嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

そ・う・ぐ・う

俺が誉田先生に作文を提出するとふむふむと誉田先生はうなり始めていた。眉をひそめていた。まあ、元々ついでにというか大義名分として書き直しにさせられただけなので多分大丈夫なはずだ。これが駄目なら他のやつだってだめな奴いるだろ。
「猫実。君は、文章を書く力はもとより話す力も高い。しっかりと自分の意見を体験と混ぜ合わせて簡略化した言葉を使うことで読み手に伝わりやすい。それは認める。それは君の家族のおかげかもしれないし逆に君単体の力かもしれない。だが・・」
「だが?」
そこまで言うと目を瞑り深刻そうな顔をして先生が話す。
「君のその力をまだ生かしきれていない。だから、何となく意味の分かりにくい文体になるしすぐに話をそらしたりデータや例を挙げようとする。昔はそうじゃなかった」
「はぁ。それがどうかしましたか?」
「いやな、君の作文を学校の代表として出そうと思うんだよ。明らかに文章力は高いし同年代の中だけでなく大人の中でも君ほどの文章力を持つものは少ない。」
「ちょ、それは横暴なんじゃ?」
「しかし流石にこの文章を提出する訳にも行かないのだよ。」
「何でですか?」
ちょっと意味が分からない。笑い話を織り交ぜながらきれいにまとめたんだが。あれか?笑い話とか道化とかそういう空気じゃない、みたいな?ああ、いるんだよな。文章力持て余してるから言いたいことを色々と元ネタ混ぜて言おうと思って結局理解されない文章書く奴。あ、俺もその一員ということですかね?いやそれならばまあ分かるんですけど。で?俺の横暴じゃないですかという問いは完全に無視ですかそうですか。それならばこちらにも考えがある。
「分からないならいい。とにかくもう一度書け。前回のほうがまだマシだがそれでも流石に提出は出来ない。よってまともかつ健全な文を書け。面白く」
「代表に選ばれるからには利点があるんですよね?」
「ああ、そうだな。考えておこう。今日も第二図書室に行けよ?」
「分かってますよ」
一言そういって職員室から出て行く。またしても書き直し。はぁ、マジでめんどくさいなぁ。何で健全とか言われなきゃいけないんだよ。
「あ、そうだ猫実」
「はい?どうかしましたか」
不意に誉田先生が俺を呼び止める。開けようとしていた職員室の扉から手を離しもう一度誉田先生の元に向かう。全く、一度で済ませて欲しい。
「君は、さっき八街とすれ違ったよな?」
「えっと・・・誰ですか?」
「さっき私が話していた生徒だ。」
「ああ、あの。その人とならすれ違ったというか衝突しましたよ。その後言葉も無くぺこぺこ頭を下げて立ち去っていきました。」
「不審に思ったか?}
「いいえ。俺も人に当たったりすると結構ああいう感じの時ありますしそんなんで不審がってたらこの世界の大抵の人が不審人物でしょ。」
俺だって流石に完全に見ず知らずのごりごりヤンキーさんとぶつかったらああいう感じだ。俺はまあ、パッと見怖いかもしれないしあの時は非リアモードだったからそれでああなってたのかもしれないしな。それよりも先生が切り出した話だ。聞いてみるのもいいだろう。
「先生は、何を話してたんですか?その八街さんと」
「そのって八街はお前と同じクラスだろうが。学級委員だ」
「ああ、そうでしたね」
ああほんとにわすれてた。これはマジでわざとじゃない。興味関心意欲が無かっただけである。それ重傷じゃねえか。むしろ重症なレベル。いやどっちかわかんなくなってしまいそう。日本語って難しいな。それで八街と何を話していたのだろう。
「まあ、彼女とは少し話をしていただけだ。何、君と同じようなことを話していたと思ってもらえば間違ってないはずだ」
「ということは八街さんも主夫じゃなくて・・・主婦志望?」
「言ってる意味が分かるのが怖い。違うぞ。まともな話だ」
びっくりした。同じクラスにライバルがいるかと思った。女子だからセーフ。いや、むしろアウトなんじゃね?同姓婚が認められそうな現代だし男の受け皿が少なくなり始めている。やっぱり主夫になるのも楽じゃないのね。
「そうですか。じゃ、行きますんで。」
「そうか。じゃあ頼んだぞ」
「うす」
短いやり取りをかわし俺は教室に戻った。参考までに八街さんを捜してみると見事に孤立していた。ぼっちということであろう。さっきのキョドリ方的に考えてもおそらくあまり人と話すのになれていない。しかもこのクラスの空気の中で確実に浮いてしまっているようだ。まあ俺にはどうでもいいけど。ふと、過去の失敗が頭によぎってしまうから不思議だ。




その日の授業も無事終了して第二図書室に直行することにした。教室は居心地が悪いし家に帰りたいところだが昨日のロリコン発言のショックと共に今朝くらった「ゆっくり帰ってきていいからね」の一言が胸に突き刺さっているので帰れないわけである。悲しすぎて「ない」を何度も言って響かせてる風にしてしまうレベルでショックだ。だがまあ、仕方が無い。第二図書室までの道のりは相変わらず長くその間にも放課後の談義をはじめているリア充たちの声が聞こえる。その声は神の耳によって捻じ曲げられた本音であり聞いているだけで吐き気がするレベルだ。第二図書室にいてもイライラするだけだがそれでもゆっくり歩いてこの気持ち悪さが続くくらいならさっさと向かってしまうのが吉であろう。俺は早歩きで行くことにした。
しばらくして第二図書室に到着しドアを開けると既に北風原はいた。1年A組の教室と1年D組の教室はさほど遠くは無いのであまり差があるはずが無いのだが何故彼女はこんなにも早いのだろうか。もしかしてこいつもぼっちなのか?いいや、それは無いな。裏でぼっちって可能性はあるけれど北風原菜月といえばうちの学年の人気者で女子は勿論男子からも絶大な人気を誇っている。そんな奴がぼっちなはずが無い。でも、やっぱりこの異質な部屋が似合っているのだ。その理由を知らないわけは無く、むしろ俺には理解できるのだ。何故こうも変わるのか。
「なあ、そろそろ業者の人くるんじゃねえの?」
「・・・ええそうね。じゃあ、さっさと終わらせておきましょうか」
「おう」
「それはそうと猫実涼くん。あなた、作文を2度も書き直しになっているらしいじゃない。ちょっと見せてくれないかしら。私がアドバイスしてあげる」
「いらん。」
「大丈夫。私、理系だけれどあなたよりかは文系も得意だから。」
「おまえ、ハードル上げすぎだから。しゃーねぇなほれこれ。」
俺が、呆れてバッグから作文を取り出すとさっと北風原がそれを受け取る。それとほぼ同時にドアが開いた。まあ、業者の人ならば時間的にも問題ないし準備もあらかた出来ているからいいんだが驚くことにドアを開いた人間は明らかな非リアの生徒だった。

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