてやって』」
「わ、分かりました」
八街がメアドを北風原に教えて俺も北風原にメアドを教えてメールによる会話を始める。確か声優だって言うカミングアウトからか。
『それで?声優ってどういうことだ?』
『どういうってその言葉のままよ。』
『えっとキララの声優さんですか?』
俺はやたら早く入力するのだが八街はかなり入力が遅い。北風原はまあライデイがそこそこ得意らしいしそこそこ入力が早かった。
『そうよ。私は鴨川ネオよ』
「は?」
「え?」
俺と八街は北風原のカミングアウトにメールをするのを忘れてしまう。鴨川ネオ。そいつもキララのキャラクターの声優だ。ベナとは無茶苦茶仲の良い役として扱われている。ベラトリックス、通称ベラこそ鴨川ネオの演じるキャラクターだ。いや、そんなことよりも、何故八街がそれを知らなかったのか。
『八街さん、知らなかったの?』
『はい、事務所の方針で一人で録音してすぐに帰るようにって言われているのであまり声優さんには会わないんです』
『そうね。仲のいい役なのに八田町さんとは全然会えなかったわ。けれど、もう会えているわけだし文句は無いのだけれど』
状況は大体理解出来た。もう粗方得たので会話をする必要性もない。さっさと切り上げてしまうのが吉であろう。それは3人とも同じようで一気に教室が静寂に包まれる。


それからまた数分。その間マジで静寂が続きまくってそれこそ若干気まずいほどに。何が気まずいってそれこそ色々な要素がある。さっき俺がきれたっていうのも勿論原因だしそのきれた内容から考えて気まずくなるのは当然のことだ。まあ、八街にはまだ具体的に何をやろうとしているのか話してはいないんだがそれでも堂々と「恋愛して世界が腐っていると断言する」みたいな感じの言葉を言ったんだ。これはマジで気まずい。
「あ、あの」
その静寂をぶち破るようにして声を出したのは八街だった。その姿を観察してみるとすごい気まずそうな顔をしている。ああ、そういえばこいつなんか頼みがあるとか言ってたっけ。それにしては全然話がそっちに向かなくて気まずかったんだろうか。申し訳ないな。
『何かしら』
「えっと・・・依頼があるんですけれど駄目でしょうか?」
『ああ、そうだったわね。何?言ってみて』
「わ、私クラスに馴染めなくて声も変ってよく言われるんですけど自分がどんな声なのか確認できなくて事務所の人たちは私を天才って言ってくれるんですけどそれでもクラスの人たちと話すのが怖くて。それでもクラスの人たちと話してみたいな、と思って」
「「なるほど」」
耳が聞こえない。それなのに声優をやって表現力があそこまである。それは文字でかなりの情報を得ているって事だ。それを具現化するのも難しい。それを全て誰かの例を聞くことも無くやる。きっと八街は声優という仕事が天職なのだろう。彼女は天才だ。けれどもそれは逆に言ってしまえば自分で自分の声を確かめられずに仕事をするという恐怖に駆られているということだ。話せるという事はおそらく後天性の病気でなったんだろうけどそれはまあ、どっちでもいい。問題は彼女のことだ。何にせよ初の仕事だ。もしもここが人の悩みをかなえてやる部活だとするのならば俺はこの腐った世界を


―――――――――変えてやる。

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